ブルース・スプリングスティーン『ウエスタン・スターズ』 本当のアメリカン・スピリッツは何処へ

ブルース・スプリングスティーン『ウエスタン・スターズ』

 5年ぶり、19枚目のオリジナル・アルバムです。昨年ブロードウェイのウォルター・カー劇場でのライヴ・アルバムをリリースしたばかりの彼ですが、なんと本作は10年の後半から制作が始まっていたという特別な作品です。アルバムタイトル、収録曲のテーマそしてアートワークからアメリカの西部に思いを寄せたノスタルジックな作品と早合点しそうですが、実は今日のアメリカを憂慮する作品なのです。

 若い頃、車で大陸を横断、アメリカの広大さ美しさに感動した彼の原体験が本作品のベースになっていますが、それを懐かしむのではなく、本来のアメリカン・スピリッツを信条に精一杯生きてきた人々の人生を映画の1シーンのように語ります、それは西部劇の撃たれ役、スタントマン、カフェを開いた帰還兵、シンガー。ブロードウェイのライヴで彼は言っています。「今の自分を理解するためにアメリカのストーリーを知らなければならない。私たちは真のアメリカン・スピリッツのために戦い、努力してきたのだから」

(ソニーミュージック・2400円+税、LP2枚組5800円+税)=北澤孝

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