首位ホークスを支えるドラ1甲斐野インタビュー 「本当に怖くてビビりながら…」

ソフトバンク・甲斐野央【写真:(C)PLM】

ここまで32試合に登板し1勝1敗4セーブ、14ホールド、防御率2.15

 東洋大学スポーツ新聞編集部の学生記者として、筆者が初めて甲斐野央投手を取材をしたのは、甲斐野投手が大学3年次の2017年11月26日のこと。その日は甲斐野投手のほかにも取材予定の選手がいたのだが、こちらの手違いで2選手が東洋大学寮内のトレーニング室に来てしまう事態に。焦る筆者に「2人同時でもいいですよね?」という甲斐野投手の救いの一声で、申し訳ない気持ちを抱えつつ、同時取材を行うことになったほろ苦い思い出だ。初めて取材した印象は“よく話す関西人”(笑)。そこから甲斐野投手の“番記者”になろうとは、そしてその約1年半後にドラフト1位でプロ野球界に飛び込むとは、その時は思いもしなかった。

 甲斐野投手ら東洋大学の先輩たちの新たな挑戦に背中を押されるように(そして彼らの活躍を追いたくて!)、パ・リーグの公式メディアである「パ・リーグインサイト」で学生記者をするようになり、縁あって、神宮での凱旋登板前の甲斐野投手へのインタビューが叶った。

 取材場に着いて甲斐野投手と再会し、一番に感じたのは身体つきの変化だ。ソフトバンクの球団公式Twitterに上がっていた上茶谷投手との2ショットで大胸筋が大学時代よりたくましくなっていると思っていたが、たった半年で全体的に一回りも二回りも大きくなっていたことに驚いた。

――今季ここまでを振り返っていかがですか?(32試合に登板し1勝1敗4セーブ、14ホールド、防御率2.15)

「簡単に言うと本当にいろいろありました。最初は右も左もわからない状況で、ガンガンいけていました。途中で連続無失点が途絶えて、一回くじけて、その後また調子が上がってきて。ここまで本当にいい経験をさせていただいています。後半戦はもっと緊張する、しびれる場面で投げることもあると思うので、そこへの準備も考えていきたいですね。まずは1軍で生き残ることが第一優先。先輩からアドバイスをいただきながら、生き残るためにしっかり投げて抑えたいと思います」

――よくアドバイスをもらう先輩は?

「特定の選手というより、みなさんからです。スター軍団なので、投手だけでなく野手の方からもアドバイスをいただいています。野球以外のことでもです。何を聞いても僕にとって必要なことを教えていただいています。バッテリーを組む甲斐さんからは、普段はいじられたりと、かわいがっていただいています(笑)。でも、野球となると別です。僕は今までショートイニングばかりの登板ですが『とりあえず先頭切ろうな』とか。僕の性格をわかってくださっていて、試合前は考えすぎないようにメンタル的な部分をフォローするような言葉をかけていただいています。それで試合が終わったら『ここがこうだったね』みたいな技術的な反省の話をしてくれますね。まだ2、3か月ですけど、すごく僕のことをわかってくださっています」

――そのような先輩に囲まれて戦ってきましたが、これまで26試合で投げ、印象深い試合はどの試合ですか?

「今のところは開幕戦ですね。オープン戦でもいい成績を残していたので、試合の初めのほうから準備はしていましたし、投げる機会があれば期待に答えたいという一心でやってやろうと思っていました。相手も去年優勝した西武でしたし、本当にがむしゃらに、自分の力を出すだけだと思っていました。それがああいう結果につながったので。あの時のファンの方からの応援や、ベンチに帰ったときの先輩方からかけていただいた声がすごく印象に残っています」

強打者揃いのパ・リーグ「本当に怖くて、毎回ビビりながら投げています(笑)」

――パ・リーグは強打者揃いですが、どのような心境で投げていますか?

「本当に怖くて、毎回ビビりながら投げています(笑)。でも僕はプロに入ってからサインに対してまったく首を振っていない。それくらい甲斐さんや高谷さんを信じて投げています。要求通りに投げられるコントロールがあるかというとわからないですが、でもそれもわかった上でサインを出していただいていると思うので。僕はしっかり腕を振って自分の球を投げるだけです」

――オールスターゲームのファン投票の中間投票では2位でした。ファンの期待や声援がプレッシャーになることは?

「いや、それは全然。もちろん最初は『抑えたい』と力んだこともありましたけれど、毎回毎回応援してくださるのが本当に嬉しいことだなと今は思っています。オールスターに関してはまったく意識はしないですね。1年目でいろいろ初めてだし、テレビで見るくらいだったので。自分がそこに出るという感覚がわからないですけど、もし出させていただけるならそれもいい経験になるとは思います」

――ここまで多くの球場で投げましたが、投げやすい球場、苦手チームは?

「ヤフオクドームですね。ホーム球場なので観客の方の雰囲気が一番ですし、慣れなのかもしれませんが。体のメカニズム的にも一番投げやすいと感じています。苦手なチームはあまりつくりたくないですけれど…… 成績的に楽天はよろしくないですよね。記録が途絶えたのも楽天ですし、負けがついたのも楽天。僕の技術不足です」

――球場が変わると、調整方法にも変化が?

「今までやっていた遠投ができない球場もありますからね。でも、そういう時でもプレートから少し下がって投げたりと、工夫をして調整をしてます。あと、大学時代は調子のバロメーターとしてブルペンである程度球がバラついてる日の方が良かったんですけど、プロに入ってからはそれだと心配になりますね」

――そのブルペン調整の面で、プロに入ってから変わったところは?

「準備の面では、最初はどんどん腕を振って高めてマウンドに向かってたんですけど、『それじゃシ―ズン長いからもたないよ』と言われて。なので、今はその日の調子によって差はあるんですけどある程度肩をつくったら時間を置いて、『行くぞ』と言われてから3、4球思い切り投げてからマウンドに向かっています。そういうところもプロに入ってから変わりました」

――大学とプロでは春季キャンプの過ごし方も違う

「キャンプは本当にきつかったです。プロのキャンプってこんなにきついんだ、と一番思いました。第二クールまでは結構びっくりするくらいものすごく走りましたし……これも含めていい経験をさせていただいていると感じます」

――大学時代のキャンプ地は千葉県の鴨川でしたが、福岡ソフトバンクは宮崎

「大学のキャンプは本当に寒かったんですけど、宮崎は暖かかったですね。もちろんプロですから設備や環境面はとても快適だったので、辛かったのは本当に走り込みだけ……(笑)」

――その他に学生時代から“変わった”と感じるところは?

「身体が強くなったことですかね。大学のときは弱かったんです。すぐに痛いだのかゆいだのって(笑)。プロに入ってトレーニングをきっちりするようになって、トレーニングの方法もそうですが、治療の方法もプロに教えていただいたり、実際に治療をしていただいて、疲れがたまらない体になっています。その部分が技術的に伸びたと言えるかと」

――同じパ・リーグには東洋大学同期の中川圭太もオリックスに在籍

「対戦したいというか、したら抑えたいという感じ。したくないよりはしたいですけどね。大学時代の通算対戦成績は本当に悪くて、5の4くらいで打たれてるんじゃないかな。しかもそのうち3本はホームランだと思う。今、ホークス戦で結構打ってるのは腹立ちますね(笑)。でも、あの人は天才なんで。もし対戦することがあったら、ガンガンインコースに直球投げて攻めていきますよ」

――最後にこれからのシーズンの意気込みを聞かせてください

「まだシーズンは長いですけれど、僕は先のことを考えたらダメなタイプ。あまり先のことは考えずに、怪我をしないということを第一に。その上で目の前の試合の1イニング、1アウトを取ることをいかに全力でできるかじゃないですかね。そのことだけを考えてますし、その積み重ねだと思うので、大きい目標をつくろうとは思っていないんです」(「パ・リーグ インサイト」須之内海)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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