浦和復帰が決まった関根貴大 エリート街道と海外での苦労

2019年6月28日、ベルギー1部シント=トロイデンVVでプレーしていた関根貴大(24)が、ドイツのFCインゴルシュタット04から浦和レッズへ移籍加入することが 発表された。2年ぶりの復帰となった同選手の小学校時代から浦和レッズ復帰までのサッカー人生を振り返る

注目され続けた少年時代

浦和レッズの下部組織出身の生え抜き選手である関根貴大の同クラブへの復帰が6月28日に決まった。2017シーズン以来の2年ぶりの復帰となる。少年時代から注目されていた関根だが、欧州でのプレーは苦労の日々が続いた。

埼玉県出身の関根は幼稚園でサッカーを始め、小学生時代はFC鶴ヶ島に所属した。4歳年上で同じく浦和の生え抜き選手である原口元気の全日本少年サッカー大会でのプレーを見て憧れを抱いていたという。

そんな関根は小学生時代から上の学年の試合に出場してドリブルで数人を交わしてゴールを決めるなど、当時から埼玉では注目されていた存在だった。同選手と小学生時代に対戦経験のある筆者の友人の話だとスピードは当時からずば抜けていてドリブルが上手く、今のように小柄な部類ではなかったと話ている。

その後、関根は浦和レッズのジュニアユースに入団する。そこでジュニアユース時代からトップチーム昇格後も関根を指導した池田伸康コーチと出会う。関根の恩師とも呼べる存在だ。中学3年生時にはU-16日本代表にも選出され、順調にユースチームに昇格した。

ユース昇格後は1年生から野崎雅也や矢島慎也ら上の学年の試合に出場していた。1年生の後期からリーグ戦などでスタメン出場する機会もあり、2年生になると完全にレギュラーを獲得した。

そして2013年10月16日に天皇杯3回戦のモンテディオ山形戦でトップチームデビューを果たした。

プロ1年目から試合に出場しレッズの主力に

関根は2014年にトップチームに昇格すると3月19日に行われたナビスコカップ、柏レイソル戦で途中出場し公式戦デビューを果たす。その後、無観客試合となった第4節清水エスパルス戦で後半開始から投入されJリーグ初出場。5月17日の第14節セレッソ大阪戦では途中出場し、リーグ戦初ゴールを決めた。

1年目はリーグ戦21試合に出場し、2ゴールを記録した。2015年は32試合に出場して6ゴール、2016年には32試合で2ゴールを記録した。2年目からレギュラーの座を獲得し、ドリブルからのシュートやクロスでチームに大きく貢献した。同年にはPK戦の末ガンバ大阪に勝利してルヴァンカップのタイトルを獲得している。

原口元気という先輩の存在 ドリブルの相違点は

浦和で1年目から試合に出場し、欠かせない存在になった関根にとって原口元気の存在は大きい。同じ浦和の下部組織出身で生え抜き選手だ。原口は江南南サッカー少年団時代に全日本少年サッカー大会とフットサルの2つで全国制覇を経験し、小学生年代から全国的に有名な選手だった。浦和のジュニアユースからユースに進み、高校2年生だった2008年5月にトップチームに登録されると、2009年1月にはクラブ史上最年少でプロ契約を結んだ。同年4月12日の名古屋グランパス戦でクラブ日本人最年少ゴールを決めている。

その後も浦和の中心選手として活躍し続け、2013年にはリーグ戦で11ゴールとプロ入り後初の2ケタ得点を決めている。そして2014年の夏の移籍市場でドイツブンデスリーガのヘルタベルリンに完全移籍を果たした。

なお、原口は2014年は浦和で9番をつけてプレーしており、2013年まで原口がつけていた24番は

2014年からは関根がつけている。これは関根が「24番をつけさせてほしい」とクラブに直談判した

という。そして、浦和ユース時代の背番号も原口のユース時代と同じ14番だ。

そんな関根と原口は”天才ドリブラー”と称されることがあるが、2人のドリブルの相違点はどこだろうか。原口は右足のみを使い、比較的長距離のドリブルでカットインを得意としているイメージがある。それに対し関根は両足を使いながらカットインと縦への突破を使い分けるのが特徴だ。

ドリブルのタイプは違う2人だが、ドリブルから多くの得点を演出し、浦和の中心選手となったという点は共通している。

欧州での苦労の日々

原口のドイツ移籍から3年後の2017年8月に関根はドイツ2部リーグのインゴルシュタットに4年契約で完全移籍を果たす。移籍直後の8月20日に第3節で途中出場し、ドイツでデビューを果たしたが、この試合で失点に絡むなどデビューはほろ苦いものとなった。そして、開幕から3連敗を喫したチームは指揮を執っていたマイク・バルプルギス監督を解任した。

その後も試合に出場することはなく、11月には4部リーグを戦うセカンドチームの試合に出場することになった。結局2017シーズンから18シーズンは1試合の出場に終わった。

そして2018年の7月にベルギー1部のシント=トロイデンに期限付き移籍する。当時同チームには

富安健洋、そして関根の加入直後に浦和から加入した遠藤航が所属していた。関根加入の翌月にはフランクフルトでプレーしていた鎌田大地も加入するなど、多くの日本人選手がプレーしていた。

関根は加入直後のトレーニングマッチで4アシストの活躍を見せたが、その後行われたトレーニングマッチで足を負傷し、3週間の離脱を余儀なくされた。同じ夏の移籍市場で加入した遠藤航や鎌田が

試合に出場する中で、関根はリハビリで復帰を目指していた。そして2018年の9月1日に行われた第6節の84分に途中出場を果たすも、右ハムストリングを負傷した。

チームは勝利したが関根は試合後に涙を流していたという。それでも懸命にリハビリを続けて復帰した関根は10月中旬に全体練習に合流を果たす。しかし、今度は左ハムストリングを負傷し、全治6週間~8週間と診断されることになる。

関根はクラブのフロントに日本でのリハビリを直訴し、一時帰国することになる。

これまで挫折したことがないサッカー人生を歩んできた同選手にとっては22歳で初の挫折となった。遠藤や鎌田が活躍する中、怪我で思うように体が動かないのは相当悔しい思いがあったに違いない。

怪我を乗り越え初ゴールという結果を残す

日本でリハビリを続けた関根は2019年1月上旬のリーグ戦再開に向けたキャンプに参加した。3度の

リハビリでメンタル面も強化された同選手は徐々に状態が良くなっていった。そんな中、チームは

レギュラーシーズンを終え、下位チームの出場するプレーオフ2を戦うこととなる。そしてプレーオフ2の2節、3節で途中出場し、4節には先発出場。後半終了間際までプレーした。

怪我に泣かされ苦労の日々が続いた関根がようやく試合に絡めるようになった。そして2019年4月28日に行われたプレーオフ2の6節ではベールスホット・ウィルレイクと対戦。関根、冨安、遠藤、鎌田と日本人4選手が先発した同試合の後半終了間際にドリブルで中央に切り込み、鎌田との連携から左足でシュートし欧州初ゴールを決める。苦労に苦労を重ねて決めた初ゴールは貴重な同点ゴールとなり、勝ち点1を手にした。

苦しい日々が続いた関根だが、原口の言う『3試合あれば、人生は変えられるから』という言葉に

影響を受けたようだ。やはり苦しいときでも欧州で苦労しながらも結果を出している先輩、原口元気の存在は大きい。

浦和への2度目の復帰

欧州での初ゴールから約2ヶ月後の6月28日に関根の浦和レッズへの完全移籍が発表された。2017シーズン以来2年ぶりの復帰となった。

古巣への復帰に対して関根は「またこのユニフォームを着てみなさんと闘えることを嬉しく思います。この2年間海外で色々な経験をし、たくさん学ぶことができました。まずは大好きなサッカーを楽しみ、そして新たな気持ちで浦和のために全力で闘います」とコメントしている。

関根は7月20日にアウェイで行われるJ1第20節のジュビロ磐田戦から出場が可能になる。現在、

18試合(ACLのため、1試合未消化)で7勝3分け8敗で10位と苦しむ浦和にどのような影響を与えるのだろうか。欧州で苦労に苦労を重ねながらもゴールという結果を示し、多くを学んだ同選手の活躍に期待したい。

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