『アンダー・ユア・ベッド』 透明なイメージに詩情感じる

(C)2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

 中田秀夫監督作『殺人鬼を飼う女』に続く「ハイテンション・ムービー・プロジェクト」の第2弾だ。これは「リミッターを外せ!」を合言葉に、あえてタブーとされる題材でクリエイターの作家性を際立たせようというジャンル映画の新たな試み。原作は今回も大石圭の小説だが、監督は新たに『バイロケーション』『劇場版零~ゼロ~』の安里麻里が務めている。

 もう一度名前を呼ばれたい…。大学時代に唯一自分の名前を呼んでくれた女性が忘れられず、30歳で彼女の居場所を突き止めて近所に移り住み、ストーカー行為に及ぶ男の話だ。官能サスペンスというジャンル映画の体裁を取りながらもストーカーやDV、親の愛情の欠如が子供にどんな影響を及ぼすかといった社会問題を内包した作品ではあるのだが、この映画で注目すべきは、やはり作家性だろう。

 最も顕著なのは、雨や熱帯魚の水槽、コーヒーを淹れるサイフォンなどがもたらす透明なイメージ。もちろんこれは、主人公の非社会的な行為を和らげる緩衝材というのが主な役割だが、ジャンル映画の枠を超えた詩情へとつながっていることも確か。加えて、DV夫の唐突で激しい暴力や、安里作品を特徴づける人が倒れたり物が落ちたりする際の運動性ともコントラストを成し、見事な緩急を生んでいる。ぜひ、第3弾以降も続けてほしいプロジェクトだ。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:安里麻里

原作:大石圭

出演:高良健吾、西川可奈子

7月19日(金)から全国順次公開

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