東南アジアの中でも、日本人の訪れる観光地として人気のあるタイ。日本人には「微笑みの国」というキャッチコピーのイメージがあり、温和な人柄などを想像する人も多いのではないでしょうか。
ところが実際にはタイでは貧富の格差が非常に大きく、Credit Swissの調査結果によると、タイは2018年度に主要国の中でインドやロシアを抜いて、世界で最も格差の大きい国と発表したほどの格差があるのです。(*”Global Wealth Databook 2018” Credit Swissより)
タイでは貧富の格差の固定を緩和するために、ようやく相続税なども最近になって導入されたものの、その税率も5~10%と低く、控除額も巨額で、以前として貧富の格差は生まれにより固定化してしまいやすい傾向が強いのです。
そんな一面もあるタイで、お金持ちのタイ人が貧しい一般のタイ人に対して、どれほど酷い対応をとっているかがわかるニュースが大きな話題となっています。
事件があったのは2019年6月28日午後5時頃、タイ東部のチョンブリという町にあるショッピングモールのレストランに、40歳タイ人男性が家族で高級車のポルシェの車に乗って訪れました。
すると、そのお店の席料について、家族で追加120バーツ(約400円)かかる事を説明されると、これについて激怒し、スタッフ2名を殴る暴行事件を起こしたのです。
店員は出て行かないように制止しましたが、40歳の男は振り切り、店を出てポルシェで立ち去りました。そこで店員たちは、男たちの乗るポルシェの車のナンバーなども撮影しておいて、警察に暴行の被害届を出しました。
そして上記の動画がFacebookなどで広がると、ポルシェに乗っているような金持ちのタイ人が、飲食店で働いているような貧しい一般のタイ人に対して、いかに横柄で酷い対応をしているのかがわかる動画としてタイ国内で批判が殺到。タイの警察も捜査に動き、この男を警察に呼び出したのです。
警察が動いたことで、男は警察署を訪れると、殴った被害者の二人のタイ人に5000バーツ(約1万6000円)ずつの和解金を支払って、被害者に謝罪をして和解をしました。
その様子も撮影され、動画がニュースとなっていますが、この折ですらも男は自分が「目上」の人間だというタイ語の表現を使って、被害者たちにも横柄な言葉遣いのままだったのです。
このような”和解交渉”での態度が報じられた事で、タイ国内でさらに反響が拡大。一つ目の動画の再生回数は実に65万回を超えています。
このニュースを伝えたPJAニュースに取材すると、このような反響の背景には、タイの貧富の格差が巨大で、固定化してしまっている理由があると語っています。
「タイでは相続税なども最近までなく、貧富の格差がつきやすいために、富裕層はその子孫まで、生まれながらで富裕層になってしまうという面があります。
この生まれながらの富裕層の人間は、財産を相続するだけで苦労もなく金持ちになるわけですから、自分たちは特権階級だという意識が強い事が多く、そのような富裕層が貧しい人々に酷い仕打ちをするという事件が発生しているのです。これが、大きな社会問題の一つとなっています。このような状況がある事が一般的なタイは、日本の常識とは異なる所だと感じます」
実際に、例えば以下の記事のような事件も発生しているようです。
ただ現在はネットの普及などによって、このような事件がネットで広まって隠蔽できなくなり、金持ちが処罰されるケースも増えてきていることから、以前よりは状況は良くなってきているといいます。
多くの日本人が知らないタイの「格差社会」の現実が伝わるニュースとなっています。(文◎西山哲治)
PJAニュース)ホテル従業員が工業団地幹部に喫煙を注意し殴られ、大きな反響に