BMW 新型1シリーズ 海外試乗|横置き・FFベースへ進化を遂げたM135i xDrive・118dを速攻試乗

BMW 新型1シリーズ「118d」「M135i xDrive」

大混戦のCセグメントハッチバック市場に、7年ぶりのフルモデルチェンジで挑む新型1シリーズ

待ち疲れちゃったよ!という人も多いだろう。その分喜びもきっと大きいはずだ。BMWのコンパクトハッチバック、1シリーズが実に7年ぶりのフルモデルシェンジを受けて再登場する。

しかしですよ、ご存知の通りこの7年ものブランクのあいだ、Cセグメントハッチバック市場はまさに大混戦の様相を呈してきているのだ。

メルセデス・ベンツ Aクラスの大躍進、新しいところではマツダ3やトヨタ カローラスポーツ、さらに同クラスならアウディ A3も忘れちゃいけないし、ちょっと大柄ながらボルボ V40もターゲットに入ってくる。ああ、王道のVW ゴルフもそう、エトセトラ、エトセトラ。で、それぞれの新型が出るたびに『セグメントを超えた』と評価が上書きされ続けているという事実。

そう、このセグメントで王者となるには、進化や革新を大げさなまでに表現することが不可欠。なぜならば、このセグメントの多くが他メーカーからの乗り換えを視野に入れた、ブランドとしてのエントリーモデルの役割を果たすからだ。メーカーも自社に顧客を取り込むため、採算度外視のアレコレをてんこ盛りにした結果、また売れるという良スパイラル図式がそこにある。

こんな参院選よりも個性派揃いのアツい激戦区を戦うことになる新型1シリーズ、仕上がりのほどはどうか。発売に先駆けてBMWが本社を置くドイツ・ミュンヘンにて試乗が叶ったのでレポートしたい。

2世代続いたFRレイアウトを捨て去っても、得るものは大きかった

BMW 新型1シリーズ「118d」

まず、今回の新型1シリーズ最大のトピックスは、2代目までのFR(後輪駆動)を捨てFF(前輪駆動)ベースになったことだ。

すでに2シリーズや同社傘下にあるMINIではお馴染みのレイアウトだが、走りを武器に競合と戦ってきた1シリーズは一体どこに向かおうとしているのか。着地点はあるのか。

答えはこうだ。街乗りで試す限り、FFを嘆くことは一切ないだろう。それより、現行より格段に勇ましく、また威張り感ある迫力を叶えたエクステリアや、FFレイアウトを活かして広くなった室内とラゲッジなど、失ったものより得たもののほうがはるかに多いと感じた。さらに、たとえFFでもきっちりと“BMW味”はズバッと貫かれている走りもバッチリぬかりなし。

順に見ていこう。

BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

ブランニューBMWを実感させる、先進的な内外装

大きくなったキドニーグリル、そしてキャビン部の拡大を実感するフォルム

まずはエクステリアから。

ご覧の通り、キドニーグリルが中央部で連結された形状となってかなり大型化され、ひと目で新型と分かる先進的なルックスに変貌を遂げた。

ノーマルモデルではこのグリル内にお馴染みの縦バー形状を、最上位のM135i xDriveには3Dメッシュ・デザインを採用する。ライトも斜めに配置してワイドなボディーを強調。リング状ポジションライトが片側2個ずつ計4つ使用される意匠は継承し、BMWのアイデンティティを若々しく増幅させたイメージだ。基本仕様はハロゲンとLEDの組み合わせとなるが、オプションではフルLED版も用意される。

BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」
BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」
BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

さらにサイドから見ると、FF採用のためエンジンフードが短くなり、見るからにキャビンが広くなったことを感じさせるプロポーションに。しかし、リアエンドに向かってやや傾斜するルーフラインを採用しているため、モタつきのないスッキリとクーペライクなスタイリッシュさを手に入れている。

リアには車幅いっぱいを使ったL字型テールライトを備え、腰高感の少ないロー&ワイドなデザインを実現。ブランニューBMW、といった風情だ。

従来モデルから一転、広さを実感出来るインテリア

BMW 新型1シリーズ「118d」

室内に目を向けると、やはり広さを一見にして実感する。

特に運転席と助手席のあいだ、いわゆるカップルディスタンスと、後席のニークリアランス&ヘッドクリアランスはゆったり感抜群だ。

ラゲッジルームの拡大も嬉しい進化。これだけ先代比で拡大されればメインカー使用にも存分に耐えそうなくらいに思える。

先述の通り、この拡大はFFアーキテクチャ採用の賜物だ。つまり、FFはエンジンと駆動輪が両方クルマの前方にあるため、FRでは駆動力を後輪に伝達するため必要なドライブシャフトが要らず、その分を室内空間に充てることが出来るということ。それに、基本的にFFアーキテクチャではエンジンは横置きが可能となるため、縦置きベースのFRよりもボンネットを短く設計出来るのも室内空間にはメリットとなる。同じ全長でも、ボンネットを短くした分を室内空間に充てることができるというわけだ。

BMW 新型1シリーズ「118d」
BMW 新型1シリーズ「118d」
BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

それ以外にも使い勝手に関しては様々な工夫がなされている。たとえば1シリーズ初採用の電動テールゲートが備えられたこと、また、ラゲッジルームの目隠しのためのトノカバーが、フロア下に収納できるようにもなっている。コレ、すご〜く地味ながら、意外になかった機能だと思いません? 外したトノカバーどこに置くの問題、立体駐車場使用の我が家でも深刻な悩みだったもの。すっごい便利じゃん!

BMW 新型1シリーズ「118d」

“超BMWらしい”ディーゼルユニットのフィーリングが気持ちイイ「118d」

そして、肝心の“走り”である。

今回の新型1シリーズ試乗会で我々に用意されたのは、ディーゼルエンジンの118d、そして最上位モデルのM135i xDriveだ。これらはまさに日本導入が予想されるモデルでもある。日本にはさらに1,5リッター3気筒のガソリンエンジンモデル118iもやってきて、計3グレードの展開になりそうだ。

まずは118dだ。メルセデス・ベンツの新型AクラスにもA200dが追加され、にわかに日本でもコンパクトカーにディーゼルエンジンという選択肢が拡がってきた。

そんな中で他メーカーに対し、118dの持つアドバンテージがあるとしたら、それは吹け上がりの滑らかさときめ細やかさ、そこからもたらされる超フラットなパワーバンド、ということになる。そう、これはもうBMWにしか実現できない、いや、できていないと言っても過言じゃないくらいに凄いことなのだが、ピーキーすぎずスカスカすぎず、なんというか“超BMWらしい”のだ。

BMW 新型1シリーズ「118d」
BMW 新型1シリーズ「118d」
BMW 新型1シリーズ「118d」

このディーゼルエンジンは2.0リッター4気筒に2つの大きさが異なるターボチャージャーを備えている。ひとつはエンジンフードを開けただけでは見えない位置(フロントガラス側の奥)に配置されているのだが、可変タービン・ジオメトリー式の低圧とエグゾースト・マニフォールドと一体化された高圧、ふたつの担当を振り分けることで、走行状況や負荷状況により正確な量の空気を燃焼室に送り込むのが狙いだ。これを備えたことで、感覚的にはどこか大排気量ガソリンフラット6に通ずるBMWのエンジンへの哲学を感じさせる仕上がりになっている。踏み始めから高速クルーズ域まで息継ぎのない、シームレスで繊細な吹け上がりがとても気持ちイイ。

この滑らかさはBMWの他モデルに採用されているすべてのディーゼルエンジンにも言えるのだが、上位モデルに引けを取らないこの味がきちんと1シリーズでも再現されていることに嬉しくなってしまった。最大出力は150ps、最大トルクは350Nmを1,750~2,500rpmで発生させる。

新型1シリーズに隠されたEV発祥のテクノロジーがハンドリングから“FFっぽさ”を払拭した

BMW 新型1シリーズ「118d」

ハンドリングもカッチリとブレのない仕上がりだ。ディーゼルエンジンはエンジンユニットの重量からフロントに重さが出がちなのだが、通常の走行でそれを感じることはない。カーブに差し掛かっても、進入からきっちり曲がってノーズがコーナーの先を目指してくれる。むしろFFになったことでターンインはイージーになったような印象すら受ける。なお、直進安定性は申し分ない。

ハンドリングということに関しては、新型1シリーズには面白い技術が投入されている。同社唯一のピュアEV i3に採用した「ARB(アクチュエーター近接ホイール・スリップ・リミテーション)」というテクノロジーだ。

これは発進・コーナリング・また濡れた路面などを走行しているときのホイールスリップを制御し、トラクションを確保するというもの。これが初めて“エンジンもの”に採用された。1シリーズすべて、つまり後述するM135i xDriveはじめ、今回試乗が叶わなかった118iにも搭載されているモノなのだが、このコントロールシステムはエンジンコントロールユニット内に組み込まれている。よって、BMWの横滑り防止技術「DSC」とは別の回路となることで、DSCよりも瞬発的に制御が介入できるほか、DSCとARBの連携により、FF特有のパワーアンダーステアを横滑りの補正入力なしに制御できる、つまりよりナチュラルに軌道を修正、ということをしてくれる。FFっぽさを感じない、というのはここからも来ている。

BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

305馬力/450Nmの最もパワフルな“M”、M135i xDriveの実力を試す!

続いて最上級モデルであるM135i xDriveだ。

新開発の2.0リッター4気筒エンジンにツインパワーターボを搭載し、5,000~6,250rpmで306ps、1,750~4,500rpmで450Nmを発揮するパワフルさは、BMW自らが『グループ内でもっともパワフルな4気筒エンジン』と謳うもの。0-100km/h加速は4.7秒と、コンパクトながらMの血統を垣間見せるスペックを誇る。

基本はジェントル、でもひとたび牙をむけば・・・野獣に豹変!

BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

しかし、ドライブした感覚で言えば、全体的な印象はとてもジェントルなものであった。受け止めるボディ側にも標準モデルに増して補強が行われており、ヤンチャさよりもしっとりと大人っぽいスポーティさが光る。ガッツリ踏み込まなければ、そして走行モードを「スポーツ」に設定しなければ、高級セダンライクなどっしりとした重厚なハンドリングと、ごく従順なアクセルレスポンスで、振り回されるような感じは皆無だ。

とはいえ、そこはやはりMを冠するだけあって、一旦スポーツ、そしてスポーツ+に設定すれば、サウンドもマッピングもいきなりピーキーな感じに生まれ変わるのも面白い。

どこまでも懐の深い2.0リッターエンジンは、ガソリンモデルらしいなめらかな加速によってどの領域でも「高級車」を感じさせてくれるような品質を備えている。

右へ左へ切り返すようなコーナリング時でもクイクイと攻略していけるのは、やはりxDriveの賢さも大きい。

インテリアの小粋な演出に心躍る|日本デビューは2019年秋だ!

BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」
BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」
BMW 新型1シリーズ「M135i xDrive」

なによりもこのM135iにだけ備えられたスペシャルなインテリアには、ステアリングを握るたびに心躍る。随所に配されたMカラーリングは、なんとシートベルトにも! 乗り込むたびに心をONに出来る、素敵な演出だと思った。

さらに1シリーズ全モデルでリアにマルチリンクを採用したから、どれに乗っても段差などのギャップに関しての挙動もまろやかかつしっとりとしているのも注目してほしい。

新型1シリーズの日本導入は2019年秋。さてセグメントの勢力図は如何に!?

[筆者:今井優杏/撮影:BMW AG]

BMW 新型1シリーズ[欧州仕様] 主要スペック

© 株式会社MOTA