ファンに衝撃を与えた「元モーニング娘。の鞘師里保が、BABYMETALのサポートダンサーに」という事実 鞘師が見つめている「今」とは何か

元モーニング娘。の鞘師里保が、BABYMETALのサポートダンサーとしてコンサートに登場し、アイドル界に衝撃が走りました。

結成以来、ボーカル&ダンスのSU-METAL、スクリーム&ダンスのMOAMETALとYUIMETALの3人編成で活動していたBABYMETALですが、2018年10月にYUIMETALが脱退。その後、5人のサポートダンサーを加えてパフォーマンスをすることもありましたが、今年6月に行われたコンサート『BABYMETAL AWAKENS – THE SUN ALSO RISES -』にて、“アベンジャーズ”と呼ばれる3人のサポートダンサーの中から毎公演1人が出演する3人体制に復帰。その1人目のアベンジャーズとして、6月28日に横浜アリーナのステージに登場したのが、鞘師里保だったのです。

鞘師と言えば、モーニング娘。時代にはキレキレのダンスで魅せるだけでなく、歌唱面でも多くのソロパートを担ったエース的存在。しかし、2015年12月31日をもってモーニング娘。を卒業し、ダンスと語学の勉強のために、海外へ留学することとなります。この時、鞘師は17歳。モーニング娘。の大エースとして君臨する中での決断に、多くのファンが驚きました。

卒業後は、特に目立った活動もなく、SNSなどでの発信もなかったので、鞘師がどうなっているのかはわからない状態が続きました。そんななか、今年3月30日に幕張メッセで行われた『Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project ひなフェス 2019』にゲスト出演。3年3カ月ぶりにハロー!プロジェクトのステージに立ち、現役のモーニング娘。のメンバーたちと共演したのです。

それから約3カ月後、鞘師が現れたのはまさかのBABYMETALのステージ。そこでは、歌うことなくダイナミックに踊る姿がありました。

そして、鞘師は6月30日、再びBABYMETALのサポートダンサーとしてイギリスの音楽フェス『グラストンベリー・フェスティバル2019』にも出演。ここでもまた、大観衆を前に圧巻のダンスを見せつけたのです。

鞘師とSU-METALこと中元すず香は、幼少期を広島で過ごしており、名門「アクターズスクール広島」でともにダンスや歌のレッスン積んできた、いわば幼なじみ。中元が一学年上ですが、スクール内では同じユニットに所属したこともあり、良きライバルといった関係です。

その後、モーニング娘。とBABYMETALとで別々の道を歩むわけですが、ここにきて満を持しての邂逅。まさに漫画のような展開です。

とはいえ、鞘師がBABYMETALのサポートダンサーを務めることについては、いろいろな意見もあるでしょう。特に、モーニング娘。時代に鞘師が好きだったというファンにしてみれば複雑な部分もあると思います。

わざわざモーニング娘。を卒業してダンス留学をしたのだから、別のグループで活動するのではなく、1人でゼロからステージを作り出してほしい。既存の楽曲のダンスを踊るのではなく、もっと独創的なダンスを見せてほしい――そんな声が聞こえてくるのも事実です。

ただ、グラストンベリーの舞台で心底楽しそうにただただ無心に踊る鞘師の姿を見ていると、「ああ、鞘師は単純にダンスが好きなんだ。とにかく踊っていたいんだ」という気持ちになってくるのです。

かつての鞘師は「モーニング娘。」という看板を背負い、そのエースという役割を演じなければならないことも多かったでしょう。それこそ歌にも注力しなければならないし、ファンの期待にも応えなければならない。でも、“サポートダンサー”という立場であれば、妙なプレッシャーもなく、ただただダンスに打ち込むことができる。自らの技術を存分に発揮する“ダンス職人”として、パフォーマンスができる――。いろいろな呪縛から放たれて、シンプルに“ダンスと一体化”する鞘師の姿が、そこにはありました。

筆者はモーニング娘。に加入したときから、長年にわたって鞘師のパフォーマンスを見ていますが、これほどまでに充実した顔で楽しそうに踊っている鞘師を見たのは、初めてかもしれません。少なくとも3月に『ひなフェス』で見せた緊張感のある鞘師のパフォーマンスとは、異なるものでした。どちらが優れていたとか、どちらが素晴らしいとか、どちらか格好いいとか、そういうことではなく、BABYMETALで踊る鞘師はとにかくリラックスしていた。本人が最高に楽しそうにしているんだから、それだけで十分なのではないか? そう思わせるステージだったのです。

今後、鞘師がそれこそ“RIHOMETAL”となって正式メンバーとなるのか、それとも単なるサポートダンサーとしての一時的な助っ人なのかは不明です。そもそも、BABYMETALはオフィシャルの情報として、鞘師里保がサポートダンサーとして参加しているとはアナウンスしていません。つまり、今言えることは「BABYMETALのステージに鞘師里保が立った」ということではなく、「あのステージで誰かしらが圧倒的な存在感でダンスを披露した」ということだけです。

鞘師にしてみれば、肩書きとか経歴とか立場とかはどうでもいいことで、ただ踊れる場所がありさえすれば何も要らないということなのかもしれません。なんなら、その場所はモーニング娘。じゃなくてもいいし、BABYMETALである必要もない。「鞘師里保」という名前すら邪魔なのかもしれない。鞘師はただただ、思い切り踊れる場所を探しているのです。

今後、鞘師がどんな場所で踊っていくのかはわかりませんが、鞘師が表舞台に出てきたことは、それだけで価値があることです。楽しそうに踊る鞘師が見られることの素晴らしさを今一度噛みしめつつ、今後の活躍に期待しましょう。(文◎大塚ナギサ)

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