【高校野球神奈川大会】「大事な仲間がいたから」 大楠、最後の夏を完全燃焼 

 大楠ナインが魂の反撃を見せたのは0-11の六回だ。相手投手の制球難を突き、正能、青木の適時打などで4点返してコールド負けを阻止。九回まで戦い抜いた。

 来春に横須賀明光と統合される大楠は、これが最後の夏。甲子園経験のある横浜商(Y校)に粘り強く食らいつき、倉田陵監督(30)は「点を取られても、前を向いてやってくれた」とねぎらった。

 横須賀西海岸の荻野、潮風薫る人付き合いの濃い土地柄に学校はある。

 野球部は苦難の連続だった。部員不足に悩まされ、夏はこの20年間でわずか2勝。2007年には大会史上ワーストとなる0-53のスコアで敗れたこともあった。

 しかし、どんなに「弱小」と呼ばれようと、主将正能は「そんなことは関係ない。自分たちは自分たち」と気に留めず、必死に打ち込んできた。

 拙くも懸命に白球を追った選手たちが得たものは「仲間です。大事な仲間がいたから、こういういい試合ができた」と正能。寂しさは募れど、野球を全身で楽しむ「楠(ぐす)高野球」は記憶の中に残り続ける。

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