「A Plague Tale:Innocence」 - 暗黒の中世を姉弟が地獄巡りするゲームが味わわせる人命の重さ

暗黒の中世を姉弟が地獄巡りするゲームが味わわせる人命の重さ

凄惨な事件が起こると「容疑者宅からゲームが発見」と報じられ、コメンテーターは「拳銃強奪はゲームの影響」と主張する。ゲームは非現実的でリアルな感情を動かさぬという発言だろうが、この「A Plague Tale:Innocence」はプレイヤーの感情を激しく揺り動かす。中世を舞台に黒死病や鼠の大群、追っ手の異端審問から弟を守り戦う少女が主人公の作品だが、本作は「人の命を奪う罪悪感」を描いている。ゲームで敵の命を奪うのは当然だが本作の殺しの感覚は「重い」。スリングでの投石での殺害や、自分たちが助かるため弱った兵士に鼠を追いやり見殺しにする状況でプレイヤーが味わうのは「罪悪感」であり、操作する分映画より強い衝撃がある。新しいメディアについて行けぬ者がその悪影響を叫ぶのは、漫画など過去にも例は多いが、ゲームがそのような声を跳ね除けるためには本作のような良作が多数出現するのも必要だと思う。(多田遠志)

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