大統領がラップで選挙運動!? いまウガンダから目が離せない! ピコ太郎が世界で唯一チャート1位になった国

ラップで演説するムセベニ氏(youtubeより)

7月21日の参院選に向け、テレビ・新聞・ネットで選挙関連のニュースが増えていますね。選挙カーを始め日本の選挙も独特ですが、アフリカでもかなりレアな選挙運動があります。

日本から1万1千キロメートル離れたアフリカ大陸中部の国ウガンダでは、2011、2016年の大統領・国会議員選挙前に、現職大統領自らが、ラップでメッセージ伝えるミュージックビデオをリリースしました。

選挙を翌年に控えた2010年にリリースされた一曲目のタイトルは、「You want another rap」。大統領の出身地域で歌い次がれてきた歌がベースらしいのですが、微妙すぎる大統領のフロウとサビのリリック「You want another rap?」が中毒性を煽る曲です。

私はたまたま別件の取材で、選挙運動が最も盛り上がっている時に現地にいたました。初めてそのビデオを見た時は、悪ふざけした誰かが大統領のスピーチをつなぎ合わせて作ったんだと思いましたが、現地の友人に聞くとオフィシャルな物だとのこと。

大統領のムセベニ氏は当時66歳。そもそもなぜラップ? という疑問はさておき、斬新な選挙運動に衝撃を受けました。

そして気がつけば、サビの「You want another rap?」というリリックを聞くと、つい心の中でビデオ同様「Yes, Sebo!(ウガンダの民族語のひとつガンダ語で、Yes, sir!の意)」と、合いの手を入れてしまう自分が……。

結果、ムセベニ氏は4選を果たしました。

2015年、効果が大きかったという調査結果が出たのでしょう、ムセベニ氏は2016年の選挙に向け2曲目「Yengoma」をリリース。「Yengoma」とはドラムを象徴する言葉でありつつ権力の象徴をも意味するとのこと。こちらの曲も「Yengoma×3、Yengoma×3」というリリックと大統領独特のフロウが強烈なインパクトを残します。

そして、ムセベニ氏は5選を果たしました。(このあたりは色々あるので興味がある方はググってみてください)

話は少しそれますが、ウガンダと日本の間で一時ラップ交流が盛り上がったことがあります。

2016年に世界同時配信されたピコ太郎氏の「PRAP」が、世界で唯一チャート1位を取ったのがウガンダでした。ピコ太郎氏はそれを期にウガンダを訪問しムセベニ大統領にも面会。2017年10月から1年間ウガンダ観光大使に就任することになりました。

また2016年12月からAbemaTVで放送された「NEWS RAP JAPAN(2019年3月末終了)」という番組の元ネタも、2014年にウガンダで始まった「Newz Beat Uganda」という番組でした。

「Newz Beat Uganda」は、ニュースをラップで伝える「ラポーター(Rap-orter)」という新しい言葉を生み出し、同国の有名シンガーたちや当時8歳の子どもを起用するなどして、世界的にちょこっと注目を集めた番組です。

(この回はレゲエニュース版も収録されていておすすめ)

残念ながら公式YouTubeサイトの更新は2018年5月17日、Facebookページの動画も同年6月4日で更新が止まってしいますが、「Follow the beat×3 Follow the beat×3」で始まるオープンニング、個人的には結構お気に入りの番組でした。

ウガンダの次回大統領・国会議員選挙は2021年。現与党・国民抵抗運動(NRM)は、ムセベニ氏を次期選挙でも大統領候補として擁立することを発表しています。2021年には77歳になっているムセベニ氏。自身3作目となる曲をリリースするのかどうか見ものです。(文・写真◎下村靖樹)

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