国道57号「早く元に」 大動脈寸断 被災の阿蘇地域 インフラ復旧、参院選争点ならず

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立野地区の斜面崩壊現場。山沿いを走る国道57号とJR豊肥線は今も寸断されたままだ=4日、南阿蘇村

 熊本地震で道路や鉄道に大きな被害が出た阿蘇地域。国道57号の北側復旧ルートや新阿蘇大橋は2020年度の開通に向けて急ピッチで工事が進み、JR豊肥線も20年度中の運行再開の見通しが発表された。一方で熊本市方面へ向かう大動脈の57号現道は依然として復旧時期が示されておらず、地元から不満の声も出始めた。

 「代替道路のミルクロードは曲がりくねった峠道。渋滞もあってとにかく不便」。月に1度、妻を大津町の病院まで送る阿蘇市山田の村崎正弘さん(82)は、国道57号復旧ルートの早期開通を待ち望む。

 地震で大規模な斜面崩壊が起き、JR豊肥線とともに今も寸断されたままの国道57号。国はまず、北側復旧ルート(阿蘇市赤水-大津町引水)の工事を急ぐ。2月には難工事とされた外輪山を貫く二重峠[ふたえのとうげ]トンネルが貫通。工事費はトンネルだけで約231億円に上る。

 JR豊肥線の不通区間(肥後大津-阿蘇)の復旧には、18年8月に施行された改正鉄道軌道整備法の活用を目指している。復旧費は約50億円で、4分の1の地方負担分は県が全額負担する方針。20年度中の運行再開に向けて、大きく前進した。

 「通院通学も便利になり、復興に弾みがつく」と阿蘇市の市民団体「阿蘇の未知(道)を考える女性の会」の神保京子会長(77)。一方、立野駅前で「ニコニコ饅頭[まんじゅう]」を営む高瀬忠幸さん(82)は「豊肥線は阿蘇地域に観光客を運ぶために不可欠。もう少し早くならないか」と注文する。

 インフラ復旧や国土強靱[きょうじん]化は巨額の予算を伴い、整備後の維持管理費が重荷になる可能性もある。ただ各地で自然災害が相次ぐ中、参院選の大きな争点にはなっていない。

 地震の痕跡が色濃く残る南阿蘇村立野。本震から3年2カ月となった6月16日、地震で2人が亡くなった新所区で、当時の区長、山内博史さん(65)が花を手向けていた。

 大動脈寸断による利便性の低下も影響し、立野地区では長期避難世帯認定が17年10月末に解除された後も、帰還したのは360世帯中158世帯(4月時点)にとどまる。

 「豊肥線も大事だが、ここが活気づくためには国道57号の現道復旧が欠かせない。早く開通時期を示してほしい」。山内さんは慰霊碑の前で訴えた。(中尾有希、田上一平)

(2019年7月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)