W杯日本代表ソックス製造 創業70年「靴下メーカー」の技術  長野

長野市のある靴下メーカーは、スポーツ用ソックスを得意としていて、あの「日本代表」の公式ユニフォームのソックスも手がけている。開発秘話や高い技術力を取材した。

胸には桜のエンブレム。7月4日に発表されたラグビー日本代表の公式ユニフォーム。これを着て、9月、日本で開催されるワールドカップを戦う。注目するのはリーチ・マイケル選手たちが履く、こちらのソックス。実は・・・。

(記者リポート)「選手たちが履く白いシンプルなデザインのソックス。長野市のタイコーの工場で製造されました」 

長野市下駒沢の「タイコー」。工場内には所狭しと大きな編み機が並んでいて1日5000足から1万足の靴下を製造している。今年で創業70年。あらゆるニーズに対応しようと新しい機材や技術を積極的に導入している。こちらは、数年前、導入したイタリア製の編み機。

(神田一平社長)「つま先の部分を最後まで縫ってくれる。つま先の部分は、違和感を覚えやすい場所。縫い目がないので、新しい付加価値として喜ばれている。最新の技術を取り入れるというのを念頭に置いているので」

その最新技術を生かして「タイコー」が得意とするのがスポーツ用ソックス。ラグビーのブランド「カンタベリー・オブ・ニュージーランド」に供給する、日本代表のソックスもその一つ。シンプルなデザインの中に、こだわりの機能が備わっている。

(神田一平社長)「靴の中で足が滑ると、運動時のパワーロスになるので、スクラムを組むときに大変」

足の甲から足裏にかけては、特殊な滑り止め加工を施している。
机の角に置いて加工していないものと比べると・・・差は歴然。

さらに、つま先とかかとの部分には吸水性の高い糸を使用し、履き心地を向上させている。

(神田一平社長)「『段階着圧』と言って、ここが一番きつくて、だんだんゆるくなっていくので、血がたまりにくい。そうすると疲労軽減になる」

一部の選手からの要望で、「足袋タイプ」も作った。

(神田一平社長)「5本指ソックスにこだわっている選手も何名かいるので、そういう指が分かれているのが具合いいと言っている選手には、足袋がいいんじゃないかと提案したら、いいねって」

「タイコー」は前回のワールドカップから日本代表のソックスを手がけていて、今回も自社の製品を履く選手達の活躍に期待している。

(神田一平社長)「(前回は)南アフリカに勝った時に、うちの会社も盛り上がりまして、その時から、ラグビーに対する熱量が上がりました。少しでも選手の役に立てればうれしい、この前の南アフリカ戦みたいに勝てればもっと盛り上がるので」

高い技術力は、一般用にも生かされている。

長野市三輪のセレクトショップ「やってこ!シンカイ」。店の一番人気がタイコーが作る足袋のような靴下、「アミタビ」。

(店主・ナカノヒトミさん)「はいたときのストレスが少ないゆったりした作りになっているので。リピーターがかなり多い」

リピーター続出の履き心地の良さ。実は指の部分を立体的に編み上げる特許技術が駆使されている。

(神田一平社長)「少しでもいい商品、履き心地のいい商品が、お客さんの手に渡るようにできればいいなと日々作っている」

高品質の靴下を作るだけでなく、ユニークな取り組みもしている。

(神田一平社長)「靴下を編んだ後にでる廃材。画家さんがすごいおもしろいと言ってくれて、絵本のモンスターになった」

工場で1日に10キロも出るという糸くず。それを使って長野市の画家・トモヤアーツさんが、ユニークなぬいぐるみを作った。

これを気に入った神田社長は、「残福モンスターズ」と名づけ、絵本を自費出版。従業員の子どもたちにも好評だったことから、「ものづくり」の魅力を伝えるアイテムになるのではと期待している。

(神田一平社長)「日々出るごみが、視点をちょっと変えるだけで、ごみじゃなくなることが面白くて。将来的に、ものをつくる工場に対して、親しみを持ってくれれば一番いい」

こだわりの靴下を作り続ける老舗メーカー。技術力の高さとものづくりの魅力を長野市から発信している。

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