平和宣言起草委 最終会合 「核禁」批准 政府へ要求 長崎市長、9条堅持明記に難色

平和宣言文の修正案について意見を述べる委員=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市は6日、8月9日の平和祈念式典で田上富久市長が読み上げる平和宣言文の起草委員会の最終会合を市内で開き、修正案を提示した。原案を議論した前回会合での意見を踏まえ、日本政府に対し、核兵器禁止条約への署名・批准を求める文言を加えた。一方、最終会合では安倍政権が目指す改憲に絡み、複数の委員が9条堅持の訴えを明記するよう求めたが、田上市長は難色を示した。

 文案は、日本政府に「核の傘」からの脱却と「北東アジア非核兵器地帯」の実現を目指すよう呼び掛けている。原案で政府に「支える立場」を求めた核兵器禁止条約については、「署名・批准」と踏み込んだ。長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎副センター長(68)は、「一刻も早い批准」と強めるよう注文した。

 一方、憲法を巡っては、政府に平和の理念を世界に広げるよう求めるにとどまっている。長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(78)は、自民党が参院選公約で9条への「自衛隊の明記」を掲げていることに懸念を示し、「原爆投下は戦争の結果。絶対に戦争してはいけないというのが長崎や広島で死んだ人たちの叫びだ」と再考を求めた。

 田上市長は終了後の取材に「世界の恒久平和を目指す上で安全保障や憲法について市民の間には多様な意見がある。(宣言文に)盛り込むのは難しいと思っている」と話した。

 文案には、被爆者がつづった原爆詩の抜粋や、米ロの対立への懸念、核廃絶に向けた市民社会への期待なども盛り込んだ。

 起草委は委員長の田上市長や被爆者、有識者ら15人で組織。市は7月末に内容を固める。

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