メルケル氏が3度目の「発作」中につぶやいた言葉

By 太田清

10日、ベルリンでフィンランドのリンネ首相(左)の歓迎式典に参加したドイツのメルケル首相(AP=共同)

 ドイツのメルケル首相(64)と言えば、同国初の女性首相として2005年に就任、以後長期政権を続け日本を含む先進7カ国(G7)のリーダーの中では最長の在任期間を誇り、ドイツのみならず欧州の政治にも大きな影響力を持つ政治家だが、体全体を小刻みに震わせる「発作」を繰り返し起こし健康不安が懸念されている。 

 ロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」によると、同首相は10日、フィンランドのリンネ首相を招いたベルリンでの式典に参加した際、立っている間に体全体を小刻みに震わせた。首相がこの際に何かをつぶやいている様子がテレビに写り、その内容が関心を呼んだが、読唇術の専門家はドイツのラジオ局「アンテネ・バイエルン」に対し、首相が「Ich schaffe das=私は(自分で)できる」と語ったことを明らかにした。 

 「助けを借りなくても、自分で事態に対処できる」ことを言いたかったのかもしれないが、読唇術の専門家の意見を聴くほどにメルケル氏の健康問題は関心を集めている。メルケル氏が最初に体を震わせたのは、ウクライナのゼレンスキー大統領を招いて6月18日にベルリンで行われた式典。炎天下の屋外だったこともあり、首相は後に「(式典後に)少なくとも水を3杯飲んだ。今は大丈夫」と脱水症状が原因だったと強調、横にいたゼレンスキー大統領も「彼女は絶対大丈夫」と“援軍”を送った。 

 ところが、27日にドイツのシュタインマイヤー大統領が臨席しての式典では屋内だったにもかかわらず、また体が震えだし、そばにいた男性が水を差しだしたがこれを拒否した。 

 相次ぐ異変に健康不安説は強まるばかりだが、同国の著名医師クリストフ・シュペヒト氏は脱水症状というのは主要な原因ではなく、考えられる震えの理由として①糖尿病患者に起こる低血糖状態②抗うつ剤の副作用③血液循環の問題④甲状腺の機能亢進―などのほか、高齢に伴う起立時の震えの可能性を挙げた。 

 メルケル氏の異変は震えだけでない。20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて行われたプーチン・ロシア大統領との首脳会談では一瞬、方向感覚を失ったようなそぶりを見せ、プーチン氏に促されて自分の席に座った様子がテレビで放送された。11日にベルリンを訪れたデンマークのフレデリクセン首相との式典では、両首脳は国歌演奏中も着席したまま。メルケル氏の震えに配慮した可能性が指摘されている。 (共同通信=太田清)

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