比例票争奪戦 自民動きに 公明くぎ 野党 PRにジレンマ 

 自民現職の古賀友一郎候補(51)、国民民主新人の白川鮎美候補(39)による与野党対決を軸に繰り広げられている参院選長崎選挙区(改選数1)。同選挙区に候補者を立てていない公明、立憲民主、共産、社民各党は、選挙区ではそれぞれが推す他党の候補者を支援する一方、自党の比例票集めに懸命だ。そこには思惑、立ち居振る舞いの難しさも垣間見える。比例票争奪戦を巡る各党の動きを追った。
 16日夕、長崎市内のホテル。「(公明にとって)生き残りを懸けた戦い」-。公明比例候補の集会で麻生隆・県本部代表が比例票上積みへ気勢を上げた。会場の約百人は、自民の冨岡勉衆院議員が自身の後援会関係者を動員。冨岡氏の選挙でも公明の選挙協力を受けた後援会幹部はあいさつで「お世話になっている公明の先生方に恩返しをしなければ」と繰り返した。そこには次期衆院選への思惑もにじむ。
 連立政権を組む公明は、自民の選挙区候補との票のバーターに力がこもる。公示日の4日、古賀候補の長崎地区出陣式では、本県にゆかりのある公明の秋野公造参院議員が「難しい仕事を混乱なく導くのが古賀候補の力量」と持ち上げてみせた。公明の比例候補が街頭演説する際は古賀候補も駆け付けるなど、自公ともに親密ぶりをアピールしている。
 ただ、全国で比例に33人を擁立した自民の関係者の思いは複雑だ。県議や職域支部には担当する自民比例候補が割り当てられ、党本部からはその候補者の当選に向けて集票に注力するよう指示が飛ぶ。こうした動きに公明関係者はくぎを刺す。「(公明の比例)票の出方が悪ければ、今後の(選挙協力の)検討材料にする」
 一方、長崎選挙区で共闘する野党も複雑な事情を抱える。17日夜、大村市内であった白川候補の個人演説会。立民県連の山田勝彦代表は選挙区勝利へ最後の追い込みを呼び掛けたものの、「比例は立民に」とアピールすることはなかった。関係者は「(一対一の選挙協力とは違い)4野党の共同候補なので(各党の関係者も出席する個人演説会などでは)比例に触れられない」とこぼす。
 昨年8月に県連が発足した立民。本県小選挙区でも擁立を目指す次期衆院選に向け、今回の参院選は足場固めを進める機会だが、白川候補と抱き合わせでPRすることが難しいとのジレンマを抱える。長崎選挙区に自党の候補者を立てていないため、党の大物も応援に来ない。党の広報車を走らせるなどし地道に比例票拡大を目指している。
 野党共闘に伴い、長崎選挙区で候補者擁立を取り下げた共産も「地道にやるしかない」と比例票の取り込みを急ぐ。県内での比例7万票を目標に、党の広報車から「選挙区は白川、比例は共産」と呼び掛けに余念がない。社民は法律上の政党要件を懸けた瀬戸際の戦い。比例候補が長崎市内で街頭演説するなど無党派層への浸透に躍起だ。

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