【T.T彩たま】大型補強で見据える“ケンタ再生”と“欧州への恩返し”(坂本監督インタビュー#2)

写真:坂本竜介監督(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

選手をガラリと入れ替え、T.T彩たまはその陣容を一新した。

中でも注目は17歳の新星・トルルス・モーレゴードだ。モーレゴードは2017年世界ジュニアで準優勝した実績を持ち、昨年のユースオリンピックでは張本智和にも勝利している。今後のヨーロッパを代表するであろう逸材だ。取材日当日は父と兄とともに合宿場へと入っていった。終始メンバーと笑顔でコミュニケーションとり、練習前には遊びながら背面打ちを披露するなど、リラックスしていた様子だった。

そして木下マイスター東京から移籍した松平健太。昨シーズンはシングルスで負け越し、正直、成績だけに目を向ければ振るわなかったと言っていいだろう。両選手獲得にあたっての坂本監督の思惑は。

――“大物食い”のピッチフォードを加えたと思ったら今度は一転してスウェーデンから17歳の若者を連れてきましたね。

坂本:モーレゴードですね。僕はスウェーデンに2010-11シーズンに25歳の時にいたんですが、その時に僕がいたチームに8歳で彼がいて。お兄ちゃんも、当時は中1でしたね。当時から2人とも可愛がってて。それで、2年前の世界ジュニアで決勝行ったときに“誰だこのスウェーデンのやつは”と衝撃を受けて、顔見たらあの8歳の少年がこんなに大きくなって強くなってた。

――それは驚きますね。

坂本:確かに当時から天才的なセンスだったんですよ。僕はそのときから、彼の球出しとかしていたのですが、成長に驚いた。“あれ?こんな強くなったんだ”って。

Tリーグが去年できたタイミングで「Tリーグにすごい興味がある」って連絡もらって、中でもT.T彩たまに興味がある、と。それでお父さんとFBメッセでやり取りし始めて。

――ピッチフォードのインスタDMに続き、FBメッセなんですね

坂本:誰とでもすぐに繋がれる時代ですからね。T.T彩たまに入ることになったのは彼自身がハイレベルな環境でやってみたいっていう理由があったみたいです。

――Tリーグは海外から見ると大きな反響があるんですね。

坂本:ええ。自分とか(水谷)隼とか(岸川)聖也とかが若いうちにTリーグはなかったんで、ヨーロッパのブンデスリーグに行って、修行していました。当時の日本はランキング11位とか12位とかで弱かった。そうやって自分たちが海外で武者修行を始めた、4年後、5年後にメダル常連国になっていった経緯がある。なら今度は恩返しじゃないけど、ヨーロッパの若い選手を日本で育てる番じゃないかなと。

――確かに17歳は育てがいがありますね。

坂本:僕は3年契約で監督の契約を結んでいるので、うちのチームで預かって、確実に強くなるように育てていきたいっていう話をしています。日本に来て、さらに強くなって、オリンピック、世界選手権でメダルをとれるようになったら、これは素晴らしいことだなと。

Tリーグのイメージもすごいヨーロッパにとってよくなると思ってて。ヨーロッパの若い選手がどんどんTリーグに行きたいなとかいろんな国の選手がTリーグ行きたいなってなってくれると、Tリーグが活性化するし、マーケットも大きくなる。そういう意味でも、若い選手を取り入れて、育てるっていう部分は、重要なことだなと思っているので。

――モーレゴード選手はどれくらい日本に滞在するのでしょうか

坂本:彼は世界ジュニアとかジュニアの試合がいっぱいあるので、来れる試合数がどれくらいかは、まだはっきりとはわかっていない。でも後半戦はほぼいるはず。その間は、練習もずっと一緒にさせる。その間にどこかの実業団に連れて行ったり、大学にも連れて行ったりしながら、いろいろ武者修行させようかなと。

――なるほど。合宿の練習中も細かく指示出ししていましたね。モーレゴード選手の活躍に期待ですね。3人目ですが、松平健太選手が加入しました。

坂本:僕は彼のプライベートコーチを4年間やってたので、もちろん長い付き合い。その僕から見て、去年一年間の彼のプレーぶりや顔つきを見ると、最悪な顔をしていたので。もう一花咲かせるためには、うちに来るしかないんじゃないんかな、と思っていた。

T.T彩たま、ひいては日本の卓球界にとっても健太が復活することは、すごいキーポイントになると思っているんで、そのためには間違いなく必要な選手だし、彼に頑張ってもらうことが、チームの勝ちにもつながる。何より、健太はうちのチームが合うと思っていた。

――“最悪の顔”の要因はどこにあったと思いますか?

坂本:たぶんその環境が単純に水が合う合わないがあるんで、本人も口に出して言ってるわけじゃないですけど、まあなんかいろいろ合わないことがあるんじゃないかな。

――それがT.T彩たまに入れば変わる、と

坂本:たぶん聖也がいるってのもあるし、ジンタク(神巧也)も仲いいし。もちろん選手はみんな仲いいんですけど、そういう仲いい人が多いっていうのはやりやすさにつながりますよね。だから自由契約リストにあがった瞬間にすぐ声かけて、決まるのもそこまで時間はかからなかった。

――特に岸川選手はコーチも兼任しています。監督と選手をつなぐ架け橋のような役割なのでしょうか?

坂本:ええ。うちのチームでは聖也はメインがコーチでやってもらうんで、今回の合宿に入ってからも細かく技術を教えてくれてる。間違いなく良いコーチ。僕にあって聖也になくて、聖也にあって僕にあるものがあるので上手に噛み合っていると思います。

――具体的には?

坂本:卓球の技術っていう意味では、彼のほうが全然長けてるし、彼の方が経験値は高い。一方で僕はそういう意味では、精神的なサポートに徹します。聖也の場合は本当にもっと細かい、世界で勝つための技術を知っているので。今回の合宿に入る時も、聖也から「僕はもう球出しとかも全部するんで」と言ってくれてた。T.T彩たまでは上手に監督とコーチっていうポジションが確立できつつあるな、と手応えを感じています。

――これからが楽しみですね。次回はチーム全体のことを教えてください。
(次回に続く)

文:武田鼎(ラリーズ編集部)

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