ヘビー級で歴史的な大番狂わせ 3団体王者ジョシュアがまさかの初黒星

ボクシング世界戦でアンソニー・ジョシュアからダウンを奪うアンディ・ルイス(奥)=1日、ニューヨーク(ゲッティ=共同)

  6月1日、米国の殿堂ともいえるニューヨークのマディソンスクエアガーデン(MSG)で歴史的な大番狂わせが起こり、世界中のファンに衝撃が走った。

 世界ボクシング協会(WBA)、世界ボクシング機構(WBO)、国際ボクシング連盟(IBF)のヘビー級王者アンソニー・ジョシュア(英国)が、WBA5位アンディ・ルイス(米国)に7回TKOで敗れ、王座から転落、初黒星を喫した。

 デビュー以来、22連勝(21KO)を続けていたスターの思わぬ挫折に、6階級を制覇したマニー・パッキャオ(フィリピン)も「ボクシング史に残る番狂わせの一つ」と驚きを隠さない。

 確かにそうだろう。ジョシュアは2012年のロンドン五輪スーパーヘビー級の金メダリスト。

 ボクシング発祥の地に生まれた英才としてプロ転向後も上昇の一途をたどり、あっという間にヘビー級の頂点に立った。さらなる高みへ向け、米国デビュー戦でMSGを選んだ。

 一方、挑戦者のルイスに目立った実績はなく、予想は圧倒的に王者有利と見られていた。

 しかし、ボクシングは何が起きるか分からない。2回まで王者ペースで進んでいたが、3回に急変した。

 まず王者が先制のダウンを奪う。誰もがKO決着を思ったはず。ところが猛攻に耐えたルイスがダウンを奪い返し、さらに2度目のダウンを奪った。

 そして迎えた7回、ルイスのラッシュが始まる。王者は3度目のダウン。立ち上がる王者にルイスは追撃、4度目のダウンを奪った後、戦意喪失気味のジョシュアに対し、レフェリーが試合をストップした。

 メキシコ系米国人として初の世界ヘビー級王者が誕生した。

 リング上で狂喜乱舞の新王者は「不可能と言われていたことを可能にした。歴史を作ることができた。この日をずっと夢見てきた」と喜びを表現。不覚を取ったジョシュアは「ファンをがっかりさせた」と意気消沈した。

 ライバルの世界ボクシング評議会(WBC)王者デオンテイ・ワイルダー(米国)は「ジョシュアは真のチャンピオンではなかった」と語った。両者による夢の対決は遠のいてしまった。

 ヘビー級の大番狂わせといえば、1990年2月、東京ドームでマイク・タイソン(米国)がジェームズ・ダグラス(米国)に敗れた一戦が思い出される。

 この30年では、それ以来のハプニングかもしれない。

 ジョシュアは年内にもルイスとの再戦が計画されている。汚名返上へ。ジョシュアの意地が見ものとなる。(津江章二)

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