【気象コラム】雨雲の動きをつかもうとしている話 気象レーダーを賢く使おう

 近年、局地的な豪雨が増えていて、特に都市部での集中豪雨の被害が問題になっています。

 それでなくても目先の雨が降るのか降らないのかの様子も気になるところです。

  そういった雨雲の動きをとらえるために設置されているのが「気象レーダー」です。

 テレビの気象情報のコーナーやインターネットでの気象情報サイトでも気軽にみられ、地図上で雨雲がどこにいるかをわれわれ市井のものでも簡単に知ることができる仕掛けです。

 現在設置されている気象レーダーのほとんどは

・アンテナを回転させながら電波を発射

・雨や雪の粒に電波が反射される

・反射された電波をアンテナが受信

・戻ってくるまでの時間で距離を測り、戻ってきた電波の状態から雨や雪の量を測る

という流れで雨雲を観測しています。 

 また、気象レーダーといっても一種類ではなく、得意な観測項目をもった複数種類が存在します。

気象レーダーの原理(気象庁HPから)

  Cバンドレーダー

 1kmの解像度と百数十km位の観測距離をもっている。観測間隔は5分。

おもに台風や低気圧・前線による雨雲の観測が得意。

 国土交通省が26カ所(2018年8月現在)、気象庁が全国で20カ所展開している。(2019年現在)

    XバンドMPレーダー

 250mの解像度と80kmの観測距離をもっている。観測間隔は1分、

 狭い範囲で高い解像度と高頻度な観測が得意で、局地的な大雨の監視に役に立つ。

 国土交通省が全国で39カ所展開している。(2018年8月現在)

 これら気象レーダーを使った特徴的な2種類のコンテンツを紹介します。

 高解像度降水ナウキャスト(https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/

 気象庁で観測している気象レーダーによる観測データと気象庁・国土交通省・地方自治体が設置している雨量計データ、高層観測データおよび国土交通省のXバンドMPレーダーの観測データを使い実況解析値を作成し、かつ目先1時間後までを予測しているのが気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」。

 5分間隔の更新で、陸上では250mメッシュの解像度を持っている。

  東京アメッシュ(https://tokyo-ame.jwa.or.jp/

 東京周辺地域では、東京都下水道局が運用している東京アメッシュというXバンドの気象レーダーがある。特筆するのは解像度が150mメッシュであること。

 もともとは下水道局のポンプ所などの運用に活用するために設置されたものであるが、近年ではインターネット経由で雨雲の様子を見ることができて、この読者の中にも活用している人が多いだろう。スマホサイトも用意されており、今後はインバウンドの人たちの間や東京五輪での活用が期待できそう。

 

東京都下水道局東京アメッシュ稲城レーダー基地局(筆者撮影)

 今までふれてきた気象レーダーは、パラボラアンテナを機械的に回転させて観測を行うため、地上付近の降雨分布の観測には1~5分程度かかります。

 局地的な大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達する場合があるため、これからはより短い間隔で観測する技術が必要になります。

  そこで開発されたのは「マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダー」です。

 小さなアンテナを複数並べて、それぞれのアンテナを電子的に制御して観測を行うことによって、短い間隔で空間的な解像度も高い観測を行うことが可能になります。

 このレーダーが全国に配置され本運用されるようになれば、さらに高解像度で短い時間間隔での雨雲の観測が行われ、局地的な短時間に降る大雨やシビアな気象現象をとらえることができるようになると期待されます。

 (気象予報士・高森泰人)

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