歩行者優先の原則

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 信号機のない横断歩道を渡ろうとする歩行者。それに気付いた車が止まり、ドライバーが「どうぞ」と手で合図する。歩行者は黙礼をして足を踏み出す▲見知らぬ人たちの心が通い合ったようで、温かい気持ちになる瞬間。ただ、この場面がそう感じられるのは、横断歩道で止まる車が少ないためかもしれない▲日本自動車連盟(JAF)の昨年の調査では、先のような場面で一時停止した車の割合は8.6%。本県は少し多いが、10%にとどまる▲道交法は横断歩道での「歩行者優先」を明記しており、車は手前で一時停止し歩行者に道を譲らなければならない。違反すれば3カ月以下の懲役など罰則規定もある▲止まらない理由を聞いたJAFの別の調査では、「自車が停止しても対向車が停止せず危ない」「後続車がなく、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れる」「後続車から追突されそうになる」といった答えが多かった。それぞれ状況判断の結果だとしても、いずれも根底に「車優先」の意識が透ける▲車は便利で、ドライブも楽しい。だが、生活に欠かせない存在となるほどに、人命を危険にさらす凶器になり得ることをどこか忘れがちだ。夏の交通安全県民運動が19日まで実施中。この機にいま一度、「人優先」の原則を胸に刻んでハンドルを握りたい。(久)