若手の普及育成に奔走 ラグビー協会・竹山さん

 9月20日のラグビーワールドカップ(W杯)開幕まで約2カ月。140万枚以上の観戦チケット販売が進むなどビッグイベントへの機運が高まりつつある一方で、国内でのラグビー普及はなかなか進んでいない。そんな現状を打破しようと、かつて関東学院大でプレーした日本ラグビー協会普及育成部の竹山将史さん(39)は「育ててくれたラグビーに恩返しをしたい」と奔走している。

 日本でラグビー人気を根付かせるため、今大会はまさに分岐点だ。

 4年前のイングランド大会では日本代表が南アフリカ代表を破る「大番狂わせ」から、ブームに火がついた。過去15年ほど減少傾向だった高校ラグビー部員数は翌2016年には一転し、全国で前年比約450人増加。ところが、17年には千人超の減少となり、盛り上がりは一瞬で去ってしまった。

 竹山さんは前回の反省を踏まえ、「日本でのW杯をきっかけにラグビーをしたいと思う子どもたちを増やせるか。そのチャンスは最後になるかもしれない」と意気込む。

 02年のサッカーW杯日韓大会は列島を熱狂させ、サッカーを国民的スポーツへと押し上げることになった。その17年前の大舞台に続き、横浜が決勝の会場となる祭典だからこそ、ちびっ子たちが楕円(だえん)球を追いかけたくなる夢を与えられるかが問われる。

 竹山さんは鹿児島県・奄美大島で育ち、島の県立高校でラグビーをプレーする無名選手だったが、鹿児島選抜で国体に出場した際に、当時関東大を率いていた春口廣監督(69)に才能を見いだされ、名門・カントーに進んだ。4年生になった2001年度の全国大学選手権決勝ではSOとして出場して早大を破り、4度目の選手権制覇に貢献。卒業後はキヤノンで選手、立大コーチを経て春口監督の勧めもあって、「春口先生みたいにラグビーの素晴らしさを広げたい」と11年から同協会スタッフとして働く。

 花園をはじめ高校生の大会運営が主な仕事で、年間400試合以上に携わっている。有望選手を発掘する協会のスカウトの役割も担うが、全国各地で合同チームを組まざるを得ない部員不足の高校が増えている現実を痛感する日々という。

 そんな中で競技の魅力を発信し、ジュニア世代の未来を開こうと、無名校でも体格やスピードに恵まれる一芸に秀でた選手を発掘する「ビッグマン・ファストマンキャンプ」を昨年末に初開催。全国大会に縁のない選手でも「日本代表になれる才能を持つ原石は多くいる。気づかれないで引退するのはもったいない」と竹山さんは話す。県横須賀高のバックスの選手はこの合宿で実力が認められ、U20・高校日本代表候補に選出された。「W杯の盛り上がりを力に、子どもたちや高校生にいろんな可能性を与える環境を整えていければ」。竹山さんの夢は広がる。

 これまでのW杯では、1991年大会から4大会連続代表入りした松田努さん(49)や、2003、07年大会で主将を務めた箕内拓郎さん(43)ら多くの関東大OBが、日本代表の歴史を紡いできた。

 日本大会でも11歳下の後輩・プロップ稲垣啓太(29)の活躍が期待されるだけに、「稲垣には地元の横浜で戦えることを力にして頑張ってもらいたいし、W杯がラグビー界を変えるきっかけになってほしい」と竹山さん。フィールドこそ違うが、ともに戦う気持ちで、裏方として開幕まで走り続ける。

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