社説(7/8):2019参院選 憲法改正/曖昧な中身 もっと熟議を

©株式会社河北新報社

 2017年5月の憲法記念日にさかのぼる。安倍晋三首相(自民党総裁)は、憲法9条の条文をそのままにして自衛隊の存在を書き込むという新たな改憲案を発表した。

 あれから2年。今回の参院選で、自民党は憲法改正を「結党以来の党是である」として重点公約に掲げ、自衛隊の明記など4項目を列挙した。いよいよ国会での発議、国民投票に向けて動きを速める姿勢をにじませる。

 参院選の公示前に、共同通信社が立候補予定者を対象に行った政策アンケートによると、自衛隊明記に55.4%が反対し、賛成と答えた30.1%を大きく上回った。

 自民党候補の9割が賛成したものの、「改憲勢力」と見なされている公明党や日本維新の会の候補に反対や無回答が目立ったのが影響した。立憲民主、国民民主、共産、社民の各党は反対が多かった。

 選挙後に優先すべき政策課題(複数回答)でも、トップの社会保障改革(54.6%)や景気対策などに比べて憲法改正は7.1%と下位にある。安倍首相の並々ならぬ意欲とは裏腹に賛同の声は広がっていない。

 その理由は、分かりにくさにある。自衛隊の存在を書き込んだとして、「何ができて、何ができないのか」「どこまで武力行使は許されるのか」といった肝心な点が判然としていない。

 「海外派遣の範囲など任務が際限なく広がるのでは」との不安につながっている。

 戦力放棄をうたった現行9条の1、2項を残すとしても、「後法は前法に優越する」という一般原則により、前にあった条項は効力を失うと指摘する専門家も多い。

 与党内でも、公明党は「まだ議論が不十分、論議を深めないといけない」と慎重だ。

 国会の憲法審査会では、その辺りの細かいところまで及ぶことは少なかった。選挙をにらんだ駆け引きと相互批判に終始し、本質を問う熟議に程遠かったと言っていい。

 野党は、国民投票の利便性を公職選挙法にそろえる国民投票法の改正には前向きな一方で、憲法そのものの議論からは距離を置いた。

 自民党のペースに乗せられるのを警戒したのだろうが、憲法改正に対するスタンスをどこに据えるのか、有権者には伝わってこなかった。

 同党の改憲4項目は9条のほか、緊急事態条項、参院の「合区」解消、教育充実から成る。差し迫ったテーマと見られていない上に、関連法を見直せば十分との声もある。

 国会発議に必要な3分の2の議席数を巡る争いがクローズアップされ、中身を生煮えのまま置き去りにしていないか。

 憲法は、理念をうたう国の背骨である。暮らしに直結しなくても関心を持っていたい。改正するかどうかを決めるのは国民であり、政党は分かりやすく示す責任がある。