オリーブの木・西尾憲一幹事長「本当に国民のための政策を打ち出して今までにない『地方からの草の根革命』を」参院選2019政党インタビュー

選挙ドットコムでは参院選の比例代表に候補を擁立している各政党・政治団体(以下、各党)の代表・幹部に参院選の争点・政策や政治・選挙の意義について聞く取材依頼を行い、取材を受諾した各党の代表・幹部にインタビュー形式で取材しました。今回はオリーブの木・西尾憲一幹事長へのインタビューの模様をお届けします。

消費税、年金と争点は多いが、オリーブの木独自の争点として

「官民格差是正」を取り上げて我々の存在感をアピールしていきたい

–選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
早速ですが、今回の参院選の争点は、どこにあるとお考えでしょうか。

–西尾憲一 オリーブの木幹事長(以下、西尾氏)
一般的には、消費税増税と老後資金が2000万円も不足するという年金問題に注目が集まっていますが、オリーブの木としては、独自の争点を提起していきたいと思っています。

と言いますのは、今、官民格差がひどすぎるんですね。
公務員給与は現在、民間のなんと1.6倍。正社員だけと比べても1.4倍という、恐ろしいまでの官民格差社会になっているのです。
だからこの格差是正をぜひ争点に取り上げて、オリーブの木の存在をアピールしたいとかんがえています。

–選挙ドットコム
オリーブの木の成り立ち、立ち上げのいきさつを教えてください。

–西尾氏
もともと私が2年前に平和の党を立ち上げて国政を、と考えていたのですがなかなか支持の輪が広がらなくて、どうしたら…と考えたときに、オリーブの木構想があったなと。

注:オリーブの木構想とは「オリーブの木」の名称のもとに各野党が集まり共闘するという構想。イタリアで元共産党の中道左派が中心となって結成された政党連合が原型。

そこで昨年の6月、天木直人さんと言う元レバノン大使で、「新党憲法9条」という政治団体代表の方に、一緒にオリーブの木構想をやりませんか、とお誘いしたんです。でもなかなか連携が取れなくて苦戦していました。

今年に入って自由国民党の小林興起さん、現在オリーブの木党首を務める黒川敦彦さん(市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表)ともご縁ができまして、4団体と一緒にオリーブの木として出発することができ、ここに至りました。

–選挙ドットコム
できたばかりの新党ということで、現役の国会議員の方はいらっしゃらないんですよね。オリーブの木の政治姿勢というか、特徴はなんですか?

–西尾氏
そうなんです。今は残念なことに国会議員はいないんです。
しかも地方議員は私一人だけなんですよね。私は千葉県議会議員なんですが。

ただこうした地方議員や、地方で活動している市民団体のメンバーによる党という点を生かしてですね、東京だって国会を中心に考えればある意味「東京地方」なんで、東京も含めた全国各地から、今までにない考え方や地方からの草の根革命を起こそうと意気込んでいます。

自民党は大企業や業界団体の支援をもらっています。一方で立憲民主党や国民民主党、社民党、共産党などは、労働組合、しかも連合などという大きな組織の支援を受けていますし、特定の宗教団体を母体としてそこから支援を受けているとか、自治労とか日教組とか公務員組合の支援を受けている政党もあるわけです。

そういう大きなところから、支援をもらっていると、どうしても選挙でも助けてもらいますからね、政策的にもいいなりになっちゃうところがあるわけです。
経営コンサルタントで、マッキンゼー元日本支社長だった大前研一さんも指摘していらっしゃいますが、これこそが今、立憲や国民、民社党などが、自民党に批判的な層にも、なかなか支持を得られず低迷している理由の一つなんです。

ですから私共は、大企業の支援も大労組の支援も、業界団体の支援も受けない、本当の意味で国民の代表として、国民の声を反映し、草の根の活動で政治・政策を訴えて実現していきたいと考えています。
どこからも支援を受けない代わりに、どこにも気を使ったり影響されることなく国民の声が反映できる、そういう選択肢としてオリーブの木を選んでいただきたいです。

具体的な政策は「対米自立」「ベーシックインカムの導入」

「消費税5%に引き下げ」の3本柱+α

–選挙ドットコム
今回の選挙で提示する、主な政策について教えてください。

–西尾氏
具体的な政策としては、大きく3つを打ち出しています。ひとつ目は「対米自立」。ふたつめは「ベーシックインカムの導入」、そして3つめが「消費税を5%に引き下げ」です。

まず「対米自立」ですが、これは要するにアメリカの言いなりにならないということ。アメリカの顔色を窺って政策を立てるのではなく、日本国民のためにどうしたらいいのかを真剣に考える。
先のイラク戦争などは、日本も少し関わりましたが、イラク国民が15万人もなくなっているんですよ。でも、戦争の理由となった大量破壊兵器は、あとでどんなに調べてもみつかりませんでした。つまり、アメリカが始めた戦争だからと言って常に正しい、正義なわけじゃないんですよ。
なんでもかんでもアメリカの言うことを鵜呑みにして、いいなりになるという姿勢を根本から変えるということです。

そして、専守防衛を徹底してほしいと。
これ、本来はかつての自民党の保守本流の考え方だったんです。ところが今の自民党の中には、そういった保守本流の考えを持った方は、たった一人しかおられないんです。それは5年前に集団自衛権が党内で問題になったとき、ひとりだけ反対された村上誠一郎さん。私は村上さんにぜひ、新党を立ち上げていただきたいと考えていましたが、ご本人は自分こそがミスター自民党であるというお考えのようです。

とにかく、残念ながら今の政党には「護憲で保守」という党がどこにもなかったんです。昔でしたら河野洋平さんたちが立ち上げた新自由クラブとか、鳩山由紀夫さんや武村正義さんの新党さきがけなどが、この護憲保守を打ち出していたんですけれども、どちらもなくなってしまいました。
それで私は地方議員という立場ではありますが、やむなく国民のみなさんに「護憲で保守」の選択肢を持っていただく目的で、オリーブの木の立ち上げとなったわけです。

専守防衛のほかには、日米地位協定を見直して平等なものにしていく、普天間基地の辺野古移転に反対して沖縄の海を守る、横田基地の早期返還を求めて東京の空を自由にいろんな飛行機が飛べるようにする、といったことを主張しています。

2点目のベーシックインカムの導入ですが、簡単に言えば政治が国民に生活費を支給するというもので、一部の外国ではすでに導入している国もあります。
ただこれには、莫大な費用・予算がかかりますので、まずは生活が大変で苦しんでおられる低所得層の方から始めていこうと。

3つ目は、安倍首相は消費税を10月から10%にするといっていますが、もしそれをやったら、今はなんとか来年行われるオリンピック・パラリンピックの影響で持ちこたえている景気が、一気に冷えて不況になってしまいます。米中の貿易摩擦の問題も出てきましたので、ますます深刻です。

こんな状況だから、消費税を上げるのではなく、むしろ5%に戻す。そうしたら景気が良くなります。景気が良くなれば会社が儲かって、法人税が増え、税収も増えるんです。従業員の給料が増えれば、所得税だった増えますし。
なにも消費税増税だけが、財政再建の道ではないと、私たちは考えております。

加えて、いくつか政策を申しあげますと、先ほどお話ししたひどすぎる官民格差の是正、そして原発即時ゼロですかね。
これは元小泉首相も「原発は安全で安くてクリーン、というのはすべてウソだった」と明言されています。この30年で、すでに3度も大きな原発事故が起きています。事故が起こればこれを元に戻す復旧費用、そして賠償費用というのが必要。福島の事故では、トータルで50兆から70兆円という莫大な費用が必要になるという報告が出ましたが、こうしたものもすべて原発にかかる費用なんですよ。こうした諸々の安全対策とか使用済み核燃料の処理などを考えますと、原発は安い電源などとは決して言えないと思います。水力、火力と比べても高いというのは明らかです。

ぜひ自然再生エネルギーに変換していくべきだと。私たちは自然エネルギーの中でも、日本の豊かな森林・山林を利用したバイオマス発電に転換していくべきであると考えます。
そうすれば、林業も盛んになりますし、枝打ちしたり間伐した木材を燃料に使うので森自体の手入れ管理もできる。そして衰退している林業に新たな雇用も生まれます。
この転換によって、原発の廃炉の仕事、林業、もちろんバイオマス発電事態の仕事とたくさん仕事が生まれますし、山林のある地方の雇用が増えることで地域経済も活性化される、とこう考えるわけです。

今、貧困層とか低所得層と言われる人たちが、一見豊かな日本に2000万人もいるんですね。
オリーブの木は、さまざまな政策でここを底上げしていくことこそ、日本経済の活性化につながると考えています。

予算の制約がなかったら真っ先に実現したいのは、

格差のない公平な社会の仕組みづくり

–選挙ドットコム
今回のインタビューの企画として、さいころを振っていただいて、こちらが用意した質問にランダムで答えていただくというのがありまして。

–西尾氏
じゃあ、振ってみますね。4番ですね。

–選挙ドットコム
予算などの制約が仮に無ければ真っ先に実現させたいという政策を1つ挙げると何でしょうか。

–西尾氏
まずなによりも格差のない公平な社会を作りたいです。
かつての自民党は富の再分配を行って、一億総中流社会を実現しました。ところが今は逆に格差が開くような政策ばかりなっていて、官民格差も、正規と非正規雇用間格差もどんどん増大しています。これを是正して誰もがのびのびと暮らせる公平な社会にしたいと思います。

それには具体的にどんなことが必要なのか、我々が具体的に細かな政策も立てています。
格差をなくすには、3つのアプローチがあると思っています。
1.賃金格差の縮小
2.所得の再分配
3.所得格差を生む原因

まず賃金格差の縮小については、同一労働同一賃金を徹底します。そして最低賃金の引き上げと、労働時間の短縮、そしてワークシェアリングなどを考えています。

次の所得の再分配についての政策ですが、累進課税の強化ですとか生活保護制度の実効性の確保、あるいは金融資産税の投入、低所得者層からベーシックインカムを導入していくことなどです。

最後の所得格差を生む原因を解消するためには、相続税の引き上げ、教育を受ける機会の平等などの政策を挙げています。
今、経済的に苦しい家庭の子供は、なかなか思うように進学できない、塾に通えないということもありますので、もっと需給型の奨学金制度を広げる必要があると思います。

自分の支持母体に忖度する政治が不公平感を生んでいる。

政治家選びは、有権者の1票にかかっているのだからあきらめないでほしい

–選挙ドットコム

次は2番の質問ですね。
投票に行くかどうかを迷っている人に「一票の重さ」をどのように伝えますか?

–西尾氏
いくつかあると思うんですがね、国民の声を政治にしっかり反映するということが1番だと思うんです。
一部の選挙支援を受けている業界団体や労働組合、大企業などにばかり有利な政治をしているから、国民の不信感は高まると思うんです。
それはお金の面でも同じで、特定の団体から支援金をもらえば、当然その団体にとって厳しい政策を立てたり、その団体のやり方を批判する政策は立てにくくなるわけで、自由を失ってしまいます。

やはりしがらみなく、本当に国民のことを思い、自由に発言ができる政治家が求められているのではないでしょうか。
その点、私たちは今回の選挙でもボランティアとカンパのみによる選挙を展開しているところです。
もちろんそれで選挙活動をするのは大変ですが、こうして出てくるしがらみのない政治家が本当に国民の立場に立って、国民本位の政策を国会の場で訴えることができると信じています。

–選挙ドットコム
今、若い世代は既存のメディアよりもインターネットで情報を得るという人がほとんどです。
今回の選挙戦で、オリーブの木はネットの活用をどう考え、どのような形で若者にアピールしていこうと考えていますか。

–西尾氏
私ももう60代後半だから、スマホとかなかなか使いきれていないんですが、党としてはネットでも若者に向けてできるだけ発信したいと考えています。

できるだけ若い人に投票に来ていただきたいですし、そのためにはまず若い人たちの意見を反映した政策を打ち出すことが必要だと思っています。高齢者向けの政策だけじゃなくてね。

行きたい大学に行けるように需給型の奨学金制度を拡充していくこともですが、やはり雇用を増やす、雇用環境をよくするというところが一番若者に響くのではないかと考えます。
先ほどお話しした、森林利用の再生エネルギー政策のように、新規の事業を生み出すことで、今働き先のない地方にも雇用の場を増やすとか。

今、若者たちの実に3割が非正規雇用と言われているんですね。この人たちで正社員化を望む人をできるだけ多く、正社員になれる制度改革をしていきたいです。
実際、非正規雇用の貧困層と言われる方の独身率が、66%。3人に2人が一生独身という調査結果もあるんです。でも日本の今の大きな課題の一つは、少子高齢化、人口減少なわけですよ。彼らを正規社員に引き上げて、結婚して子供を産んでくれる人が増えていかないとこの先、ますますその傾向は大きくなっていくのに、今の政府がやって政策は真逆なんです。
もっと誰もが安心して結婚して子供が持てるように、生活基盤を安定させ環境を整えることが大事なんです。

まずは非正規雇用の正社員化の促進と、最低賃金の引き上げ。できるだけ早急に、1000円にと。
それから段階的に1200円、1500円と上げていきたいです。
一気に1500円とかやってしまうとね、韓国のように経営者が雇用を控えて、かえって失業者が増えるという悪循環に陥る可能性があるので、ここは堅実にまずは1000円からしっかり引き上げを行って、好循環を作ってから段階的にさらなる引き上げを目指していこうと。

こうした若者の生活の安定に力点を置いた政策を断行していく事で、若者の行政や政治に対する信頼も少しずつ回復していくんじゃないかと考えます。
今、とくに若い人を中心にいろんなことをあきらめてしまっている人が多いなあと感じます。
でもいい社会を作っていくのは、政治家はもちろんなんですが、その政治家を選ぶ有権者なんだということをね、今一度思い出してほしいです。1票は軽いようで重いんですから。
ぜひ自分なりの考えをしっかり持って、投票所に足を運んでいただきたいと、こう思います。

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