西武源田、名門トヨタ自動車で磨き挙げた鉄壁守備 「やっぱり数が大事かなと」

トヨタ自動車時代の経験を語った西武・源田壮亮【写真:荒川祐史】

2016年にトヨタ自動車の初優勝に貢献した源田

 13日に第90回都市対抗野球大会が開幕した。17年にパ・リーグ新人王に輝き、18年にはゴールデングラブ賞、ベストナインを受賞した埼玉西武ライオンズの源田壮亮内野手は、16年の都市対抗でトヨタ自動車の初優勝に貢献した。侍ジャパンでも遊撃を務め、今や日本を代表する守備の名手だが、社会人時代には失策を重ね、猛練習した過去があった。

 大分・大分商から愛知学院大に進学。この頃から、社会人野球でプレーしたいと考えており、社会人野球の強豪がひしめく東海地区にある愛知学院大に進学した。大学ではプロ志望届は提出せず、卒業後は名門トヨタ自動車へ入社した。

「自分の実力では無理だと思っていたので、プロは頭にありませんでした。東京の大学にも行けなかったし、社会人で長く野球を続けられたらと思っていたので、社会人のチームがたくさんある東海地区の大学に進学しました。大学に入って野球をやっていたら東海地区でトヨタってすごいし、行きたいなという気持ちは早くからありました」

 憧れていたトヨタ自動車に入社したが「周りには怪物みたいな人ばかりだった」と、スター選手ばかりで圧倒されたという。その中で生き残っていくために、自らのアピールポイントでもある守備を上達させようと考えていたが、1年目の都市対抗予選ではミスを重ねた。

「まずは試合に出なければと思いました。そのためには何をしたらいいか考えた時、自分には守備しかないと思ってひたすら守備の練習をしました。それでも、1年目の予選でミスをたくさんして『本戦には出られないだろうな』と思いました。この時に『このままではまずいな』と本気になり、火が付きました。なので、これはこれでいい経験になりました」

試合に出るために必要だった守備は「めちゃくちゃ練習した」

 試合に使ってもらうためには、監督、コーチが計算できる選手にならなければいけない。源田にとってそれは守備だった。1年目の都市対抗の後からは「めちゃくちゃ練習した」と振り返る。その結果、優勝した16年の都市対抗では全5試合に9番遊撃で出場し、安定した守備を見せた。さらに日立製作所との決勝では2安打を放ち、打撃でも存在感を発揮。大会優秀選手賞を受賞した。

「2年目からは『これだけ練習したんだから大丈夫だろう』と自信をもってグラウンドに立てるようになりました。そうしたらいい結果がついてくるようになった。守備を上達させるためには、やっぱり数が大事かなと思います。優勝できたことは、本当にうれしかったです」

 プロ選手も多く輩出しているトヨタ自動車には高校、大学で華やかな経歴を持つ選手が集まっており、チームメートから学ぶことも多かった。また学生時代とは異なり、10歳以上年齢の離れた選手とプレーすることも刺激になった。

「長く野球をやっている人には、理由がある。『すごいな』って思うところがいっぱいありました。練習もたくさんするし、野球においてちゃんと自分を持っている人が多かった。そういう人たちを間近に見られたのはよかったです。僕は地方出身で、甲子園にも出ていないけど、周りには高校や大学でいろんな経験をしている人たちがいた。その人たちの話を聞けたのもプラスになったのかなと思います」

 悔しい思いをした社会人での経験が、守備の名手を生んだ。一発勝負の世界で技術を磨く選手たちの中から、源田に続く存在は現れるのか。最高峰の舞台に注目したい。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

© 株式会社Creative2