社説(7/5):2019参院選 年金制度/安心できる将来への道筋示せ

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 老後をいかにして暮らすのか。公的年金だけでは心もとない。かといって、十分な蓄えを準備できる余裕はない。介護などの費用も心配だ-。そんな将来への不安が国民に募っている。

 第25回参院選がきのう、公示された。参院選ではにわかに、年金や社会保障制度が大きな争点として浮上した。

 契機になったのは、言うまでもなく、金融庁の審議会による報告書である。「公的年金だけでは30年間で2000万円不足」という試算をはじき出した。

 安倍晋三首相は「不正確であり誤解を招いた」と釈明したが、報告書は高齢夫婦の平均的な世帯の姿を客観的な数字で示している。むしろ、年金額が今後は抑制されることを考えれば、2000万円の蓄えでも不足するという試算もある。

 もちろん、不足額は各世帯の収入や支出、ライフスタイルなどで大きく異なる。ただ、報告書は日本が直面する少子高齢化や人口減少の進展などを踏まえて課題を提示し、うなずける内容であった。

 この報告書を巡り、麻生太郎金融担当相は受け取りを拒み、かえって不信感を増幅させた感がある。与党は打ち消しに躍起となり、野党の予算委員会開催の要求にも応じなかった。政府・与党は参院選への影響を恐れ、問題にふたをした印象は拭えない。

 だが、厳しい現実から目を背けてはなるまい。負担と給付のバランスを踏まえた年金制度はどうあるべきなのか。参院選では冷静に議論を深めてほしい。それ抜きに、不安は払拭(ふっしょく)できない。

 厚生労働省がこのほど発表した2018年国民生活基礎調査では、65歳以上の高齢世帯のうち、所得が公的年金・恩給だけの世帯は51.1%と半数に上った。55.1%は生活状況が「苦しい」と答えている。

 安倍首相は「100年安心」と言う。これは、人生100年時代に年金だけで「100歳まで安心」という意味ではない。04年の改革で、人口減少などに応じて年金給付を抑える「マクロ経済スライド」という仕組みを導入し、「年金制度は100年安心」という趣旨だ。

 年金の制度は安定したのだろうが、給付水準の先細りは避けられない。与党はそうした痛みについても説明し、安心できる老後の生活設計を示す必要がある。

 野党が言う「100年安心はうそだったのか」という批判は論点のすり替えだろう。野党は年金制度に関し、最低保障機能の強化やマクロ経済スライド廃止などを掲げるが、消費税10%への引き上げに反対し、どう財源を確保するのか見えない。

 与野党とも論戦を通し、年金にとどまらず、医療や介護を含めた社会保障の全体像についても、新しい時代の道筋を示してほしい。