6月の環境月間 主要企業がプラごみ問題で相次ぎ対策

6月は「環境月間」と定められているが、今年はG20大阪サミットが重なったこともあり、例年以上に多くの企業から環境対策の発表が目立った。なかでも筆頭のテーマは海洋プラスチックごみを含めたプラごみの対応策。日清食品がカップヌードル容器を植物性プラスチックに切り替えるなど、企業としてもプラごみ問題が無視できなくなっている現状が垣間見える。主要各社の取り組みとそこに込められた企業理念や実効性、将来像を探った。(いからしひろき)

進む「プラ製品の廃止、置き換え」対応

すかいらーくグループ店舗のPOP

すかいらーく社は、すかいらーくレストラン全店で、ドリンクバーに常備している使い捨てプラ製ストローを廃止すると発表。6月6日から実施。すかいらーくグループでは昨年12月にガスト全店で、今年3月にはカフェチェーンのchawanで、それぞれ使い捨てのプラ製ストローを廃止している。さらに今回、バーミヤン、ジョナサンなど13ブランドでも廃止を決めた。国内店舗の88%にあたる2,795店舗(2019年5月31日現在)で使い捨てストローが廃止されることになる。なお、客からの要望があった場合には、トウモロコシを原料とした生分解性の「バイオマスストローTM」を提供する。

取り組みについて同社広報チーム・北浦麻衣さんは、「安全・安心な食の提供を通じて地域社会に貢献するのがすかいらーくの使命。特に環境保全は早急に取り組むべき問題と考えている。まずできることから始めたい」と話す。

日清食品は、「カップヌードル」ブランドの商品で使用する容器に、「バイオマスECOカップ」を採用すると発表。切り替えは2019年12月から順次開始し、2021年度中には全量の切り替えが完了する予定だ。焼却時に排出されるCO2量が従来より約16%削減される見込み。

日清食品の広報部長大口真永さんによると、「G20大阪サミットの開催などで、環境問題に注目が集まっていることは意識している。インスタント食品のパイオニアで、シェア1位の企業として、世界的な課題に先陣を切って取り組むのは社会的責務だ」

一方、日本の輸入ビールで輸入量1位の「コロナ エキストラ」を展開する「アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン」は、同商品の主な利用シーンである“海とビーチ”を守る取り組み“CORONA PROTECT PARADISE”を以前より行っている。その一環として、プラスチックをできるだけ使わないビーチ「フリープラスチックビーチ」の実現を、葉山・森戸海岸(神奈川県)と共に取り組むと発表した。期間は海開きの7月5日(金)から8月31日(土)まで。海の家で提供するカップや容器、ストローを紙製のものに移行し、ペットボトル商品は撤廃。ゴミの持ち帰りバッグを提供し、海水浴客に海を守る大切さを伝える。期間中にはビーチ周辺に落ちているゴミを専用のバッグに拾い集めると、冷えたコロナと交換できるイベントも開催予定だ。

バイオプラスチック製のスプーン

セブン‐イレブン・ジャパンは17日バイオプラスチックの導入を発表。翌18日から、大阪エリアのセブン‐イレブン(約360店舗)において、弁当等の販売時に添付する「スプーン」「フォーク」を、植物由来の素材を30%配合したバイオプラ製品に切り替える。また一部報道によると、販売するおにぎりの包装も、全国2万1000店舗で7月中に、現行のポリ製からバイオプラ製に切り替える予定だという。

エールフランス航空は、6月5日の世界環境デーを記念し、パリ発デトロイト行きAF378便で、使い捨てプラ製品の代わりにバイオ素材の製品を乗客に提供した。今後2019年の年末までに使い捨てプラ製品2億1千万個が廃止され、代わりに環境に配慮した代替品が全てのフライトで使用される予定だ。これにより、同社のプラスチック利用は1,300トン減ることになる。

リサイクルやリユースでプラごみの排出を削減

セブン&アイと日本コカ・コーラは6月10日から、一部製品で「完全循環型」のペットボトルリサイクルを実現。同一流通グループで商品としてリサイクル製品を循環させる取り組みは世界で初めてという。全国のセブン&アイグループ約21,400店(2019年5月末)で順次発売する。

アディダス ジャパンは全国の直営店のうち14店舗に「Collectors box(コレクターズ・ボックス)と呼ぶ回収ボックスを設置。ブランドを問わず使用済みの衣類やシューズ、バッグなどを回収する。名付けて「TAKE BACK PROGRAM(テイクバック・プログラム)」。回収された製品は、再利用可能なものとリサイクル対象(アップサイクル・ダウンサイクル含む)のものに分別され、条件の合うものは新たな糸や新たな製品へと生まれ変わる。

メルカリは、個人間取引における商品の配送用に繰り返し利用できる梱包材「メルカリエコパック」の提供を開始した。EC市場の成長により、商品を梱包する資材の消費も増加しているなか、同社ではメルカリで取引される商品同様“何度もリユースしたい”という想いから、リユース可能な梱包材を開発したという。

セブン&アイと日本コカ・コーラ、メルカリ、アディダス ジャパンの取り組みについては、当サイトで既報。詳細はそちらをご参照されたい。

■関連記事

セブン&アイとコカ・コーラ、完全循環型ペットボトル実現 

リユース可能な梱包材で循環型社会を目指す:メルカリ 

アディダス、アパレルの循環・再生産目指し衣類回収 

プラごみ対策は「企業姿勢示す好機」

各企業が環境対策の具体的な行動に取り組み始めた。単なるアピールにとどまる短期間の施策では課題意識の高まっている多くの消費者は納得しないが、将来的なビジョンはどうなのか。

すかいらーく広報チームの北浦麻衣さんによれば、「もちろん一過性のものとは考えていない。環境に優しい企業であることは、今後の企業成長に欠かせないからだ。新たに出店する店舗も含め、トータルで“環境に優しい店づくり”に励んでいきたい」

日清食品の大口真永広報部長は、「カップヌードルは我が社にとって“進化”の象徴。利便性から出発し、保温性、エコと、時代の求めに応じて進化してきた。油を使うインスタント麺の特性上、容器の強固性も同時に維持するのは難しいが、常に進化し続ける企業姿勢を示す好機として、今後も挑戦していきたい」

アディダス・ジャパンのアンジェラ・マリー・オルティス・CSRシニアマネージャーは「究極的には、Closed-loopシステムで作られたサステナブルなプロダクトが、循環型経済の発展と成長に貢献するであろうと考えている」と話した。

消費者、社会のニーズに各企業がどう応え、動くのか。今後も目が離せない。

© 株式会社博展