保存、復元に焦点 科学目線で見る「文化財」 県立川崎図書館で「守る技術」展

 県立川崎図書館(川崎市川崎区)で玄人好みの企画展が開催されている。「文化財を守る技術」と題した展示は文化財そのものの歴史ではなく、その保存や復元に関するプロの仕事や技術を紹介しようという企画だ。国内有数の科学技術系図書館だからこそ集められた資料の数々は、一見の価値ありだ。

 その虫まだすてないで−ぐちゃっとなっていてもかまいません 少々グロテスクな注意書きは、県立歴史博物館で実際に使用されているものだ。「虫害を防ぐためのわなで捕まえた虫の種類などを確認することで、その後の対策に役立てているんです」。県立川崎図書館の高田高史さんは企画の意図を「文化財を歴史的にではなく、科学として扱うことで違う見方、楽しみ方に気づいてほしかった」と語る。

 城壁の修復などを行う左官工を紹介するケースでは黒い水晶のような球体がある。正体は「泥だんご」。土を材料として丸く成形し、磨きで輝きを出す技は「左官工の技術の結集と言われています」と高田さん。東京駅舎に使われているタイルをオリジナルと復元したものを比較展示したものや、照明を開発する東芝ライテックがルーブル美術館で行っているライトアップの技術を紹介するコーナーもある。

 高田さんは「科学技術系の蔵書を集める専門図書館として、文化財保護に関するものも年に100冊くらい収集している。県立川崎がこうした役割を持つ図書館ということも知ってほしい」と話す。

 企画展は2月10日まで。来年1月16日には県立歴史博物館の嶋村元宏・主任学芸員が、同23日には東京文化財研究所の吉田直人・保存科学研究室長が、それぞれ午後2時から講演を行う。入場無料。申し込みは、同図書館電話044(233)4537。年内は27日まで開館。

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