高齢者の命を地震から守る 介護職員の奮闘、教訓を記録  日本認知症グループホーム協会熊本県支部長・高橋さんが本に

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「大地震から認知症高齢者を守れ‼」の表紙

 日本認知症グループホーム協会県支部長で自身も甲佐町でホームを運営する高橋恵子さん(54)が、熊本地震で施設が大きな被害を受けながらもスタッフと連携して運営を続け、入所する高齢者の命を守り抜いた実体験を1冊の本にまとめた。高橋さんは「家族や自らの身を顧みずお年寄りのために体を張った介護職員の奮闘の記録として広く伝えたい」と話している。

 タイトルは「大地震から認知症高齢者を守れ‼」。高橋さんをはじめ施設職員や全国から支援に駆け付けた介護関係者ら13人が執筆した。発災直後に必要とされる支援や、継続的に求められる援助とそのあり方、支援する側に必要な意識と活動など、実際の災害支援の経験から得た教訓を具体的に記録する。

 高橋さんによると、前震時に入所していた高齢者は9人。施設ではさまざまな物が倒れ、瓦も落ちて危険な状態だった。設備もない避難所でお年寄りを介助する生活を余儀なくされた職員らは、本震に加え相次ぐ余震への不安から「ここで建物ごとみんな一緒につぶされても仕方ない」と思うほど精神的に追い詰められたという。

 施設に戻ったのは1週間後。がれきを踏み分けて歩くような状態の施設を復旧するスタッフ自身も被災者という厳しい現実に直面した。高橋さんは「職員の疲れやすさや、利用者の容体の変化など、すべてが平時とはまったく違うものだった」と振り返る。

 全国の福祉関係者らから支援も寄せられたが、スタッフが問い合わせなどの電話応対に忙殺された。また、短期の介護支援申し入れが多く、その都度お年寄りの症状説明を繰り返す必要があった。「支援は本当にありがたいが、必要な援助をこちらからSNSなどを通じて発信すること、長期滞在型の支援こそ大切なことがよく分かった」。同じ支援者が長期間関わることで入所者の名前と必要なケアを理解し、落ち着いた介護の提供につなげられるという。

 一方、地域に根差した小規模ホームとしての利点を感じられたことも。地震直後には地域の消防団が駆け付けて、お年寄りの避難を手助け。ホームに届いた支援物資は、地域の被災家庭にも配って回った。「グループホームは、地域の災害支援の拠点になりえる」。避難訓練や交流会など地域との関わりを深めてきたこれまでの活動の意義を、再確認することもできた。

 3年たった今、ようやく気持ちを落ち着けて介護に向かい合えるようになった。当時を思い返しながらまとめた本では、局面に応じて考えるべきポイントや気付きを簡潔に指摘する。高橋さんは「いざ大災害に遭遇すると、何からどうしていいのか分からないことばかり。経験したからこそ感じた介護現場に必要な備えについて、幅広く共有したい」と話している。

 ぱーそん書房。B5判111ページ。1944円。(松本敦)

(2019年7月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)