横断歩道って、歩行者優先じゃありませんでしたっけ?|交通マナーについてあらためて考えてみる

歩行者優先 『写真はイメージです】

歩行者がいたら停止または徐行が原則

歩行者優先 【写真はイメージです】

最近、信号機のない横断歩道が気になっている。もちろん、横断歩道好きとかそういうことではない。信号機のない横断歩道でのクルマの走り方の話だ。

見通しのいい真っ直ぐな片側1車線道路に、信号のない横断歩道があると思ってほしい。この時、横断歩道そばの歩道に歩行者が立っていたらドライバーはどうするべきか?

これが試験問題なら「横断歩道の手前か、停止線があればそこで停車する」が多数の答えだろう。「横断歩道か停止線で停車できるように、徐行しながら歩行者の様子を見る」という答えも多いと思う。横断歩道が近づいたら、まず歩行者の有無を確認。横断歩道に人が立っていたなら、止まるか徐行するかを判断する。きわめて基本的な話だ。

信号機がなく歩行者のいる交差点。あなたは止まりますか?[フォトギャラリー]

歩行者無視のクルマは9割以上という高確率

歩行者優先? 【写真はイメージです】

最近、横断歩道に立つ歩行者を無視するクルマが増えたといわれる。一昨年に、JAFがいくつかの交差点で行った調査では、歩行者無視のクルマが9割以上あったという。歩行者優先は、道路交通法にも記されているお約束なのだが、年々ないがしろにされているようなのが気になる。

ただし、信号のない横断歩道を徐行なしで通りすぎていいときもある。それは、道交法(第三十八条 横断歩道等における歩行者等の優先)から引用的に書くと“横断歩道を渡ろうとする歩行者がないことが明らかな場合”だ。歩道や周囲を見渡して誰もいないなら、横断歩道を渡る歩行者がいないのは明らかだから徐行の必要もない、というわけだ。

そこで注意したいのが、引用文が(もちろん原文も)『近くに歩行者がいても、横断歩道を渡る意思がないのが明らかならば徐行の必要がない』というようにも解釈できること。

たとえば、歩行者が横断歩道に背を向けていたり、二・三人での立ち話しているなら、横断歩道を渡る可能性は低い。状況をどう認識するかは、ドライバーそれぞれに委ねられているわけで、そのあたりの認識の揺れが、歩行者無視のクルマを増やしているような気もする。遠くから見ている人には、歩行者無視に見えてしまうようなシチュエーションもあるに違いない。

歩行者も道交法を守るべし

歩行者優先? 【写真はイメージです】

また、歩行者も道交法を守る義務を負っているというのも、忘れてはいけないことだ。いくら歩行者優先だからといって、ヘッドホンにスマホでゲームをしながら歩いて来られては、コミュニケーションのとりようがないし、それは明らかに道交法無視だ。歩行者優先は、クルマと歩行者が、道交法という同じルールを守った上でのお約束なのだ。

ちょっと前のこと、信号のない横断歩道にお年寄りがいたので停車すると、「お先にどうぞ」と合図されることが度々あった。そこでボクは毎度「いや、どうぞ」と合図を返して譲り合いになり、大体はボクの方が譲られることになった。後で知り合いのお年寄りに聞いてみたら、歩くのが遅くて迷惑になるから、クルマが行ってからゆっくり渡るのだろうという。そのお年寄りも同じようにしているそうで、ボクはそこまで思い至らなかったことに少しだけ後悔した。

この出来事が、道交法でどんな解釈になるか分からないが、少なくとも試験問題としては成立しなさそうだ。ただ思うのは、歩行者の考える安全とドライバーの考える安全は、必ずしも一致しないということ。歩行者優先だからこそ、歩行者もドライバーも意思表示を心がけるべきなのだ。

[筆者:永田 トモオ]

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