マグロの町の人情、珍事… 「みさきっちょ」刊行、マップ代わりに

「みさきっちょ」著者、いしいしんじさん(左)とアタシ社のミネシンゴさん(アタシ社提供)

 庶民の姿を通して三浦市三崎の魅力を紹介する書籍「みさきっちょ」(アタシ社)が6月、刊行された。10年ほどにわたって三崎で暮らした著者が、接した店や住民とのエピソードなどをいっぱいに詰め込んだ。関係者は「三崎のマップ代わりに、遊びに来て、登場人物や食べ物との出会いを楽しんでもらえたら」と話している。

 スナックのマスターが必ず口にするというマグロ漁でにぎわった昭和中期の思い出話や、7月にある海南神社の例大祭の様子、三崎で耳にする歌、頻繁に訪れた鮮魚店でのやりとり…。三崎で暮らし、その後も現在住んでいる京都から度々足を運んできた著者、いしいしんじさんが実際に触れた逸話や物語を23章計約190ページにまとめている。

 装丁は絵本作家の長谷川義史さんが担当。発行元の出版社「アタシ社」(同市向ケ崎町)によると、三崎に残る昭和の懐かしさを表現し、子どもも手に取りやすいデザインに仕上げた。昨秋、長谷川さんが三崎を訪れた際に手掛けたスケッチなど、作品約30点も収録されている。

 同社は2016年に逗子市内で創業。翌17年秋に三浦市に拠点を移し、地域に根差した活動も手掛けている。同市三崎に同年12月、現在約5千冊を収める蔵書室兼カフェ「本と屯(たむろ)」をオープン。昨年5月には、市内の風景を撮り続ける写真家有高唯之さんの写真集を発行した。三浦にまつわる書籍は今回で2作目となる。

 「笑いあり涙ありの珍事件が紹介され、登場人物も実名。都会の暮らしでは目にしない人の温かみがにじみ出ている」と、同社のミネシンゴさん(35)。「漫画の登場人物並みに一人一人のキャラが濃く、人間模様が面白い」とお薦めする。

 ミネさんは「地域の出版社として地域の魅力を紙に残し、市内外に発信していきたい」と、第3弾に向けても意気込んでいる。

 みさきっちょは、税抜き価格1400円。本と屯や書店で購入できる。問い合わせは、ミネさんにメール。アドレスはmineshingo@atashisya.com

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