急拡大する市場 プログラミング教育(上) 高まる関心 背景に保護者の不安

子ども向けのプログラミング言語「スクラッチ」を使ってゲームを創作する子どもたち=大和市

 「プレーヤー(主人公)の体力を変化させられるようになってうれしい」「アイテムを増やしたら面白くなった」-。大和駅前に昨春開校した「大和プログラミングスクール」でパソコンに向かう小学生が目を輝かせた。自作のアクションゲームや追いかけっこゲームがプログラムの指示通りに動いたのだ。

 2020年度に小学校で必修化される「プログラミング教育」で小学生の学びが変わるのを前に、専門教室が保護者の関心を集めている。

 プログラミング教育は、子どもたちがコンピューターに目的通りの作業をさせるプログラムの仕組みを理解し、論理的な思考力を培うことが目的だ。実際の授業では、専用のソフトを使い、算数で正多角形などの図形を描くことに挑戦したり、理科で明かりの点灯制御を行ったりすることが想定されている。

 週に1度、この教室に小学5年と3年の男児を通わせる会社員の男性(36)は「子どもたちはゲームが好き。コンピューターの操作やプログラミング技術の習得そのものより、子どもが楽しみながら論理的な考え方を養えることが重要ではないか」と話す。

 「子どもをどうやってサポートすればいいのか」

 プログラミング教育に関連した専門教室が人気を集める背景には、保護者の漠とした不安が少なからずあるという。

 川崎市内で小4男児を専門教室に通わせる女性は、「学校でどのように成績が評価されるのか分からない。だから早めに触れさせたい」と明かす。同スクールの吉村仁代表(42)も「入会のきっかけで圧倒的に多いのは、新しい学習内容がよく分からず、不安に思う保護者が子どもを連れてくるケース」と指摘する。

 新たな教育分野のため、学校には子どもたちに教えるノウハウの蓄積はまだない。「学校の担当教員のスキルが低ければ、自分の子どもがつまずいてしまうのではないか」という保護者の不安を解消し、子どもたちの論理的思考や課題解決能力といった普遍的な力を育むことを、吉村代表は重視する。

 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)に対応した機器など、情報技術の革新を見越して導入されるプログラミング教育。関連する市場は今後しばらく拡大しそうだ。

 玩具メーカー大手のバンダイ(東京)が小中学生とその保護者900組を対象にインターネットで実施した今年2月の調査では、プログラミング教育に関わる取り組みを始めている家庭は17.2%。内訳の最多はパソコンやタブレット端末を使った遊びや学習だが、教室に通ったり教材で勉強したりしている人もいた。

 GMOメディア(同)が運営するプログラミング教室メディア「コエテコ」と船井総合研究所(大阪)の推計によると、2019年のプログラミング教育の市場規模は約114億円で、前年と比べ約26%増となった。

 今後は中高生向けに高度で実践的な内容を学べる教室や、未就学児向けの初歩的な教室が増える可能性があるほか、「プログラミング教育が進学や就職など将来に役立つ」という認識が浸透するにつれ、さらなる盛り上がりが期待できると予測。市場規模は24年には19年比約2.3倍の約257億円に膨らむ見通しで、30年までに1千億円を超える可能性もあるとしている。

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 小学校でのプログラミング教育必修化を控え、教育産業やIT企業などが関連するサービスに続々と乗り出した。時代とともに変化する学びを巡る市場の今を追う。

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