識者に聞く 県内大雨

県防災士ネット・平井理事長 助け呼ぶことも頭に
 活発化する梅雨前線による大雨で、県内で河川の氾濫や土砂災害の危険が高まっている。NPO法人県防災士ネットワーク理事長兼都城支部長・平井泉さん(65)=都城市=は「慌てずに正常な判断をするために、事前の準備や早めの行動を」と呼び掛けている。
 今回の大雨では気象庁が緊急会見などで「自分の命は自分で守るように」と繰り返している。経験したことのない雨量が予測され、夜中に多く降る状況が続くため、どんな被害が出るか分からない怖さがあるからだ。
 避難所へは日中の小雨か雨がやんでいる間に移動しなければいけない。大雨や水かさが増した状態では外へ出ること自体が危険となる。通い慣れた道でも風景が変わり、壁や溝が見えないこともある。
 雨が激しく降る時や夜間の避難が必要になったら警察などに助けを求めること。田んぼなど外の様子が気になって出掛けて被害に遭うケースもある。建物の中から動かず、浸水の危険がある場合は上階で助けを待つ。
 突然やってくる地震と違い、大雨の被害は事前に情報が分かる。大切なのは発表される情報を信じて行動に生かすこと。職場や出先でも避難場所の確認や、いつでも避難できるように意識を持ってほしい。

宮大・末次教授(地盤工学) 土砂災害リスク高まる
 記録的な大雨で、県内は土砂災害の危険性が高まっている。地質の特徴や避難の注意点を宮崎大工学部社会環境システム工学科の末次大輔教授(地盤工学)に聞いた。
 ―本県の地質は災害に対してどのような特性があるか。
 「県南西部や鹿児島県に広がるシラス台地は火砕流が堆積したもので、保水力に乏しく、雨に極めて弱い。宮崎、日南市に広がる宮崎層群、日南層群も泥岩と砂岩が互いに重なっており地盤が弱い。これらの地域は雨量が特に多く、注意が必要だ。水はけがよいとされ、これまで土砂崩れの起きなかった場所も甘く見てはいけない」
 ―土砂災害はどのように発生するのか。
 「斜面の土砂が水を含んで重くなり、弱くなって滑り落ちることで起きる。雨量が多いほど起きやすくなるため、降り始めからの雨量が多い地域は特に発生の危険性が高い。どこで発生するか専門家でも予測できないことも怖いところ。短時間で大量の雨が降れば、どこでも起こり得る」
 ―どのような点に注意を払えばいいか。
 「まずはハザードマップなどで自分の住んでいる地域がどのような場所か確認してほしい。土砂災害の危険箇所や警戒区域であれば、自治体の避難指示や勧告を待たずに自主的に避難することも必要。避難する場合も、経路に斜面がないかを確認してほしい。土の中に入った水は時間をかけて出て行くため、雨がやんでもしばらくは危険な状態が続く。土砂災害警戒情報が解除されるまで、斜面に近づかないことが大事だ」(宮崎市・宮崎大で)

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