令和の選択 参院選長崎終盤ルポ・3< 離島> 選挙中? 冷めた空気も

候補者の街頭演説を聞く有権者=新上五島町内(画像の一部を加工しています)

 長崎県でも特に人口減や少子高齢化、産業衰退など深刻な問題に直面する離島。だが、参院選では長崎選挙区(改選数1)の候補者の肉声が響くのは数時間から半日程度。誰も立ち寄らない地域もある。3市2町(五島、対馬、壱岐、新上五島、北松小値賀)の有権者数は県全体の1割に満たず、島の厳しい実情を見てほしいとの島民の願いとは裏腹に、大票田の都市部での訴えが優先されている形だ。「本当に選挙期間中なのか」-。島民の間には冷めた空気も漂う。
 11日午前9時前、対馬市の対馬空港。自民現職の古賀友一郎候補(51)が飛行機を降りると、副市長や自民系市議団など約20人がずらりと出迎えた。「限られた時間だが、対馬の将来を精いっぱい訴える」。古賀候補はそう言って足早に選挙カーに乗車。街頭では政権与党で自身が取り組んできた地方一般財源の充実などについて熱弁を振るったが、演説会は開かず、半日で本土にとんぼ返りした。
 壱岐市や新上五島町の遊説でも同様に組織力を見せるが、各地の陣営関係者からは「前回の当選からほぼ来ていない」「知名度は6年前と変わらない」などと島との“距離感”を嘆く声も。古賀候補も「中央で仕事をしていると、なかなか地域に入れない」とジレンマを語るが、各島の自民支持者は「金子さんの方がよほど来ている」と、参院予算委員長を務める金子原二郎参院議員と比較し、物足りなさに不満を漏らす。
 駆け足で離島を回るのは国民民主新人の白川鮎美候補(39)も同じだ。9日朝、新上五島町からフェリーで五島市入り。五島でも人口の多い福江、富江両地区で街頭演説をこなすと、長崎市内での総決起集会に向かうため、夕方には高速船に飛び乗った。地元の陣営関係者は「本当は時間をかけて回りたいが、大票田がメインになるので仕方ない」とぼやく。
 野党共闘では“温度差”も垣間見える。立憲民主は、離島を含む衆院長崎3区を地盤とした山田正彦元農相の次男で、県連代表の山田勝彦氏が島々での遊説に同行し、連携をアピール。ただ共産党を巡っては、五島で共産市議が白川候補と行動を共にした一方、対馬では地元の党幹部が遊説日を知らされていないなど、野党共同候補としての支持の広がりは不透明だ。
 本土と比べ、選挙の投票率が高い傾向にある離島地域だが、選挙戦が盛り上がりを欠く中、各陣営は投票率の低下に気をもむ。約2200人の有権者がいる小値賀町には公示後、一度も候補者が来ていない。70代の男性は「住民の考えを伝える機会がないのは寂しい。自分たちが当選の大勢に影響がないと思うと、盛り上がりもなくなる」と諦め気味に語った。

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