STC2000第5戦:最終ラップの大逆転劇。トヨタ・カローラのロッシが今季2勝目

 2019年から新生2リッター4気筒直噴ターボのワンメイクエンジンを搭載する、アルゼンチンの人気ツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)の第5戦が同国東部のパラナで開催され、王者のルノー・フルーエンスGTを最終ラップで逆転したTOYOTA GAZOO Racing YPF Infiniaのマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラ)が今季2勝目を飾っている。

 6月29~30日にウルグアイに国境を接するアルゼンチン東部パラナ州、エントレ・リオスのトラックに集ったSTC2000の一団は、ここパラナでのSTC2000のシリーズ名称では初のレース開催となった。

 今季からフォーマットが改められており、土曜クリファイレースは一般的な計時予選方式となり、タイム上位6台が最終グリッドを決めるシングルカー方式の“スーパー・クオリファイ”に進出する。

 しかし、開幕戦からここまで予選上位と決勝結果で顔ぶれに動きがないことを危惧したシリーズは、このラウンドから予選上位4台のマシンに“ペナルティ・ウエイト”を搭載すると発表。これによりSQ進出6台中3台のマシンが競争力あるラップタイムを回避することを選択し、議論を呼ぶことになった。

 そのうちのひとりで、今季から現地法人のサポートを得て本格参戦を開始したホンダ・レーシング・アルゼンティーナのリカルド・リサッティ(ホンダ・シビックSTC2000)は、6番手に留まるためにスロー走行を続けていたが、チーム代表のヴィクトール・ロッソから「ポールポジションを獲りにいけ」との無線指示を得てタイムを改善し、1分28秒526を記録し最終的に3番グリッドを獲得。

 続いてシボレーYPFのベルナルド・レイバー(シボレーYPFクルーズ)がアタックに入り、ホンダから0.6秒遅れの4番手に。さらにルノースポール・アルゼンティーナのマティアス・ミラ(ルノー・フルーエンスGT)は露骨な戦術を採り、インスタレーションラップを終えてピットに戻りノータイム。前戦で今季初勝利を挙げた王者ファクンド・アルドゥソ(ルノー・フルーエンスGT)は2分以上かけてトラックを一周し5番手を確保するなど、急遽変更のスポーティングが悪い形で作用してしまう。

 その一方で、ウエイト搭載覚悟でアタックを敢行した開幕連勝のリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)が1分27秒464と、3番手ロッシを1秒近く突き放すポールタイムをマーク。2番手にも0.163秒差でトヨタのロッシが続き、上位4台のマシンはそれぞれ70、60、55、そして50kgの決して少なくない量のウエイトを積んで日曜のレースを戦うこととなった。

ウエイト回避組を尻目に、堂々とポールラップを刻んだ選手権首位のリオネル・ペーニャ
ホンダ・シビックSTC2000は、リカルド・リサッティが今季最上位となる予選3番手を獲得
4番手スタートから首位にジャンプアップしたのは、ウエイト搭載を回避した王者ファクンド・アルドゥソ

 すると日曜決勝のオープニングラップでは、初搭載のペナルティ・ウエイトがてきめんに効果を発揮し、ポールシッターのペーニャは高速バンクの1コーナー進入でマシンが曲がらず大きくワイドラン。6番手にまでポジションを落とすと、ノーウエイトの王者アルドゥソがオープニングラップで前方のマシンを全車仕留めて首位に浮上する。

 さらに、ポジション死守の2番手ロッシに続き、3番手にはホンダのリサッティをかわしたシトロエン・トタル・アルゼンティーナのファクンド・チャプル(シトロエンC4ラウンジ)が上がってくる。

 またこのオープニングラップでは、2016年王者のアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)を不運が襲い、タイヤバーストによるスピンで戦線離脱。早々にピットインを強いられる事態となる。

 1周目のミスを挽回したいポールシッターのペーニャは、序盤に軽いコンタクトをともないながらシトロエンのチャプルを仕留めて3番手に上がってくると、その後はペーニャ、チャプル、リサッティの三つ巴でポジションを入れ替える展開となりながら、上位勢はこう着状態に。

 すると20周目にホンダ・レーシングの残る2台、ファン-アンヘル・ロッソとホセ-マニュエル・ウルセラがチームメイト同士で絡んでクラッシュとなり、セーフティカーが導入されることに。

 24ラップのレースは残り1周の超スプリントで再開となり、車間の詰まった上位勢は2番手ロッシが最終コーナーから首位のアルドゥソにピタリとつけスリップストリームに入ると、そのまま1コーナーバンクにテール・トゥ・ノーズのまま進入。

 旋回からの高速ブレーキングとなるターン2に向けトヨタ・カローラをインに振ったロッシは、見事なダイブを決め首位浮上に成功。そのまま大逆転でトップチェッカーをくぐり、ウエイトを搭載するマシンを巧みに操り今季2勝目を獲得してみせた。

 2位アルドゥソ、3位ペーニャに続き、4位にはトヨタの僚友ジュリアン・サンテロが入り、ホンダのリサッティが続くトップ5に。この結果、ペーニャが88ポイントで選手権首位をキープ。2位アルドゥソの72ポイントに対し、3位ロッシが64ポイントに詰め寄っている。

 続くSTC2000の第6戦は7月20〜21日開催。アルゼンチン北西部、アンデス山麓のふもとに位置する標高1000m越えのサルタのトラックで争われる。

この1コーナーから2コーナーへと続く高速バンク区間が最終周のドラマを生んだ
24周目の劇的決着で今季2勝目をマークしたマティアス・ロッシとトヨタ・カローラ
この勝利で、選手権でも上位2台のルノーに迫るランキング3位に浮上している

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