「皆の本音を代弁」と勘違い? 目立つ政治家失言、その背景は

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有権者に支持を訴える参院選の候補者=神戸市内

 与野党を問わず、国会議員の不用意な失言や暴言が目立っている。背景として、有識者らは「断言型」の演説の流行や、インターネットの会員制交流サイト(SNS)の影響などを指摘。参院選が4日公示され、各地で論戦が繰り広げられる中、「言葉」から政治家の資質を見極める必要性も説く。

 4月、東日本大震災の被災地を地盤とする自民党の高橋比奈子衆院議員のパーティーで、桜田義孝五輪相(当時)が「復興以上に大事なのは高橋さん」とあいさつし、直後に更迭された。立憲民主党の枝野幸男代表も同月、ラジオ番組で、予算委員会集中審議の早期開催に否定的な与党について「登校拒否みたいな話だ」と述べ、例えが不適切などと批判されて訂正した。

 「政治家の日本語」という著書もある信州大学の都築勉名誉教授(政治学)は、政治家の言葉が変質したのは、2001年に就任した小泉純一郎元首相が「自民党をぶっ壊す」と訴えた時期からだとする。

 党内や他党を説き伏せるより、有権者の注目を集める発言に軸足が移り、分かりやすい言葉で単純化した演説が人気を集めるように。さらに衆院の小選挙区制導入などで派閥が弱体化し、“抑え”がなくなった自民の若手議員がSNSなどで奔放に主張し始めた。

 とはいえ、失言で閣僚が相次ぎ辞任する事態などが起きているのに、なぜ何度も繰り返されるのか。失敗に関する研究を専門とする甲南女子大学の山田尚子教授(心理学)は「『注意を引きたい』『感銘を与えたい』と思い、インパクトが強いことを言おうとする気持ちがある」と分析。ジョークやリップサービスのつもりが問題になるケースも少なくない。

 「強めのワードに注意」。自民党は5月、「失言や誤解を防ぐには」と題したマニュアルでこんな注意点を明記。参院選に向け、同党の国会議員に配布した。

 しかし6月に大阪であった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、自民党総裁である安倍晋三首相が、大阪城の復元時にエレベーターを設置したのは「大きなミス」と発言。批判を浴び、自分の発言について「遺憾だ」とした。

 また、性的少数者(LGBT)を巡る自民の杉田水脈(みお)衆院議員の発言などについて、学習院大学法学部の遠藤薫教授(社会情報学)は「良識や常識に異を唱えることが、皆の本音を言い当てていると勘違いしているのでは」と述べる。耳目を集めることが優先されるネットの風潮も、勘違いを助長しているとし、「異なる意見をさげすんだり排除したりする人に、対話で社会を良くする国会議員の適性があるか。有権者は考えてほしい」と呼び掛ける。(霍見真一郎)