メクル第381号 顕微鏡で病気を診断「病理専門医」 医療に欠かせない“縁の下の力持ち”

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検査結果を待つ患者のために日々、標本を観察する入江さん=長崎市新地町、長崎みなとメディカルセンター

 病理専門(せんもん)医は患者(かんじゃ)と会うことがほとんどありませんが、患者の体から採取(さいしゅ)した細胞(さいぼう)や組織(そしき)を顕微鏡(けんびきょう)で調べ、病気の有無や状態(じょうたい)を判断(はんだん)する重要な仕事です。全国で約2500人ととても少なく、県内には27人(3日現在(げんざい))しかいません。当然、すべての病院にいるわけではなく、今いる医師(いし)たちの高齢化(こうれいか)やなり手不足によって全国的に数が減(へ)っている状況です。

◆どんな仕事?
 大きく分けて、三つあります。
①組織診断(しんだん)
 手術(しゅじゅつ)で取り出した臓器(ぞうき)や胃カメラなどの内視鏡検査(ないしきょうけんさ)で採取(さいしゅ)したその一部を顕微鏡で調べます。みなさんが学校で使うのと変わらない40~100倍ぐらいの低い倍率(ばいりつ)で十分ですが、ゆがみが少ない特別なレンズを使うので像(ぞう)がくっきり見えます。
 まずは目で見て確認(かくにん)した後、もっと詳(くわ)しく調べる必要があると判断した部分を切り出して顕微鏡で観察し、診断します。例えば▽がんなのか、がんでないのか▽何がんなのか▽がんの範囲(はんい)▽リンパ節の第何番まで広がっているのか▽手術で全部取りきれたか-などが分かります。
 虫垂炎(ちゅうすいえん)(盲腸(もうちょう))などの手術を受けた人もいると思いますが、切った虫垂を調べて診断を下すのは、手術を担当(たんとう)した医師ではなく、病理専門医だということを知ってもらえたらと思います。

②細胞診断
 尿(にょう)やたん、または患者の体に針(はり)を刺(さ)して採取した液体(えきたい)をガラス標本に塗(ぬ)り、顕微鏡で調べます。一緒(いっしょ)に働く細胞検査士(けんさし)が標本を作って一度検査しますが、そのうち病気やその疑(うたが)いがあるものは、必ず医師が一つ一つの細胞について良性(りょうせい)か悪性か調べます。診断は医師しか行えない医療行為(いりょうこうい)だからです。

③病理解剖(かいぼう)
 病院で亡(な)くなった患者さんを解剖して、死亡(しぼう)の原因(げんいん)や亡くなる前の診断が正しかったのかを調べることもあります。今後の医療に生かすため、医師や医療関係者の前で結果を説明し、検討(けんとう)するのも大切な役割(やくわり)です。
 ほかにも、病院内の医師から相談を受けたり、論文(ろんぶん)を書くために病理画像の写真撮影(さつえい)や執筆(しっぴつ)の手伝いを頼(たの)まれたり、研修医(けんしゅうい)の指導(しどう)もします。

◆手術中すぐに
 最近は手術で取り出した臓器などをすぐに受け取り、病理専門医が10~15分で診断して手術場に報告(ほうこく)する「術中迅速診断(じゅつちゅうじんそくしんだん)」が増(ふ)えました。切り取ったものが良性か悪性かがその場で分かれば、最適(さいてき)な手術方法を決められるからです。
 手術中の外科医が私(わたし)のひと言を待っていて、ほっとされることもあれば、手術の方針(ほうしん)をガラリと変えなくてはいけないこともあります。

◆医療の質(しつ)の監視(かんし)
 小さいころ、近所のお医者さんにあこがれて、外科医になろうと思っていましたが、医学部の授業(じゅぎょう)で興味(きょうみ)を持った病理学の道に進みました。聴診器(ちょうしんき)を使わず顕微鏡をのぞいて仕事をする姿(すがた)は想像(そうぞう)もしていませんでした。病理専門医は「これでこの患者は助かった」と、誰(だれ)よりも先に知ることができます。それは、喜びでもあります。患者と会うことは少ないですが、自分も治療(ちりょう)に参加しているんだと実感します。
 病理専門医はとても責任(せきにん)が重い仕事で、病院全体の医療の質を監視しているともいえます。医療に欠かせない“縁(えん)の下の力持ち”として、これからも新しい知識(ちしき)を積むために勉強を続けていきます。