マドンナ『マダムX』 聖母のような愛と包容力に溢れた作品

マドンナ『マダムX』

 『レベル・ハート』以来4年ぶり14枚目の新作です。84年の『ライク・ア・ヴァージン』発表時の彼女は26歳、以来、社会の常識に反発しながらも女性の地位向上、社会の偏見、差別と闘ってきたポップ・アイコンは現在60歳、リスボンに居を移し非欧米のカルチャーを吸収することによって、マドンナ(聖母)のような愛と包容力にあふれた作品を創造しました。

 自由の為に闘うだけでなく、闘う声を持たない人々に立ち上がる力を与えるというミッションをもったスパイ“マダムX”が国家元首、騎手、修道女、娼婦、聖人らに姿を変えて世界を旅するというコンセプト。「キラーズ・フー・アー・パーティーイング」では“イスラム教徒が嫌悪されるのなら、私はイスラム教徒になる”と、人を分断するのではなく嫌われる側に立って苦しみを共有、人類という視点で愛を説きます。

 そして「ダーク・バレエ」のMVの冒頭に映し出されるジャンヌ・ダルクの“あなたが何者であるかを放棄し、信念を持たずに生きることは死ぬことより悲しい”という言葉で声をもたない人々の背中を押すのです。

(ユニバーサル・2500円+税、2CDデラックス盤3500円+税)=北澤孝

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