『雨のナカジマ』彷彿とさせる新人パロウが独走で初優勝。ナカジマレーシングが9年ぶりの勝利を飾る【スーパーフォーミュラ第4戦富士決勝】

 7月14日(日)、スーパーフォーミュラ第4戦富士の決勝レースが行われ、TCS NAKAJIMA RACINGのアレックス・パロウがポール・トゥ・ウィンでスーパーフォーミュラ初優勝を飾った。2位はトヨタ勢トップとなる坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、3位はニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)だった。

 決勝レースのスタート直前に雨足が強まったこともあり、レースはセーフティカー(SC)スタートとなった。全車ウエットタイヤを装着し気温22度、路面温度23度というコンディションのもと、セーフティカー(SC)先導でシグナルが点灯。

 各車マシンを左右に振るウィービングを繰り返してレインタイヤに熱を入れつつ周回を重ねる。マシンの巻き上げる水煙は依然として大きいままだったが、SCランは3周目に終了。4周目にリスタートが切られた。

 トップのアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が先頭で1コーナーに向かい、坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とトップ3台の順位は変わらず。その後方では5番手のニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)が前の野尻智紀(TEAM MUGEN)を捉えてポジションアップを果たすが、キャシディは5周目に1コーナーで止まりきれずにオーバーラン。それでもなんとか4番手のポジションを守った。

 その後ろでは福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)らがポジションを上げていた。しかし平川はSCスタート時に前を走るマシンよりも先にコントロールラインを通過してしまい、スタート違反を犯したとしてドライブスルーペナルティを科されてしまう。

 先頭のパロウは徐々に坪井とのギャップを築き、リスタートから5周を経過した8周目には3.7秒のギャップを築いた。後方では小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)がリスタート直後から連続でオーバーテイクを決めて、12周目にはポジションを7つ上げて12番手を走行。

 13周目にはアーテム・マルケロフ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)のマシンからフロントウイングが脱落している様子がカメラで捉えられ、マルケロフはピットインを行いウイングを交換した。またアウアーもピットストップを行い、タイヤを交換した。

 15周目にはパロウと坪井のギャップが10秒にまで開いた。この時点で坪井と3番手の関口の差が5秒、関口とキャシディも6秒ほど離れており、上位勢は単独走行が続いていた。中団ではそれほど大きなギャップはなかったが、10番手を走行していた山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が15コーナー(GRスープラコーナー)でスピンを喫し、2つポジションを落としてしまった。

 徐々に雨足が強まるなか、コース上ではバトルが続く。中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)と牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)が入賞圏内の8番手を争い、一度は牧野が前へ。22周目には一貴がOTS(オーバーテイクシステム)を使用して1コーナーでのオーバーテイクを試みるが、ここでは失敗。一貴は翌周の100Rで牧野を捉えてポジションを上げたが、一方の牧野はコースアウトしてしまい、この2台に追いついていた可夢偉、さらには福住にまで先行を許してしまった。

 レースの折り返しを前にした26周目、パロウと坪井のギャップが7.5秒ほどにまで縮まった。折り返しを過ぎるとパロウには3コーナーでコースオフを喫するなどのミスがあり、コンディションの悪化を伺わせた。ホームストレート上には霧も立ちこめ、視界もわずかに厳しくなっている状況となった。

 32周目、ホームストレートでOTSを使用して中嶋が大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)を捉えて7番手に浮上する。34周目には福住も大嶋に近づいたが、ここでは大嶋が8番手を守った。その福住は翌35周目に、背後に迫っていた可夢偉に交わされ10番手にポジションダウン。一方、可夢偉は36周目に最終コーナーでイン側から大嶋をオーバーテイクし、ついに19番手スタートから入賞圏内の8番手までポジションアップを果たした。

 残り周回は15周となったところで、パロウは再び坪井に対して11秒のギャップを開いたが、その一方で坪井の背後には関口が迫り始めた。ほとんどのドライバーがピットストップを行わずに走行を続けていたが、34周目にタイヤ交換を行った塚越広大(REAL RACING)に続き、42周目にハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)がタイヤ交換と給油を行った。この時ニューウェイのマシンの給油口から若干のガソリンがこぼれたか、一瞬大きな炎が上がったが、無事に消火してニューウェイはコースへ戻った。

 さらには3番手を走行中だった関口も43周目にピットへ入り、給油のみを行いコースへ復帰。この間にキャシディが3番手に上がり、関口は表彰台圏内から一気に8番手までポジションを落としてしまった。

 残り周回が9周となったところで、95分制のレースも残り時間10分を切った。3番手のキャシディはペースを上げて坪井を猛追。その間に6番手の一貴が石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)を捉えて5番手に浮上するなど、入賞圏内で激しいポジション争いが繰り広げられた。一貴は4番手の野尻にも接近するが、ホームストレートでOTS(オーバーテイク・システム)を使い果たしてしまい、ポジションアップは叶わず。そして一貴は最終コーナーでコースオフしてしまい、再び石浦が5番手となった

 キャシディは坪井の背後1秒以内にまで迫り、一度はキャシディが横に並びかかり、瞬間的に前に出た。しかし坪井も譲らずに並走して15コーナーで2番手のポジション取り戻し、最終コーナーでもオーバーテイクを仕掛けたキャシディを抑えた。その後ろでは、再び一貴に先行された石浦に可夢偉が迫り、1コーナーでオーバーテイクを仕掛けて可夢偉が6番手に浮上した。

 本来ならば55周で争われる予定であった今大会の決勝レースだが、その55周目に到達する前に制限時間(95分間)迎えてしまい、53周目がこのレースの最終ラップに。トップのパロウはこの最終ラップの1コーナーで少しコースアウトしてしまうシーンも見られたが、一度もトップの座を譲ることなく、ポール・トゥ・ウィンでスーパーフォーミュラ初優勝を飾った。この優勝はナカジマレーシングにとって2010年のフォーミュラニッポン開幕戦鈴鹿で小暮卓史が優勝して以来9年ぶりの勝利となった。

 2番手争いは終盤に激しさを見せた坪井とキャシディでファイナルラップまで争われ、最終的には坪井に軍配が上がり、坪井がスーパーフォーミュラで初の表彰台を獲得した。3位に入賞したキャシディは、ドライバーズランキングトップの山本が今回のレースで11位に終わったため、ランキング2位は変わらずながら、山本とのポイント差を5ポイントまで縮めた。

 4位には野尻が入り、わずか0.7秒差で一貴が5位。6位には、19番グリッドから13ポジションアップを果たした可夢偉が入賞した。7位は石浦、レース終盤に燃料が足りなかったか、ピットストップを行った関口が8位に入賞した。

スーパーフォーミュラで初のトップチェッカーを受けて、パルクフェルメで喜びを爆発させたアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
初優勝のパロウと9年ぶりの勝利を飾った中嶋悟監督が記念撮影

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