チップアンローダーの世界シェア100% 相浦機械

佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・13

©株式会社長崎新聞社

デッキクレーンの“心臓部”を点検する従業員=佐世保市光町、相浦機械

 世界の物流を支える大型貨物船の荷役で活用する、高さ10メートルのデッキクレーンが30台以上並ぶ。取り付けられた銘板は「IKNOW」(相浦機械)と総合重工業メーカー「IHI」の2種類。壮観な光景は好調な受注量を物語る。
 2017年5月、IHI(本社東京)から舶用甲板機械事業の譲渡を受けた。デッキクレーンの国内生産累計“日本一”の実績を継承。将来的にIHIタイプに一本化して「IKNOW」ブランドとして世界に浸透を図る。
 クレーンに加え、貨物船の倉口を覆って波の浸入を防ぐハッチカバー、ばら積み貨物を陸揚げするアンローダーといった甲板機械を製造している。
 門型でレール上を移動する、舶用ガントリークレーンの設計から製造、販売、点検まで一貫して手掛けるのは世界で1社しかない。木材チップの運搬船向けのクレーンとコンベヤーを合わせた「チップアンローダー」は、世界シェア100%を誇る。こうした「オンリーワン」を進化させるため、国交省の補助を受けクレーン運転の一部を自動化したシステムの開発に取り組んでいる。
 波乱の船出だった。08年12月、741億円の負債を抱え経営破綻した舶用機械メーカー、辻産業の事業や雇用の受け皿として、09年4月に設立した。「マイナスからのスタート。多くの企業に迷惑を掛けたことを忘れてはならない」。代表取締役会長兼社長の野中眞治氏(68)は振り返る。
 現在は「第三次造船不況」と呼ばれ、舶用クレーン事業の譲渡やハッチカバーの生産工場閉鎖が相次ぐ。逆境だが数少ない専業会社として寡占化は進む。野中会長は「国産機械を求める造船所は多い。造船の受注回復需要に備え、生産力を強化したい」と語る。クレーンの年間生産台数は、本年度の約270台から来年度は300台に増やす方針だ。
 多くの離職者を出した教訓を糧に、雇用を積み重ねた。現在の従業員の半数は新会社後に入社。大島造船所や辻産業、IHIなどから集まり、技術力を融合してきた。
 1日で操業開始から10年を迎えた。「『相浦機械』の市民の認知度を上げたい」と野中会長。世界に、地域に向けたブランドづくりに向け、新たなスタートを切った。

◎相浦機械
 佐世保市光町。辻産業の経営破綻を受け、大島造船所が出資して2009年4月に設立した。野中眞治氏は11年7月から社長、18年4月から会長兼社長。従業員は303人(6月現在)、協力会社の社員は318人(3月現在)。主な取引先は大島造船所、ジャパンマリンユナイテッド、常石造船、今治造船、サノヤス造船など。

出荷されるIHIタイプのデッキクレーン