#参院選2019「民主党」と書いたらどうなるの?選管に聞いてみた

7月4日に公示された第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)。最後の週末を迎えいよいよ選挙戦もラストスパートです。
今回の参院選では「老後に2000万円必要」が波紋を呼んでいる年金問題、今秋に10パーセントに引き上げられる予定の消費税などが焦点となっているようですが、もっと素朴な疑問があります。参院選では「選挙区」と「比例代表」と一人の有権者が2票を投じることができますが、このうち、「比例代表」は各政党の名簿に記載された「候補者名」または「政党名」を書く仕組みになっています。首相が選挙戦での街頭演説で「民主党」と口にしたことが先日話題になりましたが、投票用紙に「民主党」と書いたら、その票はどうなるのでしょうか?

1996年に旧「民主党」が結党されて以来、紆余曲折を経て2016年に「民進党」に名称改名するまで存在していた「民主党」はもうありません。しかし「自由民主党」「社会民主党」「国民民主党」「立憲民主党」と、国政政党の要件を満たす政党だけでも「民主党」と付く政党は複数あります。果たして「民主党」票の行方は…?

 

各地の選管にどうなるのか聞いてみた

「有効か、按分か、無効票かは開票管理者が判断する」

複数の都道府県選挙管理委員会に問い合わせてみると「有効か、按分や無効票とするか、開票管理者が判断します」という答えが返ってきました。ただし、5月27日に中央選挙管理会の公示第4号で、「参議院比例代表選出議員の選挙における政党その他の政治団体の名称の届け出等」として、「国民民主党」が「民主党」、「立憲民主党」が「りっけん」、「自由民主党」は「自民党」、「社会民主党」は「社民党」として略称の届け出が公示されており、それに基づき「『民主党』と書かれた票は、『国民民主党』の票とされる可能性が非常に高いです」と、問い合わせたすべての選挙管理委員会は同じ趣旨のことを付け加えました。
9日には、総務省から各都道府県選挙管理委員会に指針が通達され、「民主党」と書かれた票は「国民民主党」の票としての有効例とされています。

「民主党」ってどんな党だった?

1996年結党、2009年には政権の座に。

ところで「民主党」とはどんな政党だったのでしょうか。1996年の立ち上げでは、「自民党」と「新進党」の2大政党に対して、鳩山由紀夫氏、菅直人氏の後の首相を共同代表に「新党さきがけ」と「社民党」を母体として、前原誠司氏、枝野幸男氏、赤松広隆氏、海江田万里氏らが参加する形で、市民のための党として結党しました。
1998年には、羽田孜氏ら「新進党」出身者らが合流する形で、新「民主党」が結成され、同年7月の参議院選、2000年の衆院選などで勢力を拡大し「野党第一党」の地位を確かなものにしていきます。当初は「新自由主義」傾向の改革政党の姿勢を示していましたが、小泉純一郎首相の下で「自民党」が同様の政策に打って出たことなどから方向を転換。2003年には「自由党」を事実上吸収し、小沢一郎らが合流しました。その後、2005年の郵政民営化が争点となった衆院選には敗れていました。

2006年に小沢氏が代表となり、菅氏が代表代行、鳩山氏が幹事長となる「トロイカ体制」で復調へ向かいます。打ち出す姿勢も「市場競争の強化」から「国民の暮らし第一」を据え、行政の無駄を省く方向に転じました。これによって幅広い層からの支持されることになった「民主党」は、小泉首相退陣後の「自民党」が迷走する中、2007年の参院選で勝利を納めます。公設秘書らの政治資金規正法違反などで小沢氏の代表辞任もありましたが、2009年8月の衆議院選挙で圧勝して政権を握ります。
しかし、この選挙の際のマニフェストが「民主党」を政権から追い落とすことにつながることになりました。
財政健全化のための消費増税を訴えればマニフェストになかったことから「公約違反」とされ、目玉の子ども手当も当初予定の満額支給は実現しませんでした。高速道路無料化も頓挫し、2012年12月の総選挙に敗れて3年3か月で政権を失うことになりました。

維新の党との合流で民進党に

当時所属していた議員は複数の党に散らばる

その後、2016年に「維新の党」との合流により、名称を「民進党」と変更しました。さらに、2017年9月に蓮舫氏から代わって代表となった前原氏が「希望の党」への合流を提案。合流を拒否された枝野氏が「立憲民主党」を立ち上げます。
また、「民進党」籍をもったまま無所属で同年10月の衆議院選を勝ち抜いた議員らが会派「無所属の会」を結成し、同月終わりに大塚耕平氏が新代表に就きます。2018年4月、「民進党」と「希望の党」は合併後の新名称を「国民民主党」と発表。同年5月、「国民民主党」(代表:玉木雄一郎)が結党され、「民進党」の名称は消滅しました。
民主党に所属していた議員の行先ですが、現存する政党の所属としては「国民民主党」(玉木雄一郎、小沢一郎、前原誠司、大塚耕平、泉健太etc.)「立憲民主党」(枝野幸男、菅直人、辻元清美、蓮舫、山尾志桜里etc.)「自由民主党」(山口壮、長島昭久)「日本維新の会」(室井邦彦)などがあります。

2016年の参院選の際は、「民主党」もしくは「民主」での投票は、「民主党」から名称変更して数か月の「民進党」、および「自由民主党」や「社会民主党」に按分されることなく無効票とされていました。しかし、今回は「国民民主党」が政党略称を「民主党」とし、総務省の「疑問票」の扱いに関する指針も出たことで、同党の票にカウントされる可能性が限りなく高くなりました。ただし「民主」とだけ書かれた票は、無効票となる可能性が高い、とのことです。投票の際には投票先の書き方に注意してくださいね!

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