アルツハイマー病などの認知症用血液検査技術が世界的探求で前進

アルツハイマー病などの認知症用血液検査技術が世界的探求で前進

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【ロサンゼルス2019年7月16日PR Newswire=共同通信JBN】
*2019年Alzheimer's Association International Conference(アルツハイマー病協会国際会議)から

ロサンゼルスで開催された2019年Alzheimer's Association International Conference (https://c212.net/c/link/?t=0&l=en&o=2524018-1&h=2836536051&u=https%3A%2F%2Fwww.alz.org%2Faaic%2Foverview.asp&a=Alzheimer%27s+Association+International+Conference)(AAIC)(アルツハイマー病協会国際会議)で、アルツハイマー病および他の認知症の血液検査技術の世界的な探求で著しい進歩が報告された

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AAIC 2019で公表された新リポートは、血液中のアルツハイマー病の特徴的な脳病変の1つの構成要素であるアミロイドタンパク質の異常バージョンを測定し、それを確立されたアルツハイマー病マーカーと相関させる方法を記述している。別の2つの報告は、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の脳の変化に寄与するアルファシヌクレインと、一般的な脳細胞損傷の最も信頼できる指標となるかもしれないニューロフィラメントLを評価するための新しい血液ベースの方法を記述している。

現在、アルツハイマー型認知症の症状が現れる前に起こる脳の変化は、陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって、また髄液中のアミロイドおよびタウタンパク質を測定することによってのみ確実に評価することができる。これらの方法は高価であり、脊椎穿刺の場合は侵襲的である。そしてほとんどの場合、それらは利用できず、保険の対象にはならず、アクセスが困難である。

血液検査など、アルツハイマー病の新しいスクリーニング・診断ツールを発見・開発するための世界的な「競争」が存在する。

Alzheimer’s Association(アルツハイマー病協会)の最高科学責任者であるマリア・カリーヨ博士は「アルツハイマー病のための簡単で信頼性があり、安価で、非侵襲的で容易に入手可能な診断ツールに対する大きな必要性がある。現在および将来アルツハイマー病に直面する家族は、疾患プロセスの早い段階で正確な診断を可能にし、重要なケアと計画を可能にする簡単で広く利用可能な診断ツールから大きな恩恵を受けるだろう」と語った。

また「業界および学術研究者によって現在開発中のこれらの新しい試験技術は、臨床試験で治療の影響を追跡するために使用される可能性もある」と付言した。

▽血漿アミロイドは他のアルツハイマー病バイオマーカーとどのように比較されるか?
愛知県大府市にある国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの中村昭範医学博士と同僚は2018年1月、Nature誌に発表された研究で、彼らが提案したアミロイドベータの潜在的な血液バイオマーカーは、将来アルツハイマー病を発症する可能性のある人々の識別を可能にするかもしれないと記述した。この技術は、アミロイド関連ペプチド(AB1-42、AB1-40、およびAPP669-711)の血漿レベルを測定し、バイオマーカーはペプチド(APP669-711/AB1-42、およびAB1-40/AB1-42)の比率を組み合わせることによって生成される。

中村氏と同僚はAAIC 2019で、脳アミロイドPETスキャン(AB沈着を反映)、構造的MRI(脳萎縮を反映)、FDG-PET(グルコース代謝低下を反映する)および行動試験(MMSE / 認知機能低下を反映)と比較した血漿バイオマーカーの分析を目的とした研究結果を報告した。彼らは日本の3つの異なる研究所からの201のサンプル(70の認知正常、46のMCI、61のアルツハイマー型認知症、24の非アルツハイマー型認知症)を分析した。

複合血液バイオマーカー値は、アミロイドPET値(p<0.001)、MRI(p<0.001)、FDG-PET(p<0.002)、およびMMSE(p<0.001)と有意に相関した。

中村氏は「われわれは、認知症の症状が明らかになる前であっても、血漿バイオマーカーが初期段階のアミロイド沈着を検出できることを発見した。この結果は、血漿バイオマーカーがアルツハイマー病の危険にさらされている人々をスクリーニングするのに有用であり得ることを示唆している。これはアルツハイマー病治療のための臨床試験を容易にし、またアルツハイマー病の進行に対する非薬物介入、リスク管理、ライフスタイルの影響を調査するための研究を加速することもできる」と語った。

▽赤血球中のアルファシヌクレイン(レビー小体マーカー)、アミロイドおよびタウ
多くの変性脳疾患の共通の特徴は、脳および末梢液の両方における、アルファシヌクレイン(a-syn)、アミロイドベータ(AB)およびタウを含む「異常な折り畳み構造のタンパク質」の蓄積である。最近、アミロイドおよびタウとのa-synの物理的相互作用がこれらの疾患の原因と進行に関与することが示唆されていた。

アミロイドおよびタウタンパク質の異常なバージョンは、アルツハイマー病の特徴的な脳病変の主な構成要素であるが、他の症状にも見られる。a-synは、レビー小体、パーキンソン病の特徴であるタンパク質の塊、およびレビー小体を伴う認知症の主要な構成要素である。

イタリア・ピサ大学臨床実験医学部、Institute of Memory and Alzheimer's Disease (IM2A)神経科、パリのPitié-Salpêtrière Hospital Hospitalのフィリッポ・バルダッチ医学博士と同僚は、赤血球中のa-syn、およびそのアミロイドとタウとの組み合わせ(a-syn/ABとa-syn/tau)の濃度が、アルツハイマー病患者と健常者とを正確に区別できるかどうかを発見しようとした。

a-syn、a-syn/AB、a-syn/tauのレベルを、初期段階のアルツハイマー病患者39人と同年齢の健常者39人で分析した。アルツハイマー病患者はバイオマーカーに基づく診断を受けた(CSF ABとCSF total-tauおよび/またはphospho-tau;あるいは、陽性脳アミロイドPETスキャン)。

研究者たちは、研究におけるアルツハイマー病患者が対照群よりも赤血球(RBC)中のa-syn、a-syn/AB、a-syn/tauの濃度が低いことを発見した。RBC a-syn/ABとRBC a-syn/tauは、健常者対照群からアルツハイマー病患者を「かなりの正確さ」で識別した(それぞれ、AUROC=0.76、0.72)。RBC a-synはそれほど確度は高くなかった(AUROC=0.63)。

バルダッチ氏は「この結果は、アルツハイマー病患者は健康な個人と比較して、赤血球中のアルファシヌクレイン、およびそのアミロイドとタウとの組み合わせの濃度がはるかに低いことを示した。さらなる研究と確認により、これはアルツハイマー病患者を識別するための良いツールであることが証明されるかもしれない。アルツハイマー病を他の脳疾患、例えばレビー小体型認知症やパーキンソン病型認知症と区別することができるかどうかを検証するために、現在実験を進めている」と語った。

バルダッチ氏は「赤血球は、異常な折り畳み構造のタンパク質の蓄積および排除に関与しているとみられるため、神経変性の実用的で適切なモデルを表している可能性がある」と付言した。

▽血漿ニューロフィラメントLは健康な対照群と複数の疾患を区別
ニューロフィラメントL鎖としても知られる血漿ニューロフィラメントL(NfL)はアルツハイマー病と他の認知症を含む様々な神経疾患における脳脊髄液と血漿中の神経変性のバイオマーカーとして活発に研究されつつある。

キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)精神医学・心理学・神経科学研究所のアブドル・ヒエ博士は「同年齢の対照群と疾患患者の血中NfLの相違は広く受け入れられているが、これまでのところNfL濃度が神経変性障害全体でどのように異なるのかに関する研究は限られている」と語った。

AAIC 2019で報告されたように、ヒエ氏とKCL、ルンド大学、イエーテボリ大学の同僚は複数の神経変性的/神経学的状態にわたる血中NfLレベルを比較するための多施設共同国際研究を主導した。この研究では、最初のグループ(n=1,465; ルンド大学のBioFINDER)と2番目の独立したコホート(n=852;KCL)に軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)、原発性タウオパチー、健常者成人対照群が含まれた。これに加え、血管性認知症、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、臨床的鬱病などのいくつかの他の症状の患者が含まれた。

研究者たちは、対照群と比較してNfLがアルツハイマー病、FTD、DLB、皮質基底膜症候群(CBS)、ALS、認知症を伴うダウン症候群(DS-D)を含む8つの神経変性症状において有意に増加したことを発見した。両方の研究グループで同様の結果が観察された。彼らはその後、正常と異常と見なされたものを区別することを試みるために(BioFINDER研究グループにおいて)NfL濃度カットオフポイントを作成した。これはその後、KCLコホートでテストされた。

科学者たちは、異常なNfLレベルが健常者対照群の2%にしかないことを発見し、それがカットオフポイントの選択を強化した。カットオフポイントにより、以下のグループが研究において最も高いNfL濃度を有するグループとして特定された:ALS(82%)、DS-D (100%)、CBS(53-67%)、FTD(40-63%)。両方の研究グループにおいて、アルツハイマー病患者の16-20%の間だけが異常なNfLの限度を超える。研究者たちは、このアルツハイマー病での発見をAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiativeのデータに再現したと述べている。

ヒエ氏は「われわれは初めて、NfLそれ自体が健常者対照群と比較した場合にいくつかの神経変性症状を区別することができることを示した。これらの結果からみて、診断ツールとして、また臨床試験においてNfLの使用は有望である」と語った。

ヒエ氏は「これまで他の研究で見られたように、NfLはいかなる条件でも明確なわけではないが、検証でそれは脳内の神経変性蓄積のための比較的安価で迅速なテストとして価値がある可能性がある」と付言した。

▽Alzheimer’s Association International Conference(R)(AAIC(R))(アルツハイマー病協会国際会議)について
Alzheimer’s Association International Conference(AAIC)は世界中のアルツハイマー病とその他の認知症に専念する研究者の世界最大の集まりである。Alzheimer’s Associationの研究プログラムの一環であるAAICは認知症に関する新しい知識を生み出し、活気ある共同研究コミュニティーの発展を促進する触媒の働きをする会議である。AAIC 2019ホームページ:www.alz.org/aaic/

AAIC 2019ニュースルーム: www.alz.org/aaic/pressroom.asp

▽Alzheimer's Association(R)(アルツハイマー病協会)について
Alzheimer’s Associationは、アルツハイマー病のケア、支援、研究で世界をリードするボランティア健康組織である。同協会の使命は研究を前進させアルツハイマー病を撲滅し、すべての患者へのケアと支援を提供、強化し、脳の健康の推進を通じて認知症のリスクを軽減することである。同協会のビジョンはアルツハイマー病のない世界である。詳しい情報はalz.or もしくは電話800-272-3900まで。

*Akinori Nakamura, MD, PhD(中村昭範医学博士), et al. What Kind of Information Does the Plasma Amyloid-B Biomarker Tell Us? (Funder(s): Japan Agency for Medical Research and Development(国立研究開発法人日本医療研究開発機構))
*Filippo Baldacci, MD, et al. Potential Diagnostic Value of Red Blood Cells a-Synuclein Heteroaggregates in Alzheimer's Disease. (Funder(s): PRA Health Sciences, Inc.)
*Abdul Hye, PhD, et al. Plasma Neurofilament Light a Pan-Neurodegenerative Marker. (Funder(s): National Institute for Health Research (NIHR); European Research Council; Swedish Research Council; Knut and Alice Wallenberg Foundation; Marianne and Marcus Wallenberg Foundation; Swedish Alzheimer Foundation; Swedish Brain Foundation; Parkinson Foundation of Sweden; Skane University Hospital Foundation; Swedish federal government.)

ソース:Alzheimer's Association

▽問い合わせ先
Alzheimer's Association Media Line
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