日本維新の会・松井一郎代表「政治家に求められているのは『覚悟』。身を切る改革と教育無償化を進め『新たな日本のかたち』を創る」

選挙ドットコムでは参院選の比例代表に候補を擁立している各政党・政治団体(以下、各党)の代表・幹部に参院選の争点・政策や政治・選挙の意義について聞く取材依頼を行い、取材を受諾した各党の代表・幹部にインタビュー形式で取材しました。今回は日本維新の会・松井一郎代表へのインタビューの模様をお届けします。

高すぎる議員の報酬や厚遇改正の「身を切る改革」の約束を果たさないまま

国民に負担を負わせる消費税増税は、絶対に認めてはならない

–選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
今回の参院選の争点は、ずばりどこにあるとお考えですか。

–松井一郎 日本維新の会代表(以下、松井氏)
10月に消費税増税がありますが、納税者としてこの増税を認めたらダメだということを1番に訴えていきたいです。
今回の増税で、国民の皆さんの負担が増えていくのは間違いのない事実です。

でもちょっと待て、増税する前の約束が守られていないじゃないかと。
これは国会議員のみなさんが、2011年の震災の復興増税のときも、はっきりと約束していることなんですが「国民の皆さんに負担をかける限りは、自分たちのあまりにも優遇・厚遇された身分についても見直します」、身を切る改革を約束するとおっしゃったのに、これを放棄したままなんですよ。

それなのに国民に負担を求める増税だけする姿勢を良しとしてしまったらね、これからの日本は大増税国家になっていきますよ。

今、教育無償化の財源が必要だと安倍総理は言っているけれど、これはね大阪ではすでに実施済みの政策なんです。
大阪では改革で生み出した財源で教育無償化をとっくに実現しているんです。私立高校を含め、高校の授業料無償化なんていうのは8年前からやっているし、僕は今、大阪市長をやっているんだけど、3歳4歳の幼稚園・保育園の無償化は、この4月からもう実現していますよ。これを増税なしでやれているんです。

政治家や役所の中だけが優遇されて、そこに税金が流れているという事実を見直さず、何かお金が足りなくなる、新しい事業をするとなると、増税増税っていうけど、おかしいでしょ。人々の暮らしは増税で苦しくなっていくのに、政治家と役所の中の人ばっかりいい思いするって。

これを政治家は改めようとしない。役所を動かすのは政治家なんですから、役所の中の改革が進まないのも、政治家が約束を守れていないんですよ。

政治家本人もさっぱり約束を守っていない。だって国会議員の年収なんて、2200万円ですよ。日本の中で2000万円を超える所得を取っているのはわずか3%しかいないんですよ、働いている人の中で。そこを見直すっていうのは、当然の話じゃないですか。

この自分たちの身分に関わる点に関しては、自民党から共産党まで、知らぬ存ぜぬで納税者のみなさんに隠しているといっていい。
僕ら維新の会だけはずっと言い続けているのに、見直しができていないのは本当につらいけれども、それでもいい続けていきますよ。だって我々がいなくなったらね、この問題提起をする人がいなくなってしまうから。

とにかくこの部分をまず見直そうというのが、今回の選挙の一番の争点だと思います。

政治家はね、自分たちの身分については優遇されたいし、日本のトップクラスの報酬を受け取って当たり前という保身というか、この感覚を変えていかないと。
だって日本は人口減少、超高齢化社会にどんどん向かっているわけです、要は税金を納める人が減っていく。そして超高齢化社会になれば、社会保障費はどうしても拡大していく、そんななかでね、諸外国に比べて日本の政治家って優遇・厚遇されすぎているんです。
だから1度国会議員になったら、辞めない。その身分にしがみつくんです。

そのために、選挙でなんとか有利になろうと支援を得ようとして、とにかく八方美人なことを言って、どんどん税金をばらまくと。悪循環の根源ですよ。

とにかく持続可能な日本を作るために、まず政治が役所を動かすんだから政治家から、時代に合わせた報酬と議席数に修正しないと。
大阪では議席数も2011年に、それまでの2割の21議席をカットしました。だけど議席数を減らしたことで「府民の声が届きにくくなった」とか「自分たちの生活に支障が出た」なんていう苦情は、これまでに1件もありませんから。まったくない。

だからとにかく、今の時代に合うような政治の仕組みづくりと政治家の身分についての改正、これをやって役所をピリッとさせないと。
ここが1番やらなければいけない選挙の争点だと思いますね。

改革を実際に行ってきたトップランナーとして「身を切る改革、実行中。」の

キャッチコピーの下、次の時代を創っていきたい

–選挙ドットコム
維新の会は今回、参院選のキャッチコピーを「身を切る改革、実行中。~維新はやる。次の時代を創る~」としていますが、この言葉に込めた思いはなんでしょうか。

–松井氏
次の時代を創る主役は子供たちです。
その子供たちが、どのような家庭環境であろうとチャレンジできる社会環境を作っていきたいと思っています。それの最たるものが、教育無償化なんです。

裕福な家の子だけが塾に行ける、裕福な家の子だけが特色ある私立の高校に行けるっていうのは、違うでしょうと。
僕らはどのような家庭の環境であっても、将来の日本を創っていく人材の子供たちが、自分の努力以外の理由で学力格差ができたり行きたい学校に進学できないというのはね、良しとしていないんです。

どんな環境の家の子であっても、将来の夢や未来に向かってのスタートラインを揃えていく。これが我々の考え方です。
教育無償化について、我々は間違いなく日本のトップランナーです。すでにしっかり実現しているわけですから。

だからこれを日本中に広げて行きたい。そのためには憲法で保障しなくてはいけない。憲法の改正で26条に教育無償化という文言を入れて改正して、子供たちのポテンシャルや可能性にさらに磨きをかけていきたいと思っています。

–選挙ドットコム
教育無償化を日本中に広げるためには、政策として実行するだけでなく、憲法から改正しなくてはならない理由はなんですか。

–松井氏
大阪では今、教育無償化ができています。でもこれは維新の政治を橋本さんが大阪の知事になって、11年間維新の政治として予算を立てて実施できているわけです。でも毎年の予算編成でそれをやっていくかどうかは首長が提案するわけです。
首長が変わったら、また方針が変わって教育無償化ができなくなってしまうかもしれません。
日本全国でも同じことが言えます。全国一斉に教育無償化を政策で実施しても、政権が変わったり各自治体の首長がかわることで、元通りになってしまう。

民主党のときに、子供手当ってやりました。でもあれは民主党の政権が終わったら、同時に終わってしまったじゃないですか。そういうもんなんですよ、政策は。

だけど、憲法で規定したら、それに基づいて法律ができ、予算が組み立てられるわけですから、未来永劫これを担保できる、継続できるんです。
だからこそ我々は、憲法を改正して、教育無償化を盛り込むことにこだわっているんです。

憲法をまともに議論できる体制を作り、改正反対派はその場で「改正に反対だ」という意見を堂々と言えばいい。議論すら拒否するのは論外

–選挙ドットコム
今お話しにあった、憲法改正も選挙の争点とされていますが。

–松井氏
憲法審査会を政局に利用して、開かないっていうのはおかしな話ですよね。
今の自民党と公明党も、あれだけ数があるんですから開けばいいんです。ところが国会のくだらないルールで「野党第一党が了解しないと、会議を開催しない」とかね。
それを盾に立憲民主党のみなさんが、会議すら開くことを妨害している。

憲法審査会というのは、改正ありきの会議じゃないんですよ。国民のみなさんに戦後に日本国民の声が一切反映しない形で作られた憲法に対して、改めて国民参加でいいか悪いかひとつずつ丁寧に判断して、条文を整えていきましょう、発議していきましょうという場なんです。

だから改正しないという立場の共産党や立憲民主党などの各党は、改正しない立場でいいから会議に出席して、意見を言えばいいんです。自民党は9条を変えたいという言意見を出すんでしょうし、我々は教育無償化に関わる26条の改正を主張する。
こうして会議の場で喧々諤々意見を戦わせましょうよと。そのために我々政治家はいるわけですし、その会議の場で出した結果について、OKかどうか判断するのは国民のみなさんの判断が必要なわけですから。

国会・総理を中心としたピラミッド型の政治から、他の地域政党とも連携し

地方議員や地域の首長、国会議員がみな同列の立場で政治を動かすシステムに

–選挙ドットコム
地方政党として結成した維新の会は、野党の中でも少し異質な存在だと思います。
そんな維新の会が、日本全体の政治を動かしていくためにどんなことが必要でしょうか。

–松井氏
我々は、行政を動かすうえで、一番重要なのは住民に近いところの権限を持っている行政やその長の意見を尊重していくことだと考えています。

ところが今のこの国の政治は、ピラミッド型の政治。頂点は国会・総理で、その政策を実施する具体案を霞が関で作って、全国にその方針を押し付けていく。でも全国には南は沖縄から北は北海道まで、地域の実情・事情は違う。
そこを全く踏まえることをなく、霞が関は全国一律の金太郎あめのように物事を決めてしまうから、必要なところに必要な行政サービスが届かないとか、サービスがミスマッチしているということが起こるんです。
これからの時代は、地方が主役になって地域がその地域に住んでいる住民のニーズにベストマッチする形の法令、条例、予算が決定されていくことこそ、一番無駄が少なくていいと思っています。

だから我々の政党は国会議員がピラミッド組織の頂点にいるのではありません。市町村議員、都道府県議員、国会議員、地方の首長、これみんな同列に横並び。そもそも代表の僕自身、国会議員ではなくて大阪市長ですから。

横に並んで、それぞれの役割分担で自分の地域のニーズを吸い上げ、政策を立案してさらに大きなブロック担当の議員、最終的には日本全体を担当する国会議員とも連携すると。
国会議員は地域ごとのニーズに沿った政策を実行するために、国の予算を配分し、霞が関にも地域の実情に反映した対応を求める。

ピラミッド型から横並びの政治連携に組み替えていくことで維新の政治は日本全国に広まっていくと思うんです。

–選挙ドットコム
成り立ちが地域政党の日本維新の党ですが、与党や他の野党との違いについてお願いします。

–松井氏
今の国会というのは、絶えず政局なんですよ。与党の言うことには、野党はとにかく反対する。
なぜ政局を故意に作り出すかというと、理由は結局、選挙なんです。
与党がいい案を出しても、賛成したら、選挙で与党が利するだけ。でも反対すれば、与党に反対する意見を持つみなさんの支持が野党に得られると。

どんなにいい政策でも、日本中のすべての人が百点満点で満足、というのはありません。たとえば大阪で万博やろうというと、6~7割の方が賛成してくれているけど、3割は反対なの。
その3割を取り込むために反対して、政局を作るっていうのは、結局政治家自身の保身、厚遇・優遇されている政治家の地位を守るためとしか思えない。
これじゃあ、国民に寄り添っているとはいえないですよね。

我々も、もちろん野党のひとつではあるんですが、そういう野党とは一線を画しています。
いい思いをしたいから政治家をやってるわけじゃないんです。維新を立ち上げた橋下さんは、知事になったとき、前職の弁護士のときとくらべて報酬は十分の1になりました。あそこは子供が7人もいるから生活費もかかって大変だったと思うけど、その十分の1を8年やった。そういうプライベートを考えれば、人間だから、当然、報酬はたくさんほしいし、誹謗中傷も山ほど受け、命まで狙われる状態の中で、あえて知事をやったんです。
僕も橋下さんも身を切る改革ということで、報酬は4割カット、退職金もゼロ。
でもよすぎたら辞めないでしょ。僕も、早く結果を仕上げて、引退もいいなって思いますよ(笑)。

我々はそういう状況で、野党をやってます。
与党は行政の決定権を握っているわけだし、予算編成権も持つわけだから、それに対していいこと賛同できることはさらによりよくすために意見を言っていくし、逆に「そりゃだめだろ」ということについては、ダメなりの理由をちゃんと政府に伝えて、そのダメな政府案に代わる対案を出す。
こういうまともな野党を目指しているわけです。

-選挙ドットコム
松井さんは、日本維新の会代表と大阪市長という首長を兼業する形でやっていますね。これもほかの党にはあまりないことです。

–松井氏
僕は知事を7年4か月やって、今は市長をやっている。地方政府を預かる立場にいるわけです。
国の政治をつかさどる中央政府である国は、安倍総理がトップ。
中央政府と地方政府としては、絶えずやりとりをしていますよ。

たとえば、大阪でG20のサミットをやりましたが、大阪には大阪のメリットがあるし、政府としても大阪でやることのメリットはある。お互いメリットがあることについては、相手が与党で自民党でも協力していく。
だけど、国からの予算が降りてくるとき「これは大阪では使いにくいねん」というものもたくさんあるわけですよ。こういうのは使い方を見直させてほしいという提案を、国会議員が国会でやる。

政治は自党の支持団体を優遇するためにあってはならない。

どこまでも国民ひとりひとりの権利、利益を追求すべき

–選挙ドットコム
自民党の意見にすべて反対の野党が多い中、賛成する政策もある維新の会は、自民党により近いのではなどと言われていますが、自民党と維新の会の違いはどんなところにありますか?

–松井氏
政策には賛同できるものもあるし、反対なものもあるわけですが、一番の違いは誰のほうを向いて政治をしているか、という政治姿勢に尽きるんじゃないですか。

自民党は各種団体にたくさん税金、補助金をつけています。
国の財政が厳しいんだから、不要な税金や補助金は減らしていけばいいんだけど、そうできない理由は、各種団体が自民党の支持団体だから。自分たちを応援してくれる支持団体の既得権益にメスは入れられないというわけです。

そもそも自民党の今回の参院選の名簿を見ても、各種団体の代表の名前ばっかりが連なっています。その人たちは自分の団体の利益を守るために国会に出てきているわけですからね。
そらもう、メスなんて入れられるはずがないですわ。

二階幹事長が「選挙を応援してもらったら、予算をつけるのは当たり前だ」っていったけど、それは違うだろうと。一部の既得権益者に堂々とみなさんの税金である予算をつけて、当たり前ってどういうことですか。

僕は団体をすべて否定するわけじゃないんです。団体は国に代わって、国民に様々なサービスを提供してくれたりする。でもその予算の出し方にはおかしいところたくさんあるでしょと言いたいわけです。

大阪でも、団体に対する補助金の出し方は全部、見直しました。
どう見直したかというと、事業に対する補助金にしたんです。これまでは団体の運営に関わる費用と、行う事業についての補助がいっしょくたになっていたんですが、団体を維持するための運営費の補助はしないと。
だって運営費はいくらでも膨らみますからね。例えば人件費。これまで3人でやってたのを5人にしたから補助金増やせ、ってそりゃ3人より5人でやったほうが楽だからどんどん膨らみます。あとは家賃とかね。広いとこ、高級な物件に移ったからその分足りないって、いちいち補助金増やしてたら、そりゃあ税金が足りなくなるのは当然です。

だから補助金は事業についてつけると。本当にそのサービスが対価に見合っているのかをしっかり見極めたうえで補助金を出す。天下りとかの関連で、なにもしないで補助金をひっぱるというのはできなくしたわけです。

こういうのは改革側に、しがらみがあったらできないです。団体の代表の人がチームの一員になると、無理。

団体以外にもしがらみだらけの自民党にできない、既得権益にメスを入れる改革を、我々維新はできるんです。ここ、大きな違いだと思います。

今の政治家に必要なのは、覚悟。世のため人のため、自分たちの次の世代の

未来をよくするために、言いにくいことも言い、やりにくいこともやる

–選挙ドットコム
今回のインタビューではさいころを振っていただいて、出た目の質問に答えていただくという企画をみなさんにやっていただいています。松井さんにもお願いできますか?
あ、5番ですね。

「政治家」に対し、ネガティブな報道やイメージを持つ人も多い中、「政治家」に求められている役割、意識とは何だと考えていますか。

–松井氏
私は、政治家が果たすべき役割というか、持つべき意識というのは「覚悟」だと思います。

政治家にネガティブを持つ原因のひとつとして、維新の会も大変申し訳なく思っています。
政治家、国会議員としての身分保障にしがみついている人が維新にもいるわけです。
発言と行動が国会議員にふさわしくない、やめなさいと我々がどんなにいっても、辞めない人はいるわけです。

これは維新だけじゃなくて、自民党の中にも他の野党の中にもね、問題を起こしたりスキャンダルになっても、党はやめるけど議員は辞めないっていう人がごろごろいる。
選挙の時は「自分には志があって、国のため、国民の皆さんのためにこの身を捧げます」とかいうんだけど、結局は自分のためにバッジをつけている。
高額な報酬と厚遇を受けるために、みんなの信を裏切って人々のために働く資格がなくなっても、「他人に辞めさせる権利はない」とかいって、国会議員という身分にしがみつく。

我々維新の本当の仲間の心を動かしているのは、カッコよく言えば使命感だけど、「覚悟」なんですよね。
国民一人一人の生活をよくしたい。もちろんその中には自分自身もいるわけですよ。あと20年もすれば、僕も後期高齢者。その時に経済的にひっ迫しても行政は助けてくれず「長生きなんかするんじゃなかった」と後悔する将来は作りたくないし、国の税金が足りないから若者に我慢を強いたり、いろいろ不安になるのは嫌じゃないですか。
我々には子供もいるわけで、その世代は人口も減るわけだから、大事な子供たちに大きな負担・ツケを回すのも、本当に忍びない。だからこそ今、自分たちが身を切ってでも、持続可能な世の中を作りましょうと。

日本は、明治維新以降、廃藩置県で行政の仕組みを作ったものの、そのままになっています。
他の分野のテクノロジーはどんどん進化しているのに、役所や行政のしくみがそのまま、人口が減少しているのに政治家の数も増え続ける一方、政治家の厚遇・高報酬もそのまんま、っていうのはおかしすぎるでしょ。
だから、言いにくいことも、覚悟を持ってやっていくというわけです。

© 選挙ドットコム株式会社