諫干営農者 開門を主張 食害損賠訴訟 長崎地裁

 国営諫早湾干拓事業で、国などが対策を怠り野鳥による農作物食害を受けたとして、営農する2法人が国などに損害賠償と潮受け堤防排水門の開門を求めた訴訟の口頭弁論が9日、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)であった。原告の松尾公春さん(62)が意見陳述し、「開門で塩害や潮風害は生じない。閉め切った現状こそが農業の大きな足かせになっている」と開門による農業環境改善を主張した。
 陳述によると、松尾さんは2008年4月に入植し、約30ヘクタールで農業を営んでいたが、食害や寒害などに悩まされ、18年1月に提訴。一方、農地を管理する県農業振興公社などは同3月、2法人に農地の明け渡しを求める訴訟を起こした。
 松尾さんは「干拓地の農業は農水省などがいう『良好な状況』ではなく、撤退する経営体が相次いでいる。寒害などを避けるためにビニールハウスが建てられている」と実態を訴えた。その上で「開門して野鳥被害、寒害などを解決し、営農が続けられるよう、漁業者が提案する農業基金を創設してほしい」と主張した。

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