通勤電車でギョーザの町へ

「ワンマン」で運行する東武宇都宮線の普通電車=東武宇都宮駅

 ギョーザの町といえば、浜松だろうか、宇都宮だろうか。ギョーザにそんなに思い入れがあるわけではないけれど、関東平野を北に向かい、宇都宮を訪れることにした。

 といって東北新幹線でぴゅっと行ってはつまらない。JR在来線(東北線)? いやいや、今回は思いっきり安上がりルートにする。ずばり東武鉄道!

 用意したのは街中のチケットショップで売っている「株主優待乗車証」。多くの鉄道会社が持ち株数に応じて株主に配っているもので、1枚で全線どこまでも行ける。その代わり1回改札を出てしまうとそこで終わり。片道で遠くまで行くならとても役に立つ切符だ。

 東武の株主優待乗車証は、都内のチケットショップで800~900円ぐらいで売られているようだ。日曜の午前中、伊勢崎線の始発駅、浅草に行き、改札を通った。目指すは宇都宮…。いや、正しくは東武宇都宮だ。

 城下町や門前町など、古くからある都市の場合、旧国鉄(JR)の駅は中心地から少し離れた所にあるケースが多い。城下町であり日光街道、奥州街道の宿場町でもあった宇都宮も、JRの駅の位置は、城跡や県庁、市役所からみるとだいぶ東。これに対し、今回の目的地、東武宇都宮は繁華街のど真ん中にある。

 浅草から乗った電車を乗り継ぎ、利根川に近い南栗橋に到着。10両編成の通勤電車の終着駅で、反対のホームにとまっている電車の表示は「急行 中央林間行き」と、はるばる来た感じがする。ちなみにネットで「南栗橋」を検索すると「寝過ごして南栗橋駅に来た方へ」なんて案内があって、酒飲みとしては身につまされる話だ。

こぢんまりした東武宇都宮駅(上)と、新幹線の長大なホームもあるJR宇都宮駅

 南栗橋からは4両編成の普通電車。1両2扉、ボックス席が並ぶ旧国鉄の急行のような車両で、鬼怒川温泉の先、新藤原まで90キロ余りを走り抜ける。約40分乗って、JR両毛線との接続駅、栃木で東武宇都宮行きの普通電車に乗り換える。同じ4両編成だが、こちらはロングシートのタイプ。一つ先の新栃木で東武日光線に別れを告げて、東武宇都宮線に入った。

 関東平野の北端近く、緑豊かな田園地帯を走るが、やがて住宅が増え、宇都宮市の中心が近づく。終着の東武宇都宮のホームは東武宇都宮百貨店の3階に直結していて、降りたお客さんはデパートに吸い込まれていった。浅草から約2時間半の旅だった。

 宇都宮線のダイヤは日中、1時間に2本。地域輸送に徹している感じで、東京方面と行き来する客はそういないだろう。でも日常からの逸脱というのだろうか、通勤電車とつながっているローカル線の旅も悪くない。

 ☆八代 到(やしろ・いたる)1964年東京都生まれ。共同通信社勤務。ギョーザとビールを味わって、帰りはJRの在来線。新宿まで約2時間、でも運賃は2千円弱でした。

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