<劇動・参院選ルポ>(2)岩手/政策は脇「古傷」焦点

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候補の訴えを聞く支持者ら=8日、北上市

 民主党政権を「悪夢」とこき下ろしてきた首相安倍晋三が、当時の看板大臣だけは徹底的に褒めちぎる。

 「使命感の下、与野党の壁を越えて全力で尽くしていた。すごかった。大変に感銘を受けた」

<「裏切られた」>

 8日夕、盛岡市の街頭に立った安倍。隣には民主政権の初代復興相にして今は自民に籍を置く現職平野達男がいた。

 自民にとって、過去8回連続で敗北を喫してきた参院選の岩手選挙区(改選数1)は「鬼門」に等しい。既にバッジを着けている平野を自陣に引き入れ、27年ぶりの勝利を期す。

 これを野党側から見れば変節となる。「政権から転落した途端、裏切られた」(労組幹部)「裏切りを許す文化は、政党を問わず岩手にはない」(ベテラン県議)

 政策論争を脇に置き、平野が抱えてしまった古傷を巡る攻防が、選挙戦の焦点になる。

 かばう自民は5日、党内随一の人気者、党厚生労働部会長小泉進次郎を奥州市に投入した。地元出身の米大リーガー大谷翔平になぞらえて小泉が絶叫する。「候補も民主党と自民党の二刀流だ」。沸く聴衆。対照的に陣営スタッフの表情は引きつる。

 再び8日夕の盛岡市。「安倍内閣の取り組みに参画させてほしい」。安倍の隣で平野は「自民の平野」を連呼した。それは有権者へのアピールだったか、それともいまだ仲間として受け入れてくれない一部自民支持者への懇願だったか。

<小沢流の選挙>

 「知名度では相手の半分にも及ばない。それでも絶対に勝たなきゃいけない」

 4日、無所属の新人横沢高徳の第一声に野党勢力の大立者、衆院議員小沢一郎(岩手3区)の姿があった。陣営スタッフに緊張が走った。

 50年の歳月をかけて小沢が岩手に築いた選挙ネットワークが動きだす。「系列の県議や市町村議が、集票を競い合うんだよ」(陣営幹部)。野党統一候補で無名の「横沢」を力業で売り込む。

 農山漁村から都市部へ、投票日に向けて攻め上っていくのが小沢流選挙の真骨頂だ。4日は人口減少著しい県北。5日は沿岸北部の漁村。横沢の遊説ルートは、小沢戦略を忠実になぞっていた。

 ほとんど地元入りしない小沢に代わって知事達増拓也も動いた。7日には沿岸6カ所で横沢の街頭演説に付き添い「県民の皆さんが選ぶ代表は横沢さんでなくてはなりません」。県政界トップながら政治的バランスなど頓着しない。

 9日正午、横沢を支える達増と共産委員長志位和夫が、堂々県庁前に並び立って街頭演説を始めた。岩手以外では、ほとんど見ることのできない光景だった。(敬称略) ◇

 21日投開票の参院選で、全てが「自民現職対野党統一候補」の構図となった東北6選挙区(改選数各1)は各地で激戦が繰り広げられている。16年参院選と同様、与党優位が伝えられる全国情勢とは一線を画す。6県の戦いに迫った。