歌手生活45周年を記念したカバー・アルバム。前年にがんの治療に専念し休業していたとは思えぬほどまろやかな歌声を聴かせる。
本編の10曲は、セルフカバーを含め、1940年代の『WHEN YOU WISH UPON A STAR』から2000年代の『蕾』まで、年代ごとに1~2曲ずつセレクト。その幅広い選曲を自分のものにしているのは見事だが、園田涼による生楽器中心のアレンジとの相性も大きな要因だろう。
例えば、『別れのサンバ』(長谷川きよし)はアコギとピアノだけでタンゴ風の生演奏に合わせて大橋が情熱的に歌う。またジャズバンド風に仕上がった『接吻』(ORIGINAL LOVE)では、大橋が艶やかに歌うことで大人の洒落た恋愛を想起させる。とにかく、歌と演奏とが互いの良さを引き出し合っているのだ。
最大の聴きどころは、副題ともリンクしている『愛は時を越えて』のセルフカバーだろうか。ピアノと弦楽器の美しい演奏のもと、「逃げ出さない何があっても 一人きりじゃないから」という言葉を今の彼女が凛として歌うことは、どんな会話にも勝るほどの大きな決意表明だと感じた。これは是非、生でも聴いてみたい。
ボーナス・トラックは、バンド編成での『ら・ら・ら』で、よりファンキーな雰囲気で終わるのも爽快な気分となる。大橋は今年69歳。本作を聴けば、何かを再開するにあたって大きな一歩を踏み出す勇気がもらえるはず。
(バップ・2778円+税)=臼井孝