テーマは「消費税増税」 話せば深まる興味、関心 長崎大経済学部 学生座談会

消費税増税について意見を交わす(左から)宿里さん、近藤さん、岩永さん、久保田さん=長崎市、長崎大経済学部

 若い有権者の投票率が低い理由に「政治への無関心」が挙がる。本当にそうなのか。参院選の争点の一つ「消費税増税」をテーマに、長崎大経済学部の学生4人に語り合ってもらった。

 〈座談会に参加したのは宿里浩二さん(21)=福岡県田川市出身、近藤美月さん(20)=南島原市出身、岩永朋実さん(22)=長崎市出身、久保田唯那さん(20)=宮崎市出身。以下敬称略〉

 ▼増税に賛成か。
 宿里 : はい。社会保障や教育の充実には、所得に関係なく付加する消費税が安定財源として必要と思う。
 近藤 : 正直関心がなく、賛否のどちらでもなかった。多くの人が考え出した結論だから、決められない自分は従うだけ。ただ最近、収入の低い若者がそれ以上の収入を得ている年金受給者を支えていくという記事を読み、負担が平等な消費税を上げた方がいいのかなと考えるようになった。
 岩永 : 反対。家計の負担が大きく、ただでさえ日本経済は消費が低迷している。
 久保田 : 私も、まずは家計を温めて消費不況を改善するのが先だと思う。

 ▼消費税を財源に幼児・高等教育を無償化する政権与党の政策を評価するか。
 宿里 : 少子化対策として絶対実行すべきだが、消費税だけじゃ賄いきれないのでは。他に国民の追加負担が必要なら具体的に示さないと。票を意識して議論を避けていないか。
 岩永 : 無償化自体は賛成だが、そもそも消費税増税は財政の立て直しが目的。保育士の給料を上げる必要もあり、財源は足りるのかな。
 久保田 : 保育園や保育士の数も足りず、しわ寄せがいろいろ出てきそう。

 ▼野党には、消費税以外で財源を確保すべきだという意見もある。
 宿里 : 所得税や法人税は個人や企業が稼ぐほど取られ、モチベーションを下げてしまう。公平じゃない。
 近藤 : 働く人にしわ寄せがくるのは良くない。
 岩永 : 国債を発行しても将来へ問題を先送りするだけ。巡り巡って家計の負担につながる。でも、いずれかの税率を上げないと財政難から抜け出せない。いい方法が思い付かない。

 ▼消費税は生活必需品にもかかり、低所得者ほど負担割合が重くなる。
 宿里 : うーん、難しい。裕福じゃない人のために消費税増税で社会保障を充実させようとしているのだろうけれど。
 久保田 : 年金受給者でも裕福な人はいる。本当に生活に困っている人に振り分ける方法を徹底してほしい。

 ▼首相は「安倍政権でこれ以上引き上げることは全く考えていない。今後10年ぐらいの間は上げる必要はないと思う」と言った。
 宿里 : 無責任。具体的な証明や実効性のある財源確保策を示してもらわないと納得できない。
 近藤 : 10年後なんて予測できないし、安倍さんも責任ある立場にないだろうから、信じない。
 岩永 : 政権が代われば再増税の可能性がある、と受け止めた。
 久保田 : 首相の言う通りであってほしいけれど。短期間に何度も上げれば、社会が混乱し政治不信も膨らんでしまう。

 ▼政府は家計の負担や消費の落ち込みを軽減する措置を取る。
 宿里 : 僕はコンビニや焼き肉屋でバイトしている。持ち帰りと店内飲食で税率が違うのは面倒くさい。
 岩永 : 会計時にうまく客と意思疎通できないと、もめそう。
 近藤 : キャッシュレス決済時のポイント還元は、使えない子どもや高齢者がかわいそう。
 久保田 : 食料品の軽減税率は学生の身には助かる。ポイント還元は一定期間にすぎず、安易に増税容認へ誘導されているようで嫌な感じがする。

 ▼個人の生活防衛策は。
 宿里 : 後輩に飯をおごる余裕がなくなりそうでヤバイ。就職が決まったのでバイトを増やそうかな。
 岩永 : 今バイトをしていないので、親のすねを骨が見えるまでかじる。
 久保田 : 家計簿を付けている。貯金に回す額を削るしかなさそう。

 ▼投票に行くか。
 宿里 : 住民票を実家から移しておらず、選挙のためにわざわざ帰郷する気にはならない。それに、誰に投じても情勢は変わらない。以前の選挙は知らない候補者ばかりで友人が薦める人に入れた。
 近藤 : 暮らしの中で選挙の優先順位は低い。
 岩永 : 選挙に興味が持てない。私一人が行ったところで投票率が上がるわけでもない。何かもらえるオプションでもあれば考える。親に連れられて行った時は、ポスター写真でまともそうな人を選んだ。
 久保田 : 権利は行使しなきゃとは思うけど、私も住民票を移していない。責任を果たさず文句を言うのはどうかという後ろめたさも少しある。高校の頃、18歳選挙権が導入され、友達は盛り上がっていたけど、私は受験でそれどころじゃなかった。

 ▼座談会を終えて。
 宿里 : 低所得者層の立場でもっと考える必要性を感じた。
 近藤 : 学校教育の中でこうした政治や社会問題を知り、考える機会があったらいいな。
 岩永 : 一つのテーマで話し合う場を与えてもらうと、私のような関心が低い大多数も興味を持てるようになるかもしれない。
 久保田 : 他の意見を聞いて、メリットとデメリットを知ることが大切だと思った。主張の違う人同士が関係をシャットアウトするのは良くない。

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