流血ブリザード 【完全版】- みんなクレイジーなパフォーマンス好きなんでしょうね

新メンバー加入、そして2度目のイギリスへ

──まず新メンバーのベルゼブブ・ヨゴレさん、自己紹介を…。

ヨゴレ:ベルゼブブ・ヨゴレです。

──いつ入ったんでしたっけ?

ユダ様:正式に入ったのは、去年の9月。

ヨゴレ:サポートが、その前年の秋から。

──サポートけっこう長かった。

ヨゴレ:長かったッスね。他のバンドやりながら、サポートで。で、ワンマンとかでも弾くようになって、コレはそろそろ正式になってもいいんじゃないかっていう話に…(笑)。

ユダ様:そうですね。お互いそんな感じで。

──どうですか、新体制は。

ユダ様:付き合いが長いんで、やりやすいですね。毎回メンバーが替わるとカラーも変わっていくんで…前あったもんで今ないもんとか、前なかったけど今あるもんもあるかも知れないですね。演奏の面は伸びたと思います。

──UK&フィンランド・ツアーは、どういう経緯で話が来たんですか?

ユダ様:“Camden Rocks Festival”には、去年も出ているんですけど。去年の12月5日に、ポール・クックのTHE PROFESSIONALSのオープニング・アクトをしまして、彼らと意気投合して。THE PROFESSIONALSのギターのクリスが、Camden Rocks Festivalのオーガナイザーをやってて。で、その打ち上げで「お前ら来年もCamden来るか?」「2daysやるか?」みたいな。「あー、やるやる!」「OK、じゃあ来いよ!」つって、クリスが2days決めてくれて。本当は他の場所も細かく回ったりしたかったんですけど、現地のパンク・シーンあんまり知らんし。もちろん向こうのANTIKNOCKみたいなところがあるのかも知れんですけど…。

ヨゴレ:今のCamdenにはほとんどパンクスもいなかったですし…。

──そうなんだ?

ユダ様:3人だけ、『DECLINE Ⅲ』に出てきそうなガター・パンクみたいなキッズに会いましたけどね。そういう奴は、金払ってフェスなんか入らないんですよ。そこらへんでたむろって。そいつらは日本のTHE ERECTiONSが神だって言ってましたよ。「ジャパニーズ・パンクが一番だよ~!」って。

──東京みたいに、何処かしらで毎日パンク・バンドがやってるみたいな状況は、今のイギリスにはなさげ?

ユダ様:あるのかも知れないけど、俺らが見た限りでは…スパイキーに鋲ジャンなんて俺しかいませんでしたから(笑)

ヨゴレ:フェスに出ているバンドでそんなバンドはいなかった。

ユダ様:DISCHARGEの客にも鋲ジャンすらいなかったですよ。まあパンク・フェスじゃないからかも知れんですけど。とは言ってもTHE PROFESSIONALSやANGELIC UPSTARTSも出てるのに…。でも俺はDISCHARGEと同じフェスに出られて嬉しかったし、最前で観れてヴォーカルさんと写真も撮ってもらえてよかった。はしゃぎましたね。

──パンク・フェスではないんだ?

ユダ様:パンクだけのフェスではないです。ASHとか、フランク・ターナーとか…。

ヨゴレ:ギター・ロックみたいなバンドが多い。

ユダ様:パンクでももっとサマソニで来日してるような、有名どころが出てる。LIBERTINESのカールとか。

フィンランド行きのきっかけはKAPPUNK

──それにフィンランドがくっついたのは?

ユダ様:去年の10月に、フィンランド・パンクのSOTATILAとか、今回一緒に回ったLAPINPOLTHAJATっていうバンドのユッカって人がKAPPUNKで観てくれて、声かけてくれて。ごっつい外国人が声かけてくれたなと思って訊いたら、SOTATILAのメンバーで。SOTATILAって俺らの中でもよく聴いてたバンドで。「うそっ、マジで?」って。SOTATILAのユッカが誘ってくれるんや?…みたいな感じで、凄い嬉しくって。で、話してるうちに7inchをフィンランドで出すことになったし、いろいろとケアもしてくれて。フィンランド4ヵ所、プラス、シークレット・ギグも面倒見てくれた。

ヨゴレ:「明日もやるか?」って。

──イギリス2本、フィンランド5本。

ユダ様:あと、イギリスのパーショアってところで、レコーディングもしました。2日間で。そのエンジニアが、THE WiLDHEARTSとかTHE PROFESSIONALSのエンジニアをしてる人で、かなり腕利きの、デイヴ(デイヴ・ドレイパー)って奴がいて。

ヨゴレ:ずっと下ネタばっかりしゃべってるけど腕は凄い。

ユダ様:そのスタジオでもTHE WiLDHEARTSのジンジャーとか録ってたりするから、そこで俺らもやってんのや…って思って、嬉しかったです。

──フィンランドの日程は、Camden Rocksに合わせて設定してもらったと。

ユダ様:そうですね。Camdenに行ってから移動出来るようにね。凄い、帳尻合わせながら…。フィンランドは超パンク大国です。パンクスめちゃ多いし。

セクシー:対バンもパンクばっかりだった。

ユダ様:観に来てる奴も、昔のダンプ松本みたいな…。

セクシー:いたね(笑)。

ユダ様:フィンランドはクレイジーでしたね。

──イギリスと全然違うんだ?

ユダ様:全然違いますね。客こんなんです(パンク・ファッションの女性客の写真を見せる)。極悪同盟じゃないんだから…。

──かっけーなあ。

ユダ様:でしょう?

ヨゴレ:がっつりパンクとかハードコアのやつと回ったから、そういうシーンでやれたのかも知れないし。ホントにフィンランドでああいうのが流行ってるのかも知れないし、それはちょっとわかんないんですけど。

ユダ様:一番流行ってんのはヘヴィ・メタルだと思いますけど(笑)。でもハードコアも強い。やっぱり日本とフィンランドは強くて。で、詳しいんですよ、対バンの人が。「ソウゴ・イシイ知ってるかー?」とか。

──石井聰互?

ユダ様:「ツカモト、ムービー・テツオ」とか。

──塚本晋也!

ユダ様:あと「ショージン・フクイ」(福居ショウジン)とか。俺それ知らんくて。それから日本のハードコアバンドにもめちゃ詳しくて。「KURO、DISCLOSE、FORWARD、DEATHSIDE」…。

ヨゴレ:日本人でも知らないようなディープな映画のこととか。

ユダ様:当たり前のように知ってるしね。まあCamdenでもそういう人はいましたけど、それはもしかしてBROKEN BONESのメンバーかも知れないですね。DISCHARGEのヴォーカル(ジェフ・ジャニアック)に日本から来たって言ったら、隣にいた人が「お、日本か。日本といえばGISMとかKUROじゃないか。いいなあ」とか言ってきて。日本のハードコアは世界でけっこう、リスペクトされてるという気がします。あの人(今のDISCHARGEのヴォーカル)がBROKEN BONESのヴォーカルでもあるんですね。そこまで知らんかったんですけど、あの人カッコいいですねぇ。

まずイギリスへ

──まずUKの2日間ですけど、ハードコアとかパンクのフェスじゃない、いわゆるロック・フェスに出た流血ブリザード、どうでした?

ユダ様:それだから逆に良かったのかも知れないです。最前にね、ちょっとオタッキーな人が来て、凄いノってくれるんですよ。それにつられて…一人ノるとやっぱり他の奴もノってくれるんで。モッシュとかしてくれる奴がいたりとか。ただ、後ろのアダルトな客層からすると「…」って感じやから、凄い割れてましたけど。でも俺もバーッと飛び込んで、クラウドサーフみたいなことが起こった。イギリスでそういう光景が起こったのはやっぱり嬉しい。1日目はちょっと手堅くやったんですが、2日目が大きいステージやったんですよ。LOFTよりデカいぐらいのとこでやって、2日目はスカムなパフォーマンスを解放したんです。そしたら、みんなクレイジーなパフォーマンス好きなんでしょうね、物販がスコーンと売れましたわ(笑)。凄い刺青のネーチャンとか「一緒に写真撮ろう!」って来てくれたりとか。対バンの人も凄い褒めてくれたり。あとKILLA KELAっていうラッパーの人が自分のYouTube番組に使いたいって言って撮ってくれたりして。あと嬉しいのは、去年観たのを覚えてて、「去年あなたたち観て好きになったから、今年も来たわ!」みたいな人…。

ミリー:リピーターがいたのは嬉しかったな。

ユダ様:去年1回しかやってないのに。

ミリー:去年より今年の方がライブ盛り上がってるなって思ったよ。去年はダンスばっかり盛り上がったような…(笑)。

ユダ様:そうッスね。今回は最初の方でワーッと来る奴が既に何人かいたんで。去年よりも随分盛り上がりましたね。

ミリー:その後Camden Rocksのアフター・パーティーに、セクシーと行って…もしかしたら大物いるかも知れないなーと思ったけど、見当たらなくって。「いっか、二人で飲んでても楽しいし」って言ってたら、クリスがバックステージに入れてくれて、そこでなんと、LIBERTINESのギターのカール(カール・バラー)に会ったんだよ!

セクシー:最初全然気付かんかった(笑)。

ミリー:サングラスかけてるし、誰かわかんなくって…凄い気さくな感じで話しかけてくれて、しゃべってたら「日本には14回行ったことがあってね」…「あのー、失礼ですがあなたのバンド名は?」って訊いたら「THE LIBERTINES! Rock ‘n’Roll Band!」って言われて。「えー!」っと思って、「ああ、気付かなくてすみませんでした!」って言ったら、「いやいや、俺の母さんも気付かない時あるから!」って、フォローしてくれた…。

──よくわかんないジョークだな…(笑)。

ミリー:(笑)カールのiPhoneに、何故かユダの裸の写真と、ヌンチャクを振り回して脱いでる動画が入ってたんだよ。なんでかわかんないけど!カールは「We want danger!」とか言ってた…。

ユダ様:光栄なことですね(笑)。

──観てたんだ?

ミリー:わかんないけど…。

ユダ様:来てたのかも知れんし、カールの友達とかが「カール、ヤベえのいんぞ!送るぜ!」って送ったのかも…それは知らないですけど。

ミリー:けっこうな枚数入ってたし。そんな風に、カールにバンド名聞いて、一瞬気まずくなっちゃったんで、他のイギリス人にバンド名訊けなくって(笑)。何人かと話してたら、いろいろ「いやあ、前出たSUMMER SONICってフェスは、アレは良かったねえ」とか「俺たちはイギリスではけっこうお客さん呼べるんだけど、日本では1000人キャパぐらいしか出たことがないんだ」って…。

ユダ様:そういうところのバックヤードに、流血の二人が(笑)。

──実はみんなパンピーじゃなかったんでは?

ミリー:そうそう(苦笑)。

ユダ様:日本に来た、どいつもこいつもアレですよ多分(笑)。

ミリー:なんか、セクシーがスウェーデン人のめっちゃ屈強なおっちゃんに押さえつけられてたよな。「日本大好きだよ、ハッハッハッ」みたいな(笑)。

英国レコーディング秘話

──で、それからレコーディング。

ミリー:パーショアっていうとこなんだけど。

ユダ様:ロンドンから電車で2時間ぐらいか。凄い田舎町。バーミンガムが近いって言うてたな。

ミリー:バーミンガムでも1時間はかかる。景色は凄い綺麗だったよ。イギリスの田舎町。ピーター・ラビットとか出てきそうな。

セクシー:実際ウサギもいたしね。

ミリー:いたいた。あと鹿とか。

──やっぱりイギリスってそういう光景残ってるんだ。

ユダ様:そうッスね。泊めてもらったホテルで、ミリーが風呂をオーバーフローして、浸水して、下の人が怒鳴り込んで来て「コレどうしてくれんねん!」っていう事件もありましたけど(笑)。

ミリー:そうなんです…(苦笑)。お風呂を溜めてたんだけど、疲れててお湯が溢れちゃったことに気づかなくて。

ユダ様:古いヨーロッパの、川沿いの素敵なモーテル、みたいな感じのホテル、全部水が下に…。

──風呂を溢れさせたぐらいで?

ユダ様:それが意外でしたけど。

セクシー:排水が、お風呂の外にはないから…。湯船の中にしか排水がないから。

──ああ、バスタブの中にしか排水口がない…!

ミリー:インテリアは凄い素敵だったけどね。そういえばユダも…。

ユダ様:レコーディング中にあったなぁ。エンジニアのデイヴは凄い良い人で、「Cool!」「Cool!」って、凄いアゲてくれるんですよ。「Good Music! お前らええ曲やなあ」って、アゲてくれる人で、ガンガン進んで行くねんな。日本じゃ出来んぐらいイイ音で録れて行くんやけど、ただ日本で出たことないくらい、全身もの凄い真っ赤になってしもて…大変やったな。俺は、スタジオにおる幽霊による霊障やと思っとるんです。

──ユダ様、デリケート。

ユダ様:スーパーデリケート。

ミリー:(蕁麻疹が出たのは)一人だけだもんな(笑)。

ヨゴレ:ユダくん繊細過ぎて…内面から来てるんじゃないかって噂も…。

ミリー:多分(笑)。ユダは高級なホテルじゃないと無理なタイプかも…。

──ナイーヴ過ぎるスカムロッカー…。

ミリー:エンジニアが「ここは幽霊が出たことがあるんだよ」って…。

ユダ様:そんなこと言うんですよ…。

ミリー:それを真に受けてるのかな、多分(笑)。

──レコーディングは…。

ユダ様:5曲、新曲を録りました。2日しかなかったので。時間ないから「コレってどういう声で歌うんやろ?」って自分でもわからんまま録った曲とかありましたけど、結果としてはイイ感じに。

ミリー:そのエンジニアの人が、単なるエンジニアじゃなくて、「俺は、一緒に曲を作るよ!」みたいなことを言ってくれて、いろいろアイディアを出してくれたんだ。

ユダ様:そうそう。寄り添ってくれるタイプの人で。

ミリー:ユダ、最後の方やたら「Cunts!」とか叫んでたもんなあ。

ユダ様:とにかく「Cunts!」「Fuckin’cunts!」とか、合言葉で言う人で…。

ミリー:凄い「Cunt」って言うのが好きな人だったんですよ。

ユダ様:最後、デイヴにエンジニアしてもらってよかったなと思った瞬間が、デイヴの腕、バーッとめくったら、ファイナルファイトとかストⅡとかのタトゥーがバーッと。「SEGA」とか。ああ、俺と同種族だ…「ああっ! …You like final fights? Me too!」とか言って、「ストⅡ、ケンが最高だよなあ!今度会ったらストⅡやろうぜ!」っていう、同じ格ゲー好き同士の…。

ミリー:めっちゃゲーマー(笑)。

ユダ様:「ああ、コレは運命やったな、この人と出会ったのは」って思いましたね。

──それがTHE WiLDHEARTSの…。

ユダ様:エンジニアですね。ジンジャーのソロとTHE WiLDHERATS、THE PROFESSIONALSとか。他にも俺らが知らんような、ハード・ロック的なのもやってるみたいですけど、それは俺らがちょっと知識なくて。でもまあ有名な人でした。

ミリー:凄い耳がいい。

ユダ様:耳いい人です。わざと扉開けて、こっちの反響の音も入れるように、とか…俺らじゃワケわからんようなセッティングしてました。

──鳴りを。

セクシー:普通はスタジオにこもって録音するんですけど、わざわざ開けて、廊下にマイクを置いて、流れてきた音を録るみたいな。

──アンビエンスを。

ユダ様:俺らじゃ全然わかんないことをしてましたね。この人すげえなあと思って。こんな幽霊がおるようなところでひたすら引きこもって作業出来るのも凄い!俺やったら半日で発狂しますわ。

(一同笑)

ユダ様:『北斗の拳』の、リンのお姉さん、天帝が閉じ込められてたじゃないですか、アレと同じ気持ちですもん。

ヨゴレ:誰に向けてしゃべってんのそれ…。

ユダ様:天帝の気持ちですよ。

──ホントにナイーヴだよなあ(笑)。

ユダ様:そうなんですよ。

──で、そんな凄腕のエンジニアと、「令和ソング」を演ったワケだ?

ユダ様:そうですね、一緒に撮ってもらいました(笑)。

ミリー:いろいろ協力的に参加してくれたなぁ。

──協力の方向が間違ってる(笑)。

ユダ様:あの塔(MVの背景に登場)も、なんかいわくつきの塔やなあ。

──あの、バックにあった。

ミリー:戦争の時に建てられたんだっけ?

セクシー:シェルター。

ユダ様:なんか、戦争に関係してるような。そこの前で「令和、令和、令和だぞ♪」…。

ヨゴレ:どんな歌かも知らんのに、よくわからん日本語の歌を踊らされるっていう…(笑)。

ユダ様:話前後するんですけど、他のオフの日もPVを撮ったりしてましてね。テムズ川の、それこそ『時計仕掛けのオレンジ』の、最初のホームレスをしばく、あの現場まで行って撮ったりとか。テムズ川のボートとか、タワー・ブリッジのあたり走ったりとか。けっこうやれることは詰め込んで。スタンリー・キューブリック展もたまたまやってまして、それも行きました。ただ僕は『シャイニング』も『2001年宇宙の旅』も観たことがないんで。『時計仕掛けのオレンジ』だけ唯一知っとったから、他はちょっとなんのこっちゃか全然わからなかったですけど。

ミリー:凄い人気だったんだ、キューブリック展が。1日目行った時、アタイら5人だったんだけど、全員は入れなくて。

ヨゴレ:あと4枚しか残ってないって言われちゃって。仕方ないから次の日にもう1回行って。俺、1日目『時計仕掛けのオレンジ』のTシャツ着ていて、2日目『シャイニング』のTシャツ着ていて。

ミリー:めっちゃ気合入ってた(笑)。

ユダ様:俺とミリーはロンドンのクラブとか遊びに行ったりもしました。途中でポリが来て、クラブ終了させられましたけど(笑)。

ミリー:なんか、ロンドンのXOYOっていうクラブに行ったら、「あなたたち何歳なの?学生さん?」って言われて「学生じゃないです」「今日はStudent Nightなの。だからStudentじゃない人はお断り」って言われて。「このままじゃ帰れん」ってテンションになって、フリーパス配ってたタダで入れるクラブに入って(笑)。

ユダ様:ちょっと古いんちゃうの、っていうヒップホップがかかってて、ただのナンパ箱だったんですけど、まあせっかくのロンドンのクラブやし、酒でも飲んで味わおう、みたいな感じやったのが、ポリスが来たとかどうのこうの…。

ミリー:いきなりハイ閉店、ってなって。そういう時でもみんなちゃっかりしてて、「はい、次はここだったら開いてるから!」とか言って、他のクラブの人が「はい、今からまだイケるよ!」とか声かけてきて(笑)。しぶといんだよ。

セクシー:それはホテルの周辺だったの?

ユダ様:ちょっと歩かなアカンな。

ミリー:一駅ぐらいかな。Old Street。

新曲「令和ソング」

──「令和ソング」って、ライブでも演ったの?

ユダ様:海外では演ってないです、ライブではね。アレをチョイスしたら、持ち時間なくなるし(笑)。日本で3回スベってるのに、なんでわざわざ海外で…。

ミリー:ユダは日本でもう心折れてしまったみたい…。

──(笑)

ユダ様:外国人からしたらもっとワケわからんやん。

ミリー:でも外国人はアレよ、新元号とかわかってないから、なんかウクレレの楽しげな曲としか思ってないと思う(笑)。

セクシー:言葉の壁はデカいよね。わかんないから。

──アレはでも、映像を観てる限りは素晴らしいですけどね。「いやあ、新元号も相変わらずひでえなあ、流血ブリザード!」って(笑)。

(一同笑)

ミリー:海外でも演ろう(笑)。

ユダ様:なんかね、ツイッターとかやったら、見たことない人が「アレ、カヴァーしていいですか?」って来るんですけど、現場で演ったらねえ、別に大してウケてない…。

ヨゴレ:誰も楽しんでない(笑)。

ユダ様:ツイッターではね、知らん奴が「俺、実は好きで」とか…。

ヨゴレ:ネット向きなんだよね。

──ユダ様のソングライターとしての才能っていう話を、前にセクシーさんとしたんですけど。

セクシー:はいはい。

──あの“片足タックル”っていう歌詞はね、そう出てこないよね!

セクシー:そうですね(笑)。

──“検便持ってるあの子に片足タックル”…。

(一同笑)

ミリー:最初聴いた時は意味わからなかったけど、だんだんキャッチーだなあって思い出して。謎のキャッチーさで、だんだんよく聴こえてきましたから、ホントに(笑)。

セクシー:しかも音のクォリティが凄い…。

ミリー:ひどいからね…。

ユダ様:家でiPhoneで録ったやつですけどね。

そしてフィンランドへ

──で、レコーディングを終えて、すぐさまフィンランドへ。

ユダ様:そうですね。

ミリー:オックスフォードまで車で送ってもらって、オックスフォードからヒースローに行って、ヒースローでちょっと空港泊して、それで飛び立ったな。

──ヒースローからヘルシンキ?

ミリー:ヘルシンキ。

──直行便出てる?

ミリー:うん。2時間ぐらいで。ヴァンターっていう空港があるんだけど。けっこうすぐだった。

──フィンランドで、シークレット含む5回やって?

ミリー:そうです。

──滞在は何日?

ミリー:1週間。

──けっこう、強行スケジュールで。

ユダ様:そうッスね。よくこの体力ない俺がやったなっていう感じですね。着いたらすぐ、いきなりTVOとかいうハコでライブやって。

ミリー:でもフィンランドに着いたら、みるみる体調が…。アタイも結果的に風邪ひいたけど、イギリスよりよくなっていったよ。

ユダ様:飯がね、フィンランド、優しくて美味いんですよ。

ミリー:美味かったね。

ユダ様:今回和食ロスなかったですね。

──フィンランドってどんな国でした?

ユダ様:とにかくご飯がヘルシーって感じ。

ミリー:日本人とちょっと共通点があるかな。

ユダ様:そうですね。

ミリー:性格かな。

ユダ様:優しいですね。日本人的な感じで、けっこう気ィ遣ってくれるとか、気持ちをくみ取ってくれようとしたりとか。ギャアギャア来んよな。

セクシー:シャイなんだけど、盛り上がってくれる。

ユダ様:いい奴多い。

ミリー:メタラー多いね(笑)。

ユダ様:親日だとは思います。

──暑かった?

ユダ様:ダウン持ってったんですけど、相当暑くて、夏。

ミリー:35度だったからなぁ。

──35度!

ユダ様:ライブハウスにもサウナ付いてましたね(笑)。

──え?

ヨゴレ:みんなサウナに…(笑)。

──ホントにそうなの?

ユダ様:ホントにサウナです。船にもサウナ付いとるし。こんなところにサウナ要るかっていうところにもサウナあるし。

ヨゴレ:バーで会ったパンクスは、サウナのタトゥーが入ってた(笑)。

──サウナのタトゥー?

ヨゴレ:想像しにくいと思いますけど(笑)、あのサウナが、お腹に入ってましたね。

──よくわからない…。

ミリー:カッコいいかどうかよくわからない(笑)。

セクシー:湯船がなくて、サウナで…。

ユダ様:1日目、ライブが終わった後、飯食べて。なんか、よくあるような、こういう…(ジェスチャーで)。

──ああ、昔のサッカーゲーム。

ユダ様:アレを、対バンの奴とやって。

──今、逆にないじゃん、日本に。

ユダ様:そうなんですよ。アレも何処にでもあったな!

セクシー:何処にでもある。ライブハウスにもあるしバーにもあるし。

──恐ろしい文化だな…。

ユダ様:それで、サウナに。こんなゴツいフィンランド人のおっさんと一緒にサウナ入って。で、けっこう厳しくて。「サウナは神聖やから、スパイキーもお前、ちゃんと下ろしてから入れ」って言われて。体もきれいにして。1回「やり直しや」言うて…。

セクシー:酒とかも持ってたらダメみたいな。

ユダ様:「イェーイ」とか立ち上がったら「サウナでそういうことすな」みたいな。

ミリー:厳しい(笑)。

ユダ様:石にジャーってやるやつ、アレやって、「サウナは神聖な場所で、ボスがどうとか、上司とか部下とかもなく、人が平等な。サウナというのは、そういう神聖なとこなんやぞ」っていうのをずーっと語ってて。ヤニが。

ヨゴレ:普段まったくしゃべらない男が(笑)。今回運転手をやってくれたヤニっていうのがいて。

ユダ様:ごっついおっさんなんですけど。

ヨゴレ:普段全然しゃべらないのに、サウナになると急に饒舌になる(笑)。

ユダ様:ちょっとオラオラに(笑)。「お前、まだやぞ」「もう上がるんか?」みたいな。普段はホントに気のいいおっちゃんで、ひたすら寡黙に。サウナの時だけは…。

ミリー:LAPINPOLTHAJATのドラマーのユッカも、「フィンランド人はちょっとおかしいよ。話しかける時とかはけっこうシャイなのに、サウナだったら男女全員裸でも誰も気にしないからね」確かにそれはおかしい…。

ユダ様:サウナ、男女で入ってたもんなあ。

ミリー:男女とも、裸で入るんだって、昔ながらのサウナは。混浴で。

ユダ様:オフの日に、“世界最古のサウナ”ってちょっと寄ったんです。そしたらもう、凄いですね、「サウナ、平日から賑わうか?」って思ったら、おっさんもねえちゃんもおばはんもぎょうさん来てて…。

──男湯・女湯なくて?

ミリー:一応そこは分かれてるらしいけど、仮に混ざったとしても、基本気にしないらしくって。分かれてないところもあるんだってよ。

──不思議な文化だ…。

ミリー:不思議だよな。しかも、メタラー多いし(笑)。

──異文化に接してしまった?

ユダ様:そうッスね。そんで、2日目やったあとは、バイク屋? …バイク屋兼バーみたいな、ホンマに、イメージの中の“バイカーのアジト”みたいな、昔の映画に出てきそうな、そこで寝さしてもらってたんですね。

ミリー:LAPINPOLTHAJATのヴォーカルのトモっていう人の、“モーターサイクル・クラブ”っていうとこで、泊めてもらったんだ。

ユダ様:壁こんなんで…。(写真を見せる)

──めっさヘルズ・エンジェルス的な。

ユダ様:ホンマそんな奴ばっかり集まってる。「ホンマにヘルズ・エンジェルスちゃうの?」って奴が、たむろして。2日目もそこに泊まってたんな。そしたらそこに、別グループの不良バイカーの奴らが朝方帰ってきて、俺ら寝てたら「おう、今からパーティーするから、お前らちょっと悪いけど出てってくれ」って、叩き起こされて。「なんやねんこいつ?」って思ったんですけど、むっちゃ悪そうな奴で、めちゃ怖そうやったから、渋々…寝ぼけてんのに、「ハロー、ナイスチューミーチュー」…なんか自己紹介せなアカンのかなと思って、「マイネームイズユダ」「Oh、なんやらBig party、なんやら、もし寝たいんなら下行くか、それともパーティー今から混ざるか?」みたいなこと言ってるんですけど…。

ヨゴレ:朝の5時から寝起きでパーティーはしたくない(苦笑)。

ユダ様:でもそうなんですね。向こうはずっと明るいから。そんな時間からパーティーや言うてて。そんでよくわからん、「You callなんとか」って言うから、一人一人紹介してくれ言ってんのかなと思って(笑)、寝てるのを「ディスイズセクシー、ディスイズヨゴレ」…。

(一同爆笑)

ユダ様:向こうも、そういうことちゃんねんやろうけど「Nice to meet you」言いながら、「コイツわかってへんちゃうんか」みたいな顔になって(苦笑)。俺も「あっ、こういうことちゃうんかな」と思って、怖なってミリーを起こして…。

ミリー:寝たいんだったら下の階にどいてくれ、みたいな。みんな渋々、下のリハーサル・スタジオで寝ました(苦笑)。

ユダ様:そいつの仲間も、こーんなスキンヘッドで、スカルのタトゥーが入って、革のベスト着て、もう“ザ・モーターサイクル・ギャング”な…子供の頃に観た映画のキャラみたいな奴らばっかりでしたね。

──ちょっと『マッドマックス』っぽい。

ミリー:あそこはたまり場なんだろうな。

ユダ様:フィンランドは『マッドマックス』みたいなファッションの奴、実際多いッスよ。メタラーが多いのか知らんけど、ハードな格好してる奴が多い。

セクシー:バイクもアメリカンが多かったです。

ヨゴレ:街中見てても、アメリカンが多分流行ってる感じで。

ユダ様:ドクロのこんな…まんまヘルズ・エンジェルスみたいなカッコ。

ミリー:ロンドンではそんな、ロックな感じとかパンクな人とか全然見当たらなかったのに、いきなりフィンランドは空港降りた瞬間からそういう人がいたからね。

──フツーにいるんだ?

ミリー:普通にいましたね。普通のカッコしてるけど刈り上げのモヒカンぽい女の人とかもいたもんね。

ヨゴレ:みんな刺青入ってる。

──そのへんのコミュニケーションって、フィンランドではみんな英語で?

ユダ様:英語は、彼らしゃべれるからね。フィンランド語と両方しゃべれて、フィンランド訛りの英語です。フィンランド語だと、(語感が)本当にナメック語ですよ。

──ナメック語(笑)。

ユダ様:「パルバットプルプルキャルラット、ポルボッケ?」みたいな、そんな感じやった。

ヨゴレ:酔っぱらってくるとすぐフィンランド語になるから(笑)。アレは困った…。

ミリー:でも、凄いと思った。もともと英語圏じゃないはずなのに、みんな英語がしゃべれない人がいない。

盛り上がったフィンランド

ユダ様:ライブが一番盛り上がったのはヘルシンキでしたね。メキシコ料理屋です、会場が。ライブハウスじゃなくて。でもまあ一応ステージが、小さい柵で。「え~、こんなとこでやるの?」みたいな、そういう感じやったんですよ。始まる前にメキシコ料理食べて、それからライブする。始まったら「えらい人おんなあ?」みたいな感じで。いきなり最初からウワーッと。けっこうモッシュとかも最初から起こってて。一人、緑の三連モヒカンみたいな奴が、暴れ過ぎて前の鉄柵かなんかで切って、血がドバーッと流れて。結局彼、5針縫ったんですけど。5針縫った次の日もタンペレ来てくれてた。

(一同笑)

ユダ様:バリええ奴なんですわ。

ミリー:マジでいい人。

ユダ様:ヘルシンキはモッシュが凄くて。よかったな?

ミリー:うん。

ユダ様:初めて来るのにこんな…。何故か関西弁のフィンランド人もいて、「アンコールやってや!」って。なんか、関西のおっさんが留学しておるんかなと思ったら、バチバチのフィンランド人で。「自分らメチャメチャよかったわ!」「俺京都に1年間おって」…1年でお前そんなに関西弁しゃべれるようになったんかって(笑)。

ミリー:あっちはやっぱりメタルが盛んみたいで、ヘルシンキの時はメタラーみたいなお客さんが多かったんだ。関西弁しゃべれるフィンランド人と、もう一人、メタラーみたいな子が二人で「フィンランドのメタル・バンドを知ってほしいんだ!」と言って、汗でべちょべちょのTシャツを…自分たちが着てたのを脱いで渡してくれたんだよ(笑)。「俺たちには小さかったから」って…。

──汗だくのTシャツを…。

ミリー:アタイももらったし、ユダがもらったやつはもっとべちゃべちゃで(笑)。

ユダ様:俺はそれ、もらったふりして置いてきましたけどね…。

ミリー:…アタイは友情の証かなと思って、かなり汗で湿ってるなと思いながら、頑張って着たよ(笑)。それが、コレです。(写真を見せる)

──なんか、サッカーの試合後のユニフォームの交換みたいな…。

ミリー:ねえ(笑)。

何故かエアギター

──ステージのパフォーマンスは日本と同じ?

ユダ様:今回の遠征は、少し前の流血を敢えてやってる感じを出しましたね。デフォルメして、最近あまりやってないこととかを。一時よくやってたなーみたいなことを逆に思い出して。

ミリー:ロンドンでもそうだったけど、ユダがパンツかぶったり、生理ナプキン投げたりした後に…。

ユダ様:「ウィ・アー・シリアス・ハードコア・バンド!」みたいなこと言ったら、けっこうそれが、向こうの人はギャグってわかるんでしょうね。「ウィ・メッセージ・ポリティカル!」…それがユッカも気に入ったみたいで、わざわざシークレットの時も司会やってくれて、「Japanese serious punk band!Ryuketsu!Serious punk!」…俺のギャグ“シリアス・パンク”をやたら連呼しとった(笑)。

ミリー:シリアス・パンクって連呼し過ぎて、ホントにガチのパンクスの人、帰ってしまってましたけど(苦笑)。

ユダ様:シリアス・パンク言うた後に(ミリーが)エアギターしましたからね。

(一同笑)

ミリー:エアギター・コンテストの日本大会に、4年ぐらい前に出たことがあって。決勝で8位になったんだよ。それをユッカに話したら、「エアギターやってよ!」って言われて。それでそのシークレットギグの時に、エアギターすることにしたんだ。「ウィ・アー・シリアス・パーンク!」とか言った後に、エアギターしようとしたら…その時に帰って行ってたからね、ガチのパンクスは(苦笑)。

ユダ様:そうなんですよ、やたらね、演芸を何処でもやってって頼まれる(笑)。俺も「I Love Me」、iPhoneで、ライブでもないところで何回も歌わされましたもん。まず、運転手のヤニっていうおっちゃんの娘さん。

ヨゴレ:「先週誕生日だったから、祝ってやってくれ」って言われて。

ユダ様:いきなり、家の庭でですよ。iPhone流して、「ベイベ~♪」とか、ヌンチャクをマイク代わりにして歌って。その子、ええ歌や思うたせいか、泣いてんねん…。

(一同笑)

ヨゴレ:凄い悪いことをした気分になった(笑)。

ユダ様:めっちゃ清純な子で、その子。かわいらしい。「嬉しい!」とか言って…歌詞知らんのや(苦笑)。

ミリー:そりゃ知らんだろ(苦笑)。(ユッカが)サプライズとかやってあげるのが凄い好きみたいで。最終日、みんなでヘルシンキで、普通にバーに飲みに行った時とかも、全然知らない…ユッカですらあんまり面識のない人が、誕生日だったみたいで。「二人誕生日の子がいるんだ、エアギターやってあげてくれないか?」って。

──なんでエアギター(笑)。

ユダ様:しかもね、そのバー、どっちか言うとガラ悪いんスよ。店内はガンジャの香りと小便の香りが凄くて、でも人がパンパンで、“ザ・外国映画”に出てくる不良のたまり場のバーで、明らかにまともじゃないやろっていう…「俺はマフィアや」とか自分から言う奴がおったりとかする、奴らの前で急にエアギターさせられたんです(苦笑)。

ミリー:エアギターしたら…一応「オーッ」とかいって、ちゃんとリアクションはしてくれるから、まあ…。

ユダ様:飲んでなかったらけっこう居心地悪いわ…(笑)。すげえ風紀悪いところですから。

ミリー:まあフィンランドの本場でエアギター出来てよかったぜ!(笑) エアギターの本場なんで。

ヨゴレ:ミリーさん、エアギター日本8位だったんだよね?

ミリー:うん。決勝8位。

ヨゴレ:それが、次の日になったら、なんかもう日本のチャンピオンだっていうことで(笑)。ああ、こうやって話がデカくなっていくんだなって…。

(一同笑)

ミリー:盛り過ぎ(苦笑)。

ユダ様:「ウェーッ!」って、凄いノってくれるんですよ、その悪い不良たちも。しかしコレ1位か? …って。

ミリー:1位のクォリティじゃない(笑)。

ユダ様:1位の実力にしては、悪くはないけど…まあ外人そんな野暮なことは言わないですけど。

──なにしに行ったんだ(笑)。

ミリー:確かに(苦笑)。でもフィンランドで、シークレット・ライブを急にすることになったりとか、いきなり「I Love Me」歌ったりとか、エアギターをいきなりすることで、だんだん、底力が付いてきた気がします…。

ユダ様:なんせロックですね。移動中もあいつらはずっと…自分自身がパンクをやって、今から連日パンクのギグをやって、自分もハードコア・パンクやるのに、移動中もずっとハードコア・パンクとメタルばっかりかけてますからね。凄い。「Everything is punk」って言ってたもんな。

ミリー:(笑)。

ユダ様:レミーとか凄い尊敬されてますね、やっぱり。MOTÖRHEADは凄いリスペクトされてる。

ミリー:うん。日本のバンドだったら、FORWARDとか?

ユダ様:FORWARDとか、DEATHSIDE、鉄アレイ…。

ミリー:そうだな。

──躍進ですねえ流血ブリザード。海外にも行くしANTiSEENとも対バンしたし。

ユダ様:もっと躍進しまっせ!パァァァァンク!!!!いや、カァァァァンツ♀!!!!

photo by たたみ

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