若年層の低投票率は、若者だけのせいなのか 識者が指摘する、現選挙の在り方との“ずれ”

©株式会社神戸新聞社

スマートフォンで拡散する選挙運動の画像。しかし、無党派層にまで届くかは未知数だ=神戸市内(撮影・中西幸大)

 若年層の投票率が低迷している。2016年の前回参院選における全国の年代別投票率は、20代が35.6%で最低。若年層になじみ深いインターネットによる選挙運動が13年に解禁されてからも、目立った上昇は見られない。原因は若者の側だけにあるのか。現在の選挙の啓発や情報発信の在り方と、若者の意識との間に“ずれ”があることが大きいと、識者は指摘する。

 「選ぶのが面倒くさい」。会社員の男性(28)=兵庫県川西市=は、投票に行かない理由をそう話す。

 投票の経験は過去2回。20歳になって最初の地方選挙と、社会人になって最初の国政選挙だった16年の参院選だけだ。「義務感から行ってはみたけど、選ぶだけの情報がないし、自分の1票では何も変わらない」

 こうした意見はある意味で当然だと、メディアと選挙を研究する稲増(いなます)一憲・関西学院大教授(38)=社会心理学=は受け止める。

 「政治への関心が低く、利益が感じられないなら、情報を得るコストをかけようとしないだろう。投票所へ行くことよりも、勉強して投票すべきという選択のハードルが高い」

 男性は新聞を購読していない。テレビのニュースも「ながら視聴」程度。ネットニュースのトピックに、候補者の詳しいデータは上がってこない。面識もない候補者の会員制交流サイト(SNS)をわざわざフォローすることもない。

 「政策だけを見比べて、投票しろと言われても難しい。候補者の訴えを整理し、枠組みを提示できるのは地方紙やローカル番組で、ネットはその点が弱い」と稲増教授は指摘する。

 SNSも、幅広い有権者と候補者をつなぐツールにはなり得ていないとする。「SNSはリアルな社会の延長にあるので、支持者や政治的関心の高い層以外には届かない。空中戦ができるのは顔や名前が知られている人だけ」。兵庫選挙区の候補者のSNSも、フォロワー数は多くて6千台だ。

 「投票に誘導する集団の力も弱い」と稲増教授。労働組合や自治会など地域の公共的集団との関わりは、「わずらわしいと避けられている」。男性は「地縁もないので、投票を依頼されることはない。棄権する罪悪感も一瞬のこと」と打ち明ける。

 主権者教育の限界も10代の投票率からうかがえる。18歳選挙権導入後、初の16年参院選に比べ、17年衆院選では約6ポイントも下落。稲増教授は「習慣的に投票するようになるかと期待したが、逆に、意味がないと思ってしまったかもしれない」と危惧する。

 「投票に高度な知識を求めるのは現実的ではない。ハードルを下げるメッセージが必要になってくる」。どうすれば選択の手掛かりを分かりやすく伝えられ、投票へと促すことができるか。さらなる工夫が求められている。(田中真治、井上 駿)

     ◇

 投票率の低落傾向が止まらない。参院選が統一地方選と重なる亥(い)年選挙は、有権者の選挙疲れで落ち込みが大きいとされる。棄権の背景と改善の手掛かりを、各世代の有権者と識者に聞いた。