五色ヶ原(立山)|険しい道を越えた後に広がる、天空のお花畑へ 北アルプスの立山にある「五色ヶ原」。室堂から遠くに見える姿はまるで天空のお花畑。花の百名山にも選ばれた草原台地は夏になると多くの高山植物が咲き乱れ、たくさんの登山者が訪れます。まるで、天国のようなところですが、そこまで至る道は意外と大変。雪渓や岩場、ハシゴや鎖場など、楽しいハイキングとはいきませんでした……。

立山の先にある、花の楽園・五色ヶ原(ごしきがはら)

  • 標高: 2,500m
  • 所在地: 富山県富山市有峰
  • 最高気温(8月): 18.2℃
  • 最低気温(8月): 8.9℃

山を歩いていると「いつかはあの場所へ……」。そんな場所があります。
立山の雄山(標高3,015 m)に登山した方や、室堂山展望台に立った方なら、遠くに見える草原台地に強い印象とあこがれを持ったのではないでしょうか?
それが五色ヶ原です。

花の百名山にも選ばれた、天空のお花畑

五色ヶ原の夏は、花の百名山として選ばれたクロユリをはじめ、ハクサンコザクラ、トリカブト、クルマユリ、ツガザクラなど、まさに天空のお花畑。また、室堂から五色ヶ原までの登山道にもたくさんの花が咲きます。

秘境・雲の平のような、山々に囲まれた台地

雪渓と青々とした草原が美しい五色ヶ原は、太古の昔、周辺の火山噴火で流れ出た溶岩の台地。北アルプスの秘境と称される雲の平にも似た、山々に囲まれた姿が印象的な場所ですが、行程は雲の平より短く、アクセスしやすいのが特徴です。

意外と険しい道のりらしい……

そんな楽園のような五色ヶ原ですが、そこへ至る道は意外と大変。一般的な室堂ルートは、2つのピーク、岩場や雪渓、ハシゴや鎖場の連続など、「楽しくハイキング」というわけにはいきません。でも、その先には、天空のお花畑が待っていますよ!

五色ヶ原はいつ頃が一番いいの?

五色ヶ原泊りを考慮すると、五色ヶ原唯一の山小屋「五色ヶ原山荘」の営業期間(7月上旬~10月上旬)が登山可能。その中でも一番のシーズンは高山植物が咲き乱れる7月下旬から8月、草紅葉の9月中旬から10月も人気です。7月は雪渓が多く滑りやすいので軽アイゼンがあれば安心。

天気も必ずチェック(室堂平)

五色ヶ原定番ルート|室堂ピストンコース

凡例はこちらをクリック:グレーディング表
室堂ターミナル(92分)→浄土山南峰(170分)→ザラ峠(50分)→五色ヶ原山荘(泊)(40分)→ザラ峠(180分)→浄土山南峰(72分)→室堂ターミナル
五色ヶ原への登山ルートの中では、最も一般的。出発点の室堂(標高2,450 m)と到達点の五色ヶ原(標高2,500m)の標高がほとんど同じで、ピークを目指さない縦走登山のイメージになります。前半の浄土山が最高点になり、その後アップダウンを繰り返しながら下っていくことになり、一見、距離や標高差を見ると難易度はそれほどでもなさそうですが、雪渓のトラバースやハシゴ、鎖場などが多く、意外と大変だったという感想を持つ登山者が多いようです。

ルート詳細

立山黒部アルペンルートの室堂ターミナルを出発。浄土山方向へ。最初は舗装された道、途中から岩ゴロゴロの道です。

浄土山到着。今から歩く登山ルートの向こうに、目指す五色ヶ原が!!

龍王岳の西側を巻きながら、歩きにくいガレ場をどんどん下っていきます。転倒しないように慎重に。

浄土山から300m程度下るとやっと平らな場所。周辺にはコバイケイソウのお花畑が!!
岩場を登り返すと、鬼岳東面という標識があります。

鬼岳からの下りは雪渓のトラバースやハシゴ。雪渓は踏み跡のステップやキックステップで慎重に歩けば問題はありませんが、自信がなければ軽アイゼンを着用しましょう。

鬼岳からの雪渓を下りきるとそこもお花畑。

再び100m程度登り返すと獅子岳(標高2,720m)へ。獅子岳山頂は360度ビューの絶景!
眼下には黒部湖、その向こうに針ノ木岳・スバリ岳、天候が良ければ富士山・槍ケ岳が見え、このルートの中では一番の眺望ポイントです。

やっとザラ峠(標高2,342m)到着。
ここは、戦国武将「佐々成正」が厳冬の立山を越えたといわれる「さらさら越え」の峠、当時の装備ではちょっと信じられない……。
ここからは、最後の100m程度の登り、その先は……。

五色ヶ原到着!ここまでつらかった分、天国かと思ってしまう……。

宿泊は五色ヶ原山荘か五色ヶ原キャンプ場。荷を置いたあとは、お花畑を散策しましょう。

早朝の五色ヶ原も絶景!
帰りは往路を戻ります。同じように険しいですが、途中のお花畑は何度見てもいいですね。

五色ヶ原へ至るその他のルート

五色ヶ原へは、室堂ルート以外に2つのルートがあります。それぞれ片道だけを軽くご紹介。

黒部湖から一気に登る|黒部湖ルート

凡例はこちらをクリック:グレーディング表
黒部ダム駅(40分)→ロッジくろよん(180分)→平ノ小屋(90分)→刈安峠(120分)→五色ヶ原山荘
立山黒部アルペンルートの黒部湖駅からスタートし、黒部湖西岸を通り平ノ小屋から一気に標高差1,000m程度を登ります。往路は室堂ルート、帰路はこのルート(もしくは逆)を利用すれば周遊ルートになります。このルートを下り利用する場合は所要時間6時間程度です。

時間と体力が必要 上級者向け|薬師岳コース

凡例はこちらをクリック:グレーディング表
薬師岳山荘(60分)→薬師岳(210分)→スゴ乗越小屋(210分)→越中沢岳(170分)→五色ヶ原山荘

薬師岳方面から縦走してくるコース。10時間以上かかるので、時間と体力が必要な上級者向けルートです。また、出発点の薬師岳山荘までは、最寄りの折立登山口から約6時間30分かかるので、最低でも片道で2泊。しっかりとした登山計画を行ったうえで挑戦しましょう。詳細は「薬師岳」の記事をご覧ください。

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五色ヶ原への登山口アクセス情報

今回ご紹介した登山コースのうち、室堂ルートと黒部湖ルートへのアクセス情報をご紹介します。両方とも立山黒部アルペンルートの利用となり、マイカーでのアクセスはできません。したがって、立山黒部アルペンルートの始発駅へのアクセスからご紹介します。各駅ともトイレや自動販売機、登山届ボックスがありますので利用しましょう
※薬師岳コースは、登山コース紹介の記事リンクをご覧ください。

富山県側の玄関口|立山黒部アルペンルート 立山駅

立山黒部アルペンルートの富山側の玄関口。主に西日本方面の登山者利用が多い駅です。
【マイカー利用の場合】
北陸道「立山IC」より約35分。立山駅の駐車場へ駐車します。立山駅周辺には、900台程度を収容できる無料駐車場があります。混雑時は臨時駐車場が開設されます。
【公共交通機関利用の場合】
JR高山本線「富山駅」より、電鉄富山へ乗り換え約1時間「立山駅」で下車。
【立山駅から室堂まで】
ケーブルカー、バスを乗り継ぎ約70分で室堂ターミナル。
【立山駅から黒部ダムまで】
室堂ターミナルから、さらにトロリーバス、ロープウェイ、ケーブルカーを乗り継ぎ50分、乗り換え含め合計2時間。

電鉄富山 公式サイト

長野県側の玄関口|立山黒部アルペンルート 扇沢駅

立山黒部アルペンルートの長野側の玄関口。主に東京など東日本からの登山者の利用が多い駅です。

【マイカー利用の場合】
長野道「安曇野IC」より1時間。扇沢駅の駐車場へ駐車します。扇沢駅周辺には、無料駐車場 230台、有料駐車場 350台があります。混雑時は臨時駐車場が開設。
【公共交通機関利用の場合】
JR信越本線「長野駅」よりアルピコ交通バスで1時間45分、または、JR大糸線「信濃大町駅」より同じくアルピコ交通バスで40分。扇沢バス停下車。
【扇沢駅から黒部ダムまで】
電気バスに乗り約16分で黒部ダム。
【扇沢駅から室堂まで】
黒部ダムから、さらに徒歩、ケーブルカー、ロープウェイ、トロリーバスを乗り継ぎ約1時間、乗り換え含め合計1時間25分です。
アルピコ交通バス 公式サイト立山黒部アルペンルート 公式サイト

周辺の山小屋・キャンプ場情報

五色ヶ原に行く場合、登山口へのアクセスが遠いこと、行程が長いことにより、場合によっては、室堂へ前泊、五色ヶ原泊が必要になります。ここでは、周辺のおすすめ山小屋・キャンプ場情報をご紹介します。

五色ヶ原唯一の山小屋とキャンプ場|五色ヶ原山荘

五色ヶ原のほぼ中央。絶好のロケーションに建つ五色ヶ原山荘は、五色ヶ原唯一の山小屋です。キャンプ場の管理と受付もこちらでやっています。

住所: 富山県富山市有峰
電話番号:090-2128-1857
山小屋料金:1泊2食:10,000円、素泊まり:7,000円
キャンプ場料金:700円/人
営業期間:7月上旬~10月上旬

五色ヶ原山荘 公式サイト

遠方の方の前泊におすすめ|立山室堂山荘

室堂にはいくつか山小屋がありますが、立山室堂山荘は室堂ターミナルからも近く、行動に便利な場所にあります。立山室堂山荘は日本最古の歴史を持っており、以前の建物は重要文化財に指定されて現在の山荘横に現存しています。現在の建物は1986年に新築されたもので、きれいで設備がいいと評判です。

住所:富山県中新川郡立山町室堂
電話番号:076-463-1228
料金:シーズンにより変動。予約時に確認。
営業期間:2019年は4/15(日)~11/24(土)

立山室堂山荘 公式サイト

五色ヶ原は「ちょうどいい」天空のお花畑

五色ヶ原は、何日もかけないとたどり着けない場所ではなく、かと言って、ハイキング気分で行ける場所でもありません。歩行時間、難易度ともに達成感が味わえる「ちょうどいい」場所と言えるでしょう。北アルプスらしい、雪渓歩きや岩稜帯歩きの後は、あこがれの天空のお花畑……。ぜひ。一度歩いてみてください。

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