鈴鹿8耐:レッドブル・ホンダ高橋がテストを最速で終えるも新たに見えた不安要素

 7月9日から2018-2019 FIM世界耐久選手権(EWC)最終戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第42回大会に向けた第1回公式合同テストが3日間行われた。

 初日、2日目は、ほぼドライ、3日目は、ウエットとなり、各チームとも精力的にテストを繰り返した。そのなかで他を圧倒する速さを見せたのがRed Bull Hondaの高橋巧だった。

 高橋は、淡々とテスト項目をこなし、ドライでのタイムは初日にマークした2分05秒939というものだったが、これがオーバーオールでのトップタイムとなった。ウエットとなった3日目も、デグナーカーブ1個目での転倒はあったものの、2番手以下を3秒以上も引き離す2分17秒363を記録し、ドライでもウエットでも抜群の速さを見せつけた。

「バイクは、いい方向で仕上がって来ていますが、まだまだ満足はしていません」と高橋はテストを振り返る。

「例年、鈴鹿8耐本番は厳しい暑さに見舞われますが、まだそのコンディションで走ることができていないので安心はできません。レースウイークで、いかにコンディションに合わせることができるかがカギになるのは間違いないので、チームともその対策を話し合っていますし、準備万端で臨みたいですね」

全日本ロード第3戦SUGOのレース2を制し2戦連続ダブルウインを果たした高橋巧(Team HRC)

 全日本ロードレース選手権第2戦鈴鹿で見せた2分03秒台の速さは、かなりのインパクトを与えた。いきなり速くなったように見える人も多いと思うが、もともとストレートスピードは出ており、昨年の最終戦で投入したスイングアーム、そしてECUの搭載位置を変更するなど細かい部分まで重量配分を見直し、そのパワーを活かせるハンドリングを手に入れていた。

 その速さは、絶対王者として君臨してきた中須賀克行を擁するヤマハファクトリー陣営を揺さぶった。結果的にヤマハはバランスを崩し、高橋が第2戦と第4戦SUGOを独走で制し、4連勝を達成していた。

 ホンダは、この勢いのまま鈴鹿8耐に突入するかと思われたが、ヘッドライトやビッグタンクが装着される耐久仕様では、そのバランスが崩れてしまっていた。そこからアジャストを行い、今回の第1回公開テストでは、かなり改善されていたようで高橋の表情も明るかった。

耐久仕様のCBR1000RR SP2を走らせるも2分8秒台でしか走れていないステファン・ブラドル

 しかし、不安要素も新たに発生している。ドイツGPにホルヘ・ロレンソの代役として参戦したステファン・ブラドルは、初日の夜間走行から走り始め、2日目も走行するが、2分08秒台でしか走ることができていなかった。

 ブラドルは、3日目も走る予定だったがプライベートな事情で早朝に緊急帰国したと言う。ブラドルは、2年前に中耳炎で来日できなくなり、鈴鹿8耐をキャンセルしたことがある。このため、レースウイークでシャッフルされる可能性があるのでは? といううわさが立っていた。

■「ホンダはかなり強い印象」と中須賀

 対するYAMAHA FACTORY RACING TEAMもマイケル・ファン・デル・マークの負傷により3人そろったテストができていない。大方の予想より早く7月アタマのドニントンパークから復帰しており、本人も鈴鹿8耐に出場する意欲を見せている。今回の公開テストでは、スーパーサブの野左根航汰も走行。マイケルの走り次第では、野左根の出番も十分ありえるだろう。

「コンディションは本番にほど遠い気温でしたけれど、野左根選手も一緒にテスト項目をこなしてくれて、いろいろ確認できました。レースウイークを迎える準備はできたと思います」と中須賀。

耐久仕様のYZF-R1をテストする中須賀克之と野左根航汰

「新しくやっていることも少しずつ機能して来ていますし、ウエットでも最終日にしっかり走ることができました。今年のホンダは、かなり強い印象ですが、ウチも総合力では負けていないですし、いろんな状況にしっかり対応できるように準備してレースウイークに乗り込もうと思っています」

 2018年の鈴鹿8耐では、土曜日のフリー走行で転倒し決勝を走ることができなかった中須賀。このときマイケルとアレックス・ロウズのふたりで走ることが決まったときに、ポジションを変更している。それまでは、中須賀のポジションに2人が合わせている状態だったが、2019年は、マイケルが乗りやすいようにと、昨年、変更したポジションに中須賀が合わせて乗っていると言う。

 そして、カワサキワークスも3人そろったテストは一度もできていないが、スーパーバイク世界選手権第7戦イタリア(ミサノ)で表彰台を独占するメンバーだけに個々の能力、速さは非の打ち所がない。ジョナサン・レイ、レオン・ハスラム、トプラク・ラズガットリオグルがカワサキに26年ぶり2度目の鈴鹿8耐優勝をもたらせるか。

 3つのワークスチームに続くのは、ワークスマシンを走らせるMuSASHi RT HARC-PRO.ホンダ、逆転タイトルを狙うF.C.C.TSRホンダ・フランス、ヨシムラスズキMOTULレーシング、S-PULSE DREAN RACING・IAI、au・テルル SAG RTと言ったところか。

 まだまだチーム体制でドタバタしているところもあり、レースウイークに入ってからライダーシャッフルが行われる可能性もありそうだ。

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